5代目・ベンツCクラスは、4輪操舵も採用しバツグンの動力性能を確保

■メルセデス・ベンツとは:世界で最初に自動車を作ったダイムラーのブランド名

ベンツ1号車
1886年に撮影されたベンツの第1号車。ハンドルを握るのがカール・ベンツ氏

メルセデス・ベンツはドイツのダイムラー社のブランド名です。1886年、ドイツにおいてゴットリープ・ダイムラーとカール・ベンツという2人のエンジニアによって世界初の自動車「ベンツ・パテントモーターカー」が発明されました。

1899年、オーストリア・ハンガリー帝国の領事であったエミール・イェネックはダイムラー社からクルマを買って販売する事業を展開することを決意、その際に自分の娘の名前であるメルセデスの名称を車名に使うことを熱望、1900年にはメルセデス・ベンツの名を冠した最初のモデル、メルセデス35馬力が発売になります。

1902年にはダイムラー社がメルセデスを商標登録します。ゴットリープ・ダイムラーはダイムラー・モトーレン社、カール・ベンツはベンツ&カンパニー社を経営していましたが、第一次世界大戦後の復興に合わせて1926年に両社は合併し、ダイムラー・ベンツという会社になります。

1998年にはアメリカのクライスラー社と合併し社名がダイムラー・クライスラー社となりますが、2007年にはクライスラー部門をアメリカの投資会社に売却して社名をダイムラー社とし、現在に至ります。

●Cクラスとは:190シリーズの後継となるコンパクトセダンを中心とした車種

1982年に、メルセデス・ベンツのシリーズでもっともコンパクトなモデルとなる190シリーズが登場します。

Cクラスはこの190シリーズが1993年にフルモデルチェンジされた際に使われたシリーズ名で、以降はすべてCクラスとなります。

190E
Cクラスの元となるのが190シリーズ

190時代は基本的なボディサイズは日本の5ナンバーに収まるものでしたが、Cクラスになってからはボディ全幅が1700mmをオーバーするようになり、3ナンバークラスのモデルとなりました。

190時代から大出力エンジンを搭載するスポーツタイプが設定されているのも特徴で、190では3.2リットル(234馬力)を搭載、初代Cクラスでは5.5リットル(347馬力)、先代にあたる4代目では4リットルのV8ツインターボ(510馬力)を搭載するまでに至っています。

190時代は4ドアのノッチバックセダンのみの設定でしたが、初代Cクラスではステーションワゴンを追加、2代目でクーペを追加、4代目ではカブリオレを追加しています。

新型となる5代目は、まずはセダンとワゴンがフルモデルチェンジされましたが、いずれクーペやカブリオレも登場するはずです。

メルセデス・ベンツの型式はアルファベット+数字で表されます。Wがセダン、Sがステーション、Cがクーペ、Aがカブリオレという方式で、セダンを例にすると190がW201で、最新モデルがW206となります。

●新型Cクラスの基本概要:全車にISG装備もしくはPHV化で電動化

新型Cクラスは、セダンとステーションワゴンの2種のボディから最新に置き換わります。

発表されている搭載エンジンは1.5リットル直4ターボ(ISG)、2.0リットル直4ディーゼルターボ(ISG)、2.0リットル直4ターボのプラグインハイブリッドで、現状ではステーションワゴンにプラグインハイブリッドは設定されていません。

また、セダンのプラグインハイブリッドは価格も未定とのことで、導入が決定しているだけと考えてよく、今のところはガソリン1種、ディーゼル1種となります。

1.5リットル直4ターボは新開発のM254型で、最高出力は従来型より20馬力アップの204馬力、最大トルクは20Nmアップの300Nmで、ISGのモーター出力は従来型の1.5倍となる15kWとなっています。

先代のCクラスはフロントがストラット、リヤがマルチリンク式のサスペンションでしたが、新型のフロントサスペンションは4リンクの名を使うダブルウィッシュボーン式(通常のダブルウィッシュボーンは上下アームの構成ですが、ドイツ系メーカーが使う4リンクという名称はアッパーアームを2本、ロアアームを2本で構成されるものです)としました。

Sクラスで採用された4輪操舵システムのリア・アクスルステアリングもオプションで用意されました。約60km/hまでの速度域では後輪を逆位相に最大2.5度ステア、60km/hを超えると同位相に最大2.5度ステアするようになっています。

また前輪のステアリングレシオも10%クイックになっています。低速域での逆位相によって約40cmの最小回転半径短縮を実現するとともに、中・高速域では同位相によって高いスタビリティが確保されています。

