スーパーフォーミュラ2022年シーズン開幕! レースをもっともっと楽しむための基礎知識!! 第1戦・第2戦 富士スピードウェイの「レース・フォーマット」

■競争の枠組み「レース・フォーマット」を紹介!

●第1戦・第2戦は富士スピードウェイが舞台

SUPER FORMULA NEXT50」開発テスト
2022年SF開幕戦を前に「カーボン・ニュートラル燃料」「より接近した”バトル”を可能にするエアロダイナミックス」などを開発するテストを実施。

今週末(4月9〜10日)は、日本のトップフォーミュラ「スーパーフォーミュラ」の開幕戦。舞台は富士スピードウェイ。今季7大会の中で3回行われる「1大会・2レース制」が早速この緒戦から実施され、土曜日がシリーズ第1戦・日曜日が第2戦として、それぞれ1日の中で予選・決勝が行われます。 その2日間の「競争」が、どんな枠組みの中で行われるのか。これを「レース・フォーマット」とも言っていますが、ここで簡単に(?)整理して紹介しておきます。

この基本を踏まえて「スポーツとしての自動車競争」を観戦すると、そのおもしろさがより深く見えてくるものなので。これはどんなスポーツでも同じですが。 なお、現地まで出向けない、という方々は、映像中継が今季はJ SPORTSとYouTubeの「スーパーフォーミュラ公式チャンネル」に集約されていますので、そちらでリアルタイム観戦をぜひ。とくにYouTubeはこの開幕戦に関して「全セッション無料ライブ配信」となっています。 まずはスーパーフォーミュラ公式ウェブサイトの「2022年のLIVE中継について」を確認。YouTubeで見よう、という場合はSF公式YouTubeチャンネル へ。 LIVE観戦にあたっては、動画実況と並べて「ライブ・タイミング」の画面もPCかタブレット/スマートフォン(専用アプリあり)の画面を立ち上げておくことをお勧めします。 では、この記事の本論へ…

■スーパーフォーミュラ 2022年第1戦・第2戦 富士スピードウェイ「レース・フォーマット」

■レース距離:第1戦<4/9(土)>第2戦<4/10(日)>ともに、187.083km (富士スピードウェイ 4.563km×41周) 最大レース時間:75分、中断時間を含む最大総レース時間:90分)

 

■タイムスケジュール:土曜日、日曜日の各日、午前中に公式予選、午後に決勝レース(スタート時刻14時30分に統一)を行う2レース開催となる。

■予選方式:ノックアウト予選方式(第1戦・土曜日は9時30分〜、第2戦・日曜日は10時25分〜の予定)

⚫︎2グループ(A組・B組)に分かれて走行する公式予選Q1、そのそれぞれ上位6台・計12台が進出して競われる公式予選Q2の2セッションで実施される。
⚫︎公式予選Q1はA組10分間、5分間のインターバルを挟んでB組10分間。そこから10分間のインターバルを挟んでQ2は7分間の走行。
⚫︎公式予選Q1のグループ分けは、第1戦は基本的に抽選、第2戦は第1戦決勝終了時のドライバーズランキングに基づいて、主催者(JRP)が決定する。ただし参加車両が複数台のエントラントについては、少なくとも1台を別の組分けとする。
⚫︎第1戦Q1の組分け(車番のみ記すと…) A組・1,3,6,12,18,19,36,38,53,64(10車) B組・4,5,7,14,15,20,37,39,50,55,65(11車)
⚫︎Q2進出を逸した車両は、Q1最速タイムを記録した組の7位が予選13位、もう一方の組の7位が予選14位、以降交互に予選順位が決定される。
⚫︎Q2の結果順に予選1~12位が決定する。

