なぜ、トヨタ、スバル、マツダ、ヤマハ発動機、川崎重工が水素やバイオ燃料でタッグを組んだのか?

■2輪メーカーではスズキとホンダも加わり、4社で内燃機関を活用したカーボンニュートラル実現を探る

「CASE」というキーワードの中でも「E(Electric)」の注目度が年々、高まっています[※CASE=Connected(コネクティッド)/Autonomous/Automated(自動化)/Shared(シェアリング)/Electric(電動化)]。

各国や地域による脱内燃機関戦略(バッテリーEV化/BEV)は、政治的な思惑も絡み、実現可能なのかをきちんと検証することなく先行されている感もあります。また、電動化を進めるには電力政策も連動させることが不可欠で、電力構成により有効な手段(電動化)は変わってきます。

カーボンニュートラル戦略
燃料を「つくる」「はこぶ」「つかう」選択肢を広げる3つの取り組み

石炭火力が30%前後を占める日本では、現状のまま電動化が進むとCO2排出量が増えてしまうという予測もあります。

日本自動車工業会の豊田会長が「日本の400万台をEV化すると、夏の電力の使用ピーク時には電力不足に陥り、解消するには原発10基分の電力が必要になる」という試算結果を記者会見で強調しています。

ほかにもBEVには、バッテリーのコストやリサイクル、原料の確保など課題は山積しています。

トヨタは、バッテリーEVだけでなく、FCV(燃料電池車)、PHV、HVなど全方位的な戦略を取っています。スーパー耐久レースで水素エンジンを試してきたのも、今後のカーボンニュートラル実現を目指した一環。水素は、FCV(燃料電池車)で使うだけでなく、水素エンジンで水素を燃焼させる手もトヨタだけでなくBMWも手がけ、2006年には限定生産までしています。

合成燃料(e-FUEL)の活用も不可欠です。水素(H2)と二酸化炭素(CO2)を混合させて作られた合成燃料(e-FUEL)のほかに、グリーン水素、バイオ燃料、グリーンアンモニアなどがあります。

福岡市 水素製造設備
福岡市の水素製造設備

バッテリーEVだけではカーボンニュートラルの実現は不可能なのは明白で、欧州も含めた自動車メーカーで開発が進んでいます。

そんな中、二輪メーカーと四輪メーカーがタッグを組み、内燃機関を活用したカーボンニュートラルの実現に向けて動き出しました。

スバルとトヨタ、マツダがカーボンニュートラル燃料を使って「スーパー耐久シリーズ」に参戦し、川崎重工ヤマハ発動機が二輪車などでの水素エンジン開発の共同研究の可能性について検討を開始するというもの。

トヨタ
水素エンジン車両「SUZUKA S耐」での様子

さらに、トヨタの水素エンジン車両が「スーパー耐久レース in 岡山」に参戦し、新たに福岡市から水素を供給するという、概要になっています。

マツダは、従来のハイブリッドやディーゼルエンジン、バッテリーEVだけでなく、今後はPHEVを投入し、パワートレインのラインアップを拡大すると表明しています。さらに、パートナーとバイオ燃料に代表される再生可能燃料の取り組みも推進。

マツダ
MAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIO

今回は、ユーグレナから供給を受ける100%バイオ由来のディーゼル燃料を使用する「SKYACTIV-D 1.5(ディーゼルエンジン)」が搭載された「MAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIO」で、2021年11月13日(土)-14日(日)に行われた「スーパー耐久レース in 岡山」の「ST-Q」クラスに参戦しました。

一方、スバル「SOLTERRA(ソルテラ)」とトヨタ「bZ4X(ビーズィーフォーエックス)」など、共同開発したバッテリーEVを披露したばかりの両社は、BEVに加えて新たな選択肢を検討するため、2022年シーズンのスーパー耐久シリーズの「ST-Q」クラスに、バイオマスを由来とした合成燃料を使用する新たな車両を投入し、実証実験をすると表明しています。

具体的には、スバルはBRZをベースとした車両、トヨタはGR86をベースとした車両で参戦。なお、トヨタは、2016年からヤマハ発動機、デンソーなどと共に、水素エンジンの開発に取り組んできたそうです。

ヤマハ発動機は、エンジンの試作、燃焼検討、出力性能向上検討。さらに、レースでの適合、耐久試験のサポートに加え、一部エンジン部品の設計を担当。

デンソーは、直噴インジェクター、点火プラグの開発を担当しています。これまで、開発中の水素エンジンが搭載された車両を「富士SUPER TEC 24時間レース」「スーパー耐久レース in オートポリス」「SUZUKA S耐」の3戦に投入。水素の製造、運搬、使用の選択肢を広げる取り組みを、様々な企業や自治体と共に推進してきました。

「スーパー耐久レース in 岡山」でも、引き続き「ORC ROOKIE Racing」の参戦車両として投入し、豊田章男社長がドライバー「モリゾウ」としてレースに参戦しました。

また、川崎重工は、2010年から次世代エネルギーとして水素に着目し、社会生活に必要なサプライチェーン全体(製造、運搬、使用)にわたる技術開発を進めてきました。現在、オーストラリアの褐炭から製造された大量かつ安価な水素を日本へ「運ぶ」ための実証試験を開始し、2021年度中には川崎重工が建造した世界初の液化水素運搬船「すいそふろんてぃあ」による水素の輸送が予定されています。

FC小型トラック 水素タンク
FC小型トラックの水素タンク

また、水素を使用する際は、2018年に世界で初めて成功した市街地での水素100%を燃料とするガスタービン発電技術で培われた水素燃焼技術をベースに、二輪車船舶用、航空機用、といった「陸・海・空」のモビリティ向け水素燃料エンジンの開発を推進しています。

なお、日本国内で発生する副生水素の活用も始まったばかりで、海外からの輸送だけでなく、こうした副生水素の活用にも注目が集まっています。

ヤマハ発動機は、二輪車やROV(四輪バギー)などの自社製品への搭載を視野に入れた水素エンジンの技術開発を進めています。これらの開発を加速させるために、新規の設備導入の準備と、社内における開発体制の強化を推進するとしています。

さらに、川崎重工とヤマハ発動機は、二輪車への搭載を視野に入れた水素エンジンの共同研究について検討を開始したと発表しました。

今後は、ホンダとスズキも加わり、4社で二輪車における内燃機関を活用したカーボンニュートラル実現への可能性を探っていく予定としています。協調と競争を分けるべく、協調領域と協働研究の枠組みを明確にした上で推進していきます。

四輪では日産・三菱勢やダイハツなどが加わっていないものの、二輪メーカーも含めてほぼオールジャパン体制で、水素などを使った新たな電動化戦略を推進する構えです。

塚田勝弘

この記事の著者

塚田勝弘

塚田勝弘 近影
1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。クルマ、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。