海外で復活を遂げたトヨタ「アリオン」。モデルチェンジ後の姿とは?

■SUV、ミニバン全盛の国内市場でセダンが次々に消滅

トヨタ自動車は昨年12月の予告どおり、2021年3月末をもって国内向けセダン「プレミオ/アリオン」の生産を終了しました。

昨今のSUVやミニバン人気に伴い、セダンの販売が低迷しているためで、昨年末に大きな波紋を呼んだクラウンのSUV化に関する新聞報道も記憶に新しいところ。

2021年3月末に生産を終えた従来型トヨタ「アリオン」

同社では新車市場が低成長下にあるなか、年間150万台程度の国内販売に留まる可能性があると予測しており、縮小が避けられない状況において営業体制強化や車両開発の効率化を図るべく、国内向けの車種数を2025年までに兄弟車の統合などで30車種程度にまで半減させる方針を打ち出しています。

車種半減にあたり、販売で苦戦している「セダン系」を対象に統廃合を進めており、「マークX」を2019年12月に、レクサス「GS」を2020年8月に生産を終了。「プレミオ」「アリオン」についても国内生産を終えたという訳です。

●「アリオン」は主戦場を海外に移してフルモデルチェンジ!

新型アリオン(上)と姉妹車のリンシャン(下)

そうした背景から、「アリオン」は消滅したかのように思われましたが、実はセダン人気が高い中国では2021年3月にフルモデルチェンジした新型アリオンが登場しており、その姉妹車「リンシャン」まで登場しています。

つまり、国内からの撤退に合せて販売先をセダンの需要が旺盛な中国に移したという訳です。中国のユーザーは後席の広さやインテリアの高級感を重視する傾向にあり、セダンについても人気が衰えることが無いのだそう。

新型アリオン(上)とべース車のカローラ比較

新型アリオンは昨秋開催の広州モーターショー2020で、トヨタの中国法人である一汽トヨタが発表。カローラセダンのホイールベースを延長した新開発の「TNGA-C」プラットフォームを採用しています。

国内仕様のカローラセダンの車両サイズは全長が4,495mm、全幅1,745mm、全高1,435mmでホイールベースが2,640mmですが、新型アリオンの場合、全長4,720(+225)mm、全幅1,780(+35)mm、全高1,435(±0)mmでホイールベースが2,750(+110)mmと、長くかつワイド化されており、上級モデルであるカムリとの中間的なサイズに仕立てられています。

高級感が漂う新型アリオンのフロントマスク

エクステリアデザインについてもカローラセダンをベースに大型化されており、フロントマスクは水平基調のラジエターグリルや横方向に広がるロアグリルにより、豪華さやワイド感を強調。

新型アリオンのスタイリッシュなリヤ廻り(シーケンシャル式ターンランプ装備)

傾斜が緩やかなCピラーや、同じくワイド感を強調したテールランプ、右左折時に流れるシーケンシャル式ターンシグナルランプなどの装備が車格を感じさせます。

アロイホイールはラグジュアリー感のあるスポークタイプを採用しており、ミシュラン製パイロットスポーツ4タイヤを標準装備。

後部座席の足元がゆったりしたインテリア

インテリアではホイールベースの拡大により、後部座席の足元空間が広くとられており、エレガントな革張りシートを用意。インパネ中央には9インチサイズのナビゲーションを装備しており、複数の表示モードを持つ12.3インチのフルLCDパネルにはタイヤ空気圧情報を表示可能。後席にもエアコン吹き出し口が設けられており、USB充電ポートを2個装備。

新型アリオン(リンシャン)のパワートレイン

フロントサスペンションはマクファーソン式、リヤサスペンションはダブルウイッシュボーン式で、2.0L直4DOHC16バルブ仕様のダイナミック・フォースエンジン(171ps/20.9kgm)と10速ダイレクトシフトCVTの組み合せにより、上質な走りと快適な乗り心地、静粛性に加え、広々としたキャビンを実現しています。

そんな新型アリオンの中国での車両価格は約243万円〜約306万円となっています。

●カローラ クロスに次いで「アリオン」も“里帰り”実現なるか?

一方、アリオンのベースになったカローラは先頃、世界で累計販売台数5,000万台を突破。世界で最も売れているクルマの一つであり、現在では世界のベンチマーク対象になっています。

国内デビュー目前のSUV「カローラ クロス」(筆者による予想図)

そんな現行カローラ(12代目)には、セダンやハッチバック、ワゴンなどのバリエーションが存在しますが、昨年海外で先行デビューしたSUV版、「カローラクロス」のフロントマスクを国内向けにアレンジした国内専用モデルの日本デビューが目前に迫っています。

以前、豊田章男社長が「ユーザーが求めるものは日々刻々と変わっていくもの。それに応えることはいつも我々の優先事項」と明言しているとおり、時代は刻々と変化しています。

現在トヨタがレクサス以外で国内で販売しているセダンと言えば、プリウスやMIRAI、センチュリーを除くと、カローラ、同アクシオ、カムリ、クラウンにほぼ限られる状況。

新型アリオン(リンシャン)の伸びやかなサイドビュー

しかしながら、こと輸入車に関しては一貫してセダンが販売の主流を占めており、その背景にはSUVやミニバン人気の他にもセダンの格調高さや質感を重視するユーザーが、欧州車などに流れたことが要因としてあげられています。

国産セダンについても、SUVやミニバン人気が落ち着いた先に、デザインを含めて輸入車に負けない魅力的なセダンが開発できれば、乗用車の基本型であるセダン人気の復活が期待でき、その暁には1970年に誕生したカリーナの血を引く「アリオン」についても日本への“里帰り”が実現する日が来るかもしれません。

Avanti Yasunori

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【関連リンク】

TOYOTA ALLION
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TOYOTA LINGSHANG
https://www.gac-toyota.com.cn/vehicles/lingshang

カローラセダン(国内仕様)
https://toyota.jp/corolla/?padid=from_not_tjptop_menu_corolla

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Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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