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■スマホで新車が買える新サービスとは?
ホンダは、2021年10月4日、国内自動車メーカー初となる四輪新車オンラインストア「Honda ON(ホンダオン)」を開設し、オンラインでの新車の取り扱いを開始したことを発表しました。
これにより、スマホやPCの画面上で商談、見積り、査定、契約が、すべて可能となるといいます。クルマのオンライン販売は、アメリカや欧州、中国など海外ではすでに進んでいますが、日本の自動車メーカーでは初の試みです。
果たして、この取り組みは日本に定着するのでしょうか?
●リアルタイムの口コミも参考にできる
ホンダオンは、スマートフォンやPCの画面上で商談、見積り、買取車の査定、契約、さらには自動車保険の手続きに至るまで、すべてオンライン上で対応可能な新車オンラインストアです。
特に、最近はコロナ禍の影響で、非対面での接客を求めるユーザーも多いといいます。また、特に、販売店に訪れたことがなく、来店のハードルが高いと感じている若い世代の需要を開拓することを目的としています。
主な特徴は、まず、小さな画面のスマートフォンでも迷わずクルマが選べるよう、ホンダの人気車種、タイプ、オプションに厳選したプランを設定。
また、各車種に関するSNS上でのリアルタイムの口コミを集めたUGC(ユーザー生成コンテンツ)をストア内に表示し、ほかのユーザーによる評価を参考にしながら、クルマ選びができるといいます。
●まずはサブスクリプションから開始
ストア開設当初の販売方法は、トヨタのKINTOのようなサブスクリプションサービスのみ。月額利用料は、カーナビなどの基本的なオプション費用、自動車税、点検・車検・交換部品などのメンテナンス費用などをすべて含み、N-BOXの場合で月額3万1610円から(2021年10月現在5年契約ボーナス払いなしの場合)となっています。
ほかの対応車種は、今のところ(2021年10月初旬現在)、フィット(4万0550円〜)、フリード(4万8850円〜)、ヴェゼル(4万8460円〜)の計4モデルですが、これも今後車種が増えていくことが考えられます。
このサービスには契約にも特徴があり、ユーザーの生活の変化などに合わせ、いつでも利用をやめられ、乗り換えや買い取りも可能。これにより、オンラインで購入する不安をできるだけ払拭し、気軽に選べるサービスとなっているといいます。
なお、2021年10月現在、このサービスが利用できるのは、東京都内在住かつ、東京都の84拠点ある販売店「Honda Cars(ホンダカーズ」に納車やメンテナンスで来店できるユーザーのみ。
ホンダでは今後、順次、対応エリアを拡大すると共に、販売方法もサブスクリプション以外の選択肢を増やしていくといいます。
●海外では活況なオンライン販売
国内で自動車メーカーのオンライン販売は、トヨタが認定中古車のネット販売は行っていますが、新車では販売拠点が実質的に全国で4ヵ所しかないテスラのみです。
一方、海外では、プジョーやフォルクスワーゲンが欧州ですでにオンラインの新車販売をはじめています。また、アウディは、2020年5月に、顧客向けデジタルソリューションを全世界で拡大展開すると発表しており、24時間いつでも新車をオンラインで購入できるプロジェクトを進めています。
また、中国の大手自動車メーカーである吉利汽車(Geely)も、2020年2月からオンライン販売サイトを立ち上げ、完全非接触のオンライン販売を開始しているといいます。
さらに、前述のテスラも、日本だけでなく北米や欧州、中国でもオンライン販売を主軸としています。国際的な自動車関連のコンサルタント企業JATOによると、2021年第一四半期には、世界45ヵ国で合計72万7000台のBEVが販売された中、売上1位はテスラだったといいます。
このように、海外では新車のオンライン販売は徐々に拡大していますが、果たして日本で定着するのでしょうか?
現状、日本では主に新車を購入する層は年齢層が高く、そういった層は決まったメーカーのクルマを売る「行きつけの」販売店で、主に買い換えで購入する層も多いといいます。
一方、今回のホンダが開始したオンラインストアは、今まで新車の購入をしておらず、販売店にすらいったことがない比較的若い世代のユーザーもターゲットにしています。
確かに若い層には、販売店で対面で交渉するよりも、スマホなどで車種やオプション、ローンなどを検討する方がハードルは低いかもしれません。
ただし、たとえば、アマゾンで家電などを購入するのとは違い、クルマは高額商品です。もし、若い層にサービスの存在自体は訴求できても、新車を買えるかどうかは別。つまり需要増に繫がるかどうかは、まだ不透明だといえるでしょう。
また、メインの購買層である比較的年齢が高いユーザーが、こうしたオンラインに馴染めるのかも、今後の大きな課題だといえます。
今までの日本の販売慣例から、新しい販売方法であるオンラインストアが今後どう発展していくのか、とても気になるところです。
(文:平塚 直樹)