■想定を超える人気が頷けるトルクフルな走りで、ロングドライブも快適
2021年7月1日に発表、同月8日に発売された「ルノー カングー リミテッド ディーゼル MT」。
その名のとおり、1.5LのディーゼルターボにMTが組み合わされた仕様です。400台限定で、発売と同時にほぼ完売状態になってしまったそう(8月上旬時点で完売しています)。
ルノー・ジャポンとしては半年くらいかけて売り尽くす見込みだったそうですが、「ディーゼルエンジン+MT」仕様は以前から要望されていた仕様であり、想定をはるかに超える売れ方となったようです。
7月上旬に行われたプレス向け試乗会の時点でほぼ完売。運が良ければ販売店に在庫があるかも…という状態でした。
カングーは日本におけるルノーの主力モデルの1台で、MT比率もMPVとしてはかなり高いクルマ。とはいえ、日本の乗用車では少数派のMT。この限定車の反響には、驚かされます。
最新のコモンレールシステム(燃料噴射システム)を備え、尿素SCRとディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)による排ガス処理システムが採用された「ルノー カングー リミテッド ディーゼル MT」は、最高出力116PS・最大トルク260Nmを発揮する1.5Lディーゼルターボを搭載。6速MTは同エンジン用にギヤ比が最適化されています。
エクステリアは前後のブラックバンパーをはじめ、ブラックスチールホイール&ブラックセンターキャップ&ブラックホイールカバーが備わり、カングーの良さでもあるギヤ感・道具感を抱かせるカラーコーディネイトも特徴になっています。
ほかにも、車庫入れの際に便利なバックソナー(オプションのリヤカメラで後方映像が表示される)、「LIMITED」エンブレム、LEDデイタイムランプも特別装備。
116PSの最高出力は驚くほどパワフルではないものの、260Nmの最大トルクにより実用域での力感は十分に伝わってきます。なお、1.2LガソリンターボのMT(ゼン)は115PS/190Nmですから、70Nmもディーゼルエンジンの方がトルクフルで、走りの余裕につながっています。WLTCモード燃費は19.0km/Lです。
こうしたMPVとしては節度感のあるMTフィールも美点で、街中では4速あたりを入れておけば、ずぼらなシフト操作も許容できそう。スポーティでシフト操作を積極的に楽しむMTではないものの、実用的なMTとしてはかなり完成度が高く感じられます。
また、シーンによっては、少し跳ねるように走るカングーの乗り心地は、ほかの仕様と同じような印象で、とくにフロントシートは、シート自体の出来の良さもあり、ロングドライブでも疲れにくいはず。さらに、ルノー各モデルの長所である直進安全性能の高さも印象的。
282万円の「ルノー カングー リミテッド ディーゼル MT」は、残念ながら完売状態ではありますが、フランス本国で発表された新型は、デザインが大きく変わり、全幅は1.9mを超えています。
駐車場事情や取り回しなどにより現行型が限界という方は、同限定モデルに限らず、2代目カングーを検討するラストチャンスかもしれません。
(文:塚田 勝弘/写真:小林 和久)