■タイヤ:横浜ゴム製ワンメイク・ドライ1スペック, ウェット1スペック

ドライタイヤは設計、構造・素材などについては2019年のソフト=2020年以降使用されてきたタイヤと基本的に同じ仕様だが、今季に向けてリアタイヤのみショルダー部の断面形状(プロファイル)が微妙に変更されている。現物を前にしても専門家でないとそれとは分からないような変化だが、サイドウォールからトレッドへと回り込む部分=ショルダーが、従来はやや角張った(スクエア)形だったものが、より丸みを帯びて連続的につながる曲面(ラウンド)になっている。
新旧を並べてじっくり観察すると、2022年仕様はやや「なで肩」になっているのがわかる。 この部位は、タイヤが転がる動きの中で路面と“ぶつかり”、荷重を受け止めて屈曲し、その位置で路面と摩擦しつつさらに変形し、タイヤ全体の転動に伴って路面から離れ、つぶされるように屈曲していた変形が解放されるという、折り曲げ変形が繰り返される(単純計算でSFが200km/hで走っている時に毎秒およそ30回)。
その内部にはタイヤの骨格である「カーカス」、すなわちテキスタイル(繊維)の撚り糸がすだれ状に並べ揃えたものがゴム層の中に接合されている(追記するなら…このSF用ヨコハマを含めて昨今のレーシングタイヤは、このカーカス層の撚り糸がタイヤの転動方向=回転面に対して斜めの角度を持ち、さらに1層目と2層目ではその斜めの方向・角度を逆にして、それぞれの糸の列が交差する形で貼り合わされている。つまり基本構造は「バイアス」タイヤ。その外周に「ラジアル」タイヤと同様にベルトを巻いて全体を引き締めている。
かつて「ベルテッド・バイアス」タイヤと称していた構造にほぼ近い)。さらにトレッド面のコンパウンド層の下にあるベルト層(これも極細の糸=鋼線や高強度繊維などを引き揃えてゴムで接合した層状のもの・端面にはその糸の断面が出ている)の両端面が、このトレッド面外端部近くまで広がっている。これらの糸+薄いゴム層が「折り曲げ〜解放」を繰り返すわけで、それを最初に屈曲の少ない連続的な形に整えておくことで、折り曲げられた時の「応力集中」を緩やかなものにして、タイヤの骨格構造の中でいちばん厳しい部分の疲労・損耗を抑える。すなわち耐久性を高めようというのが、今回の微妙な断面形状変更の狙いだという。
もちろん、内圧を高めればケース(タイヤ骨格)全体が“張って”、この部位のカーカスの張力が高まり、接地・屈曲時に変形が一部に集中することが避けられるので、構造面の安全性を高めるためには一定以上の内圧にしておくことも有効なのである。

■決勝中のタイヤ交換義務:(第1戦、第2戦ともに)あり

⚫︎スタート時に装着していた1セット(4本)から、異なる1セットに交換することが義務付けられる。
⚫︎先頭車両が10周目の第1セーフティカーラインに到達した時点から、先頭車両が最終周回に入る前までに実施すること。(富士スピードウェイの第1SCラインはピットロード分岐・本コースとの間に入るゼブラゾーンの起点、減速用S字カーブ手前で、本コースまで横切る白線で示されている。ちなみに第2SCラインはピットロード出口先・ピットアウト指示ラインがTGRコーナー手前まで伸びた先に直交する形で示された白線)
⚫︎タイヤ交換義務を完了せずにレース終了まで走行した車両は、失格。
⚫︎レースが赤旗で中断している中に行ったタイヤ交換は、タイヤ交換義務を消化したものとは見なされない。ただし、中断合図提示の前に第1SCラインを越えてピットロードに進入し、そこでタイヤ交換作業を行った場合は、交換義務の対象として認められる。
⚫︎レースが(41周を完了して)終了する前に赤旗中断、そのまま終了となった場合、タイヤ交換義務を実施していなかったドライバーには競技結果に40秒加算。
⚫︎決勝レースをウェットタイヤを装着してスタートした場合、およびスタート後にドライタイヤからウェットタイヤ部交換した場合は、このタイヤ交換義務規定は適用されないが、決勝レース中にウェットタイヤが使用できるのは競技長が「WET宣言」を行なった時に限られる。