●新型Cクラスのデザイン:Sクラス同様にキャットウォークラインを採用

新型Cクラスは、Sクラスで用いられたキャットウォークラインと呼ばれるプレスラインを採用しています。全体にまるみを帯びたデザインの新型Cクラスは、シンプルな面で構成されるボディを持ちますが、そのまとまり感は非常に高いレベルです。

サイドはフロントフェンダーからリヤフェンダーまでウエストラインの部分にキャットウォーク(体育館の上方周囲にあるような細い通路)のように段差を付けたキャットウォークラインを採用、サイドのアクセントラインはこのキャットウォークラインとドア下部のプレスラインだけで非常にシンプルながら、美しい面を実現しています。

また、ボンネットにはパワードームと呼ばれる盛り上がり設けられています。パワードームは初代SLから採用されているデザインで、メルセデスのスポーティさを象徴するものです。

AMGラインには、スリーポインテッドスターをちりばめたスターパターンと呼ばれる新しいグリルデザインが採用されています。

●新型Cクラスのパッケージング:全体としてひとまわり大きくなったボディ

W206 Cクラス リヤ7/3スタイル
斜め後ろからは伸びやかなスタイルが確認できる

新型Cクラスは先代モデルに比べて、全長が80mm延長の4785mm、全幅が10mm延長の1820mm、全高がプラス5mmの1435mmと全体としてひとまわり大きくなりました。ホイールベースも25mm延長され2865mmとなっています。

欧州で発表されているデータによれば、室内寸法は先代モデルに比べて前席肩部で+26mm、後席肩部で+15mmの拡大と室内のゆったりさも向上しています。

セダンのトランク容量は455リットル、ワゴンは490リットルで、フルラゲッジ時は1510リットルまで拡大できます。

●新型Cクラスの走り:Sクラスなみの余裕感だがけっこうセンシティブな面も

今回、試乗車として用意されていたのは、セダンのC200アバンギャルドでした。オプションで装着されていたものは以下のものとなります。

●ベーシックパッケージ(15万4000円)
・ヘッドアップディスプレイ
・MBUX ARナビゲーション

●AMGライン(32万6000円)
・スターパターングリル
・AMGスタリングパッケージ
・18インチAMGツインスポークアルミホイール
・Mercedes-Benzロゴ付きブレーキキャリパー&ドリルドベンチレーテッドディスク(フロント)
・スポーツサスペンション
・AMGスポーツステアリング
・レザーARTICO/DINAMICAシート
・レザーARTICOダッシュボード(ナッパレザー調)
・メタルウィーブセンタートリム
・メタルウィーブインテリアトリム
・ステンレスアクセル&ブレーキペダル
・ダイナミックセレクト「Sports+モード」(ガソリンモデルのみ)

●メタリックペイント(9万9000円)

●リア・アクスルステアリング(14万5000円/AMGラインとセット装着が必要)

W206 Cクラス 走り
Cクラスとは思えないほどの力強い動力性能と機敏な運動性能を持つ新型Cクラス

走りは実に力強いもので、ターボチャージドとはいえ、排気量が1.5リットルとは思えないほどです。

最高出力は204馬力で先代モデルよりも20馬力アップ、最大トルクは300Nmで先代モデルより20Nmアップ。組み合わされるISGの出力も10kWから15kWに向上されています。

アクセルを踏み込むと力強いトルクがクルマを押し進めます。先代モデルのISGはエンジンやトランスミッションの外側に取り付けられていましたが、新型はトランスミッションの内部にビルトインされています。そのISGを駆動するバッテリーも12Vから48Vに電圧向上されていることもあり、アシストの力強さがより際立つ印象があります。

ただ、このモデルが素(す)のCクラスであるとしたら、ちょっとやり過ぎな印象でした。ここまでパワフルで敏感なパワーフィールってありか?と思ったのです。

しかし、ドイツ本国のメルセデス・ベンツのホームページをチェックしてみると、170馬力エンジン+20馬力モーターのC180というモデルが存在しているとのことですが、それでもかなりパワフルな設定です。

Cクラスの元祖である190シリーズが登場した際のベーシックモデルは115馬力だったのです。新型Cクラスにも、もう少しゆるいモデルがあってもいいかとも思うのですが、190シリーズの登場時はまだAクラスもBクラスも存在していませんでした。

