リチウムイオンでない新型トヨタ・アクアの世界初「バイポーラ型ニッケル水素電池」が、セル出力1.5倍、搭載セル数1.4倍で従来比2倍の高出力を実現

■従来型アクアの約2倍の高出力を実現

新型トヨタアクアが2021年7月19日に発表されました。初代アクアは、海外名のプリウスCも含めて約187万台を発売。主力市場は日本で、5ナンバーサイズのコンパクトカーとして幅広い層に支持されてきました。「TNGA化(GA-Bプラットフォーム)」された新型アクアは、最大の特徴であるカタログ燃費が従来型比で約20%向上し、WLTCモード燃費35.8km/L(Bグレードの最高値)を誇っています。

トヨタ アクア
新型トヨタ・アクアのエクステリア

新型アクアは、燃費の向上はもちろん、メカニズムの面でも見どころ満載。高出力な「バイポーラ型ニッケル水素電池」が、駆動用車載電池として世界で初めて採用されています(Bを除く全車に搭載。Bはリチウムイオン電池になる)。

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世界初採用の「バイポーラ型ニッケル水素電池」

「バイポーラ型ニッケル水素電池」は、従来型アクアのニッケル水素電池に比べてバッテリー出力が約2倍に向上。同電池は、従来型ニッケル水素電池に比べて、セル当り出力約1.5倍になり、さらに、コンパクト化により同じスペース内に1.4倍のセルが搭載された結果、約2倍の高出力を実現するものです。

走りの面でも利点があります。アクセル操作への応答性が向上し、低速からリニアでスムーズな発進、加速が可能になるそう。また、電気だけでの走行可能速度域が拡大され、街中の多くのシーンでエンジンを使わず電気だけで走行できます。

「バイポーラ型ニッケル水素電池」は、初代プリウスから培われてきた電池およびハイブリッドシステムの技術開発、品質管理のノウハウを持つトヨタと、長年にわたる電動フォークリフト用の電池開発で蓄積してきた、材料の開発や性能評価の解析技術を持つ豊田自動織機のノウハウを融合。電動車の市場投入をいち早く、着実に進めることを目指し、電池開発を積み重ねた結果、従来型の電池と比較してコンパクトで高出力な性能を持つ同電池が開発されています。

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「バイポーラ型ニッケル水素電池」は、コンパクト化と高出力化を両立する

さらに、従来型のニッケル水素電池と比べて、先述のように、集電体などの部品点数が少なくなるのでコンパクト化できる利点もあります。従来型電池と同等のサイズの場合、より多くのセルを搭載することが可能。また、通電面積が広くシンプルな構造により、電池内の抵抗が低減することで、大電流が一気に流れるようになります。その結果、出力の向上につながります。

電動化車両は、電池の積載スペースが嵩むため、居住性や積載性に影響が出ることが多々あります。「バイポーラ型ニッケル水素電池」は、出力向上とコンパクト化を実現し、さらにエンジンを従来よりも使わず、モーター走行による静かでパワフルな走りが楽しめるそうです。

また、トヨタ初採用の「快感ペダル」も注目です。走行モードから「POWER+モード」を選択すると、アクセルペダルを緩めるだけで回生によって減速度を増大させ、滑らかに減速することができます。アクセルとブレーキペダルの踏みかえ頻度を抑え、ドライバーの負担を軽減しつつ意のままの走りを実現したとしています。

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新型アクアの「EV MODE」スイッチ

塚田 勝弘

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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