■タイヤ交換義務を消化するためのピットストップについて

⚫︎ピットレーン速度制限:60km/h
⚫︎ピットレーン走行+停止発進によるロスタイム: 富士のコースでは、長いストレートを加速して行く途中でピットロードが分岐、S字状の速度抑制部を抜けた先から速度制限区間が始まる。ここから出口シグナルまでの速度制限区間は約380m(Google mapによる)。そこを60km/hで走り抜ける中に停止・発進を挟むと走行時間は25秒ほど。しかし減速は手前の屈曲部で始まり、出口側でも速度制限区間が終わったところで、レーシングスピードでストレートを走ってきた車両の速度は250km/h(秒速69.4m)を越えようとしている。その結果、SFの場合、富士スピードウェイでのレースで、ピットインにおけるピットロード走行+停止・発進のロスタイムは「28〜30秒」と見積もられ、実際に近年のSFのレースデータから抽出・概算した値もそのくらいに落ち着いている。 これにピット作業のための静止時間、現状のタイヤ4輪交換だけであれば7〜8秒を加え、さらにコールド状態で装着、走り出したタイヤが温まって粘着状態になるまで、路面温度にもよるが半周、セクター3にかかるあたりまでにペースで失うタイム、おおよそ1秒ほどを加えた「最小で35秒、若干のマージンを見て40秒ほどが、ピットストップに”消費”される時間」となる。

■タイヤ使用制限:ドライ(スリック)タイヤに関して

⚫︎金曜日・専有走行〜第1戦(土曜日):新品・3セット、持ち越し(シーズン前テストから)・3セット
⚫︎第2戦(日曜日):新品・2セット、持ち越し(前日の第1戦から)・4セット
■走行前のタイヤ加熱:禁止 ■決勝レース中の燃料補給:禁止

■燃料最大流量(燃料リストリクター):90kg/h(121.8L/h)

燃料リストリクター、すなわちあるエンジン回転速度から上になると燃料の流量上限が一定に保持される仕組みを使うと、その効果が発生する回転数から上では「出力一定」となる。出力は「トルク(回転力、すなわち燃焼圧力でクランクを回す力)×回転速度」なので、燃料リストリクター領域では回転上昇に反比例してトルクは低下する。一瞬一瞬にクルマを前に押す力は減少しつつ、それを積み重ねた「仕事量」、つまり一定の距離をフル加速するのにかかる時間、到達速度(最高速)が各車同じレベルにコントロールされる、ということになる。

■オーバーテイク・システム:最大燃料流量10kg/h増量(90kg/h→100kg/h)・作動合計時間上限:200秒間(第1戦・第2戦それぞれ)

⚫︎ステアリングホイール上のボタンを押して作動開始、もう一度押して作動停止。
⚫︎作動開始後8秒経過してからロールバー前面のLEDおよびテールランプの点滅開始。ロールバー上の作動表示LEDは当初、緑色。残り作動時間20秒からは赤色。残り時間がなくなると消灯。
⚫︎一度作動させたらその後100秒間は作動しない。この状態にある時は、ロールバー上のLED表示は「遅い点滅」。なお、エンジンが止まっていると緑赤交互点滅。 OTS作動時は、エンジン回転7200rpmあたりで頭打ちになっていた「出力」、ドライバーの体感としてはトルク上昇による加速感が、まず8000rpmまで伸び、そこからエンジンの「力」が11%上乗せされたまま加速が続く。ドライバーが体感するこの「力」はすなわちエンジン・トルク(回転力)であって、上(燃料リストリクター作動=流量が一定にコントロールされる領域)は、トルクが10%強増え、そのまま回転上限までの「出力一定」状態が燃料増量分=11%だけ維持される。概算で出力が60ps近く増える状態になる。すなわちその回転域から落ちない速度・ギアポジションでは、コーナーでの脱出加速から最終到達速度までこの出力増分が加速のための「駆動力」に上乗せされる。

これらを踏まえ、スーパーフォーミュラ第1戦・第2戦 富士スピードウェイをリアルでも、オンラインでも楽しんで下さい。

(文:両角 岳彦/写真:JRP)

【関連リンク】

●スーパーフォーミュラ公式ウェブサイト「2022年のLIVE中継について」
https://superformula.net/sf2/headline/34862
●SF公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/superformulavideo/featured
●SF公式サイト「ライブ・タイミング」
https://superformula.net/sf2/application

この記事の著者

両角岳彦 近影

両角岳彦

自動車・科学技術評論家。1951年長野県松本市生まれ。日本大学大学院・理工学研究科・機械工学専攻・修士課程修了。研究室時代から『モーターファン』誌ロードテストの実験を担当し、同誌編集部に就職。
独立後、フリーの取材記者、自動車評価者、編集者、評論家として活動、物理や工学に基づく理論的な原稿には定評がある。著書に『ハイブリッドカーは本当にエコなのか?』(宝島社新書)、『図解 自動車のテクノロジー』(三栄)など多数。
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