現在のメルセデス・ベンツのラインアップではAクラスがボトムラインとして存在するので、Cクラスがこのようにパワフル&スポーティな設定になってもいいのだろう、と理解しました。

W206 Cクラス タイヤ
AMGラインは前後で異なるタイヤサイズが採用される

ノーマル状態のC200は前後ともに225/50R17のタイヤを履きますが、AMGラインが装着されたことでフロントタイヤは225/45R18に、リヤタイヤは245/40R18に変更されています。

また、サスペンションのグレードもノーマルタイプではなく、スポーツサスペンションに変更。さらにはリア・アクスルステアリングと呼ばれる4輪操舵システムも装備されました。

ハンドリングは素晴らしく軽快です。もはや4ドアセダンのハンドリングという雰囲気ではありません。ステアリングを切った瞬間にスパッとインを向き、そこからアクセルを踏んでいけば安定感をもって力強く加速していきます。

4輪操舵システムの恩恵はコーナリングだけではなく、レーンチェンジなどでも有効。2輪操舵はリヤが無理をしながら付いてくる印象ですが、リヤが少し切れるだけでその安定感はバツグンによくなります。

また、低速でリヤが逆位相に切れることによる小回り特性の向上も見逃せません。筆者の世代は国産4WS黎明期に国産車の4WSを経験していますが、どれも最終的には扱いにくさが残っていました。しかし、メルセデスの4WSはそうした違和感もありませんでした。

気になったのは乗り心地の硬さです。スポーツサスペンションと扁平率を落としたタイヤからくるものでしょうが、コツコツと路面の細かい突起も拾う印象があります。

Cクラスは先代からランフラットタイヤではなく、コンベンショナルなタイヤを採用していますが、新型Cクラスはまるでランフラットタイヤを履いているかのようなフィーリングで、思わずタイヤを確認してしまいました。

ノーマルサスペンション、ノーマルサイズでどれくらい乗り心地が変わるのか? ここはチェックしておきたい項目です。このAMGラインの乗り心地では、従来の普通のCクラスに乗っていたお客さんは「?」だと思います。

●新型Cクラスのラインアップと価格:現在のラインアップはシンプル

Cクラスの価格はちょっと微妙です。というのも初期ロットと第2ロットとでは価格が異なるからです。第2ロットは初期ロットに比べて3万円値下げされています。装備面では初期ロットは全車にフットトランクオープナー(トランクリッドまたはテールゲート自動開閉機能)が標準装備され、レザーエクスクルーシブパッケージを選ぶとBurmester 3Dサラウンドサウンドシステムがセットになったのですが、第2ロットのモデルはフットトランクオープナーが未設定、Burmester 3Dサラウンドサウンドシステムが全車オプションとなりました。

当面、初期ロットと第2ロットが混在するということなので、購入時にはしっかりと確認することが大切です。

今回投入されたモデルはすべてアバンギャルド仕様となります。1.5リットルガソリンエンジン・マイルドハイブリッドがFRと4WD、2リットルディーゼルターボ・マイルドハイブリッドがFRのみです。2リットルガソリンのプラグインハイブリッドも導入が予定されていますが価格は今のところ未定です。

●新型Cクラスのまとめ:少しゆったりモデルが欲しいなら登場を待て

新型として投入されたモデルはアバンギャルド仕様のみで、パワーユニットもガソリン1.5リットル・マイルドハイブリッド、ディーゼル2リットル・マイルドハイブリッド、ガソリン2リットル・プラグインハイブリッド(セダンのみ)の3種で、プラグインハイブリッドは導入時期も価格も決定していません。

本国にはC180というもう少しパワーを落としたゆったりとしたモデルも存在しているので、C200のアバンギャルドでない仕様やC180が登場してからしっかりと試乗して選ぶのが賢明でしょう。

今すぐCクラスが欲しいという方は価格が3万円高い初期ロットならばフットトランクオープナー(トランクリッドまたはテールゲート自動開閉機能)が標準装備されるのでラッキーといえます。さらに現状ではBurmester 3Dサラウンドサウンドシステムが装着されるのは、初期ロットのレザーエクスクルーシブパッケージ(32万6000円)のみとなるので、この組み合わせが欲しい人は飛びつく価値があるかもしれません。

ただし、Burmester 3Dサラウンドサウンドシステムを装着した場合は、ラゲッジルームの形状がスタンダードとは異なり、容量もダウンしている可能性があるとのことです。

W206 Cクラス 諸元
新型Cクラス 主要諸元

(文・写真:諸星 陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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