■参戦車両3台で走破した距離はトータル2万4000km
以前お伝えしたように、アウディAGは、ダカールラリーに100%電動駆動の「Audi RS Q e-tron」で挑戦していました。
世界で最も過酷なオフロードラリーのひとつとして知られるダカールラリー。今回、参戦した3台のAudi RS Q e-tronは、3台トータルで走破した距離は2万4000kmに達したそうです。この走行距離は、アウディが実地テストを行った8700kmの約3倍に相当します。
マティアス エクストローム/エミール ベリークヴィスト組は、アウディ勢最高となる総合9位を獲得。電動化車両である「eモビリティ」時代の到来に合わせて、アウディはオフロードラリーの世界でも新境地を開拓したといえるかもしれません。
アウディAGで、技術開発担当取締役を務めるオリバー ホフマン氏は「スタート時点からオフロードラリーのパイオニアにふさわしい走りを披露できました。電動ドライブトレイン、高電圧バッテリー、高効率なエネルギーコンバーターを組み合わせたAudi RS Q e-tronに採用された駆動コンセプトは、我々のあらゆる期待に応えてくれました」と確かな手応えについて触れています。
アウディは、なんと1年あまりで「RS Q e-tron」を開発し、準備を整えました。3台のAudi RS Q e-tronは、低排出ガス車両を対象として新設された「T1アルティメットクラス」に参戦し、複数のステージ優勝を達成しています。
ダカールラリーで世界最多記録となる14回の優勝経験を持つフランス人のステファン ペテランセルは、二輪車と四輪車の両方で同ラリーを制しています。
「砂漠で数多くのコンセプトカーを走らせてきましたが、Audi RS Q e-tronは飛び抜けてセンセーショナルなクルマでした。大トルクを発生する電動駆動システムは、私のドライビングスタイルに合っています」とドライバビリティについて触れています。
同じフランス国籍のエドゥアール ブーランジェとともに完走を果たしたペテランセルは、第10ステージを制しました。ダカールラリーにおける彼のステージ優勝は、これで通算82回目を数えます。
しかし、レース序盤のダメージにより、昨年ダカールラリーを制したペテランセルでさえ、上位入賞は困難な状況に。
彼は第2ステージで岩に当たり、リムを破損し、サスペンションにも大きな損傷を受けました。修理が完了した時点で、ステージ最長時間を超過したことによるペナルティを課され、ペテランセルは最後尾からのスタートを余儀なくされました。
それ以降、ペテランセルとブーランジェはチームのことを最優先に考え、チームメイトのサポートに回りました。 カルロス サインツは、こうしたサポートの恩恵を受け、第4ステージから第6ステージの間で何度も行ったショックアブソーバーの交換作業などもあったそう。
サインツの車両は、「Audi RS Q-tron」にステージ初勝利をもたらしました。そして、8日後にも再度ステージ優勝を果たします。
サインツは、「とくにレース後半では、典型的なダカールラリーのルートが続きました。オフロード、大小の砂丘、そして方向感覚を失わせる風景の組み合わせは、きわめて多様で要求の厳しいものでした。私たちはエンジニアの協力により、ラリー期間中も車両セットアップの改善を続けました。すべてのスタッフに本当に感謝しています」とコメントしています。
世界ラリー選手権を2度、ダカールラリーを3度制覇した経験を持つサインツも各ステージで好成績を残したものの、総合で上位に入賞することはできませんでした。最終的に12位でフィニッシュしました。
アウディ モータースポーツ部門統括責任者のユリウス シーバッハ氏は、「ドライバーチームは4つのステージ優勝を獲得し、毎日の表彰台には合計14回も上ることができました。3日目という早い段階で、カルロス サインツのAudi RS Q e-tronが歴史的な優勝を収めたことは、このコンセプトがダカールラリーで総合優勝できる能力を備えていることを証明できました。アウディは、電動駆動コンセプトでステージ優勝を収めた初めてのチームになりました。次のダカールでの目標は、総合優勝。ドイツに戻ったら問題点を洗い出し、Audi RS Q e-tronをさらに改善して、さらにいくつかのレースに投入する予定です」と、手応えと来年への意気込みを語っています。
(塚田 勝弘)