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■独自機構を持つ前2輪・後1輪の街乗り電動車
バイクから宇宙ロケットの部品まで手掛けるカワサキこと川崎重工業が、独自の技術を投入した電動3輪ビークルの「noslisu(ノスリス)」を開発しました。クラウドファンディングサイト「Makuake」で100台限定販売し、なんと即日完売してしまいました。
街を快適で安全に移動できる新感覚のシティビークルとして開発された、注目のモデルを紹介しましょう。
●デコボコ路面などでも安定
ノスリスの開発を担当したのは、バイクをはじめ、様々なモビリティや産業用機器を手掛ける川崎重工のエンジニアチームです。新しいビジネスアイデアを社内から募る制度「ビジネスアイディアチャレンジ」に応募し選ばれた有志たちにより開発され、今回Makuakeで販売されました。
主な特徴は、前2輪・後1輪の自転車のようなスタイルを持つこと。軽量な車体とスタイリッシュなデザインにより、街中を気軽で快適に移動できる、新タイプの小型モビリティとして生まれました。
ラインアップには、モーターがペダルを漕ぐ力を補助してくれる電動アシスト自転車タイプの「NB-01」と、アクセルレバーを押すだけで走行するフル電動タイプの「NA01」があります。
いずれも、前輪に独自のニーリング機構を採用することで、曲がる時に車体を傾けながら安定した走行を可能とします。バイクのような感覚で走れ、しかも転ばない高い安全性も魅力です。
さらに、この前輪が持つ独自機構は、デコボコとした荒れた路面や、滑りやすい路面、急な横風が吹くような場面でも安定して走ることができるといいます。
前2輪・後1輪のバイクには、ヤマハが845ccエンジンのスポーツ車「NIKEN GT」やスクータータイプの「トリシティ」シリーズをすでに販売しています。ヤマハ車では、同社独自のLMW(Leaning Multi Wheel)機構を採用します。
一方、ノスリスに採用されているニーリング機構はカワサキが特許出願中ということですので、詳細は発表されていませんが、また異なった機構が用いられているようです。
●ヘルメットや車検は不要
ノスリスは、電動アシスト自転車タイプが、全長1600mm×全幅600mm×全高950mm。車両重量は28kgです。
一方、フル電動タイプは、全長1750mm×全幅700mm×全高1050mm。車両重量は31kgです。
いずれも軽量な車体を持つことで、女性や高齢者でも乗りやすく、幅広いユーザーが気軽に運転できます。
前輪には普通の自転車と比べ、かなり大容量の前カゴを装備することで、大量の買い物をした時はもちろん、仕事や旅行用のバッグや小型スーツケースなどを積載することが可能。さらに、3輪ですから、スタンドなしで自立するため、荷物を載せる時や降ろす時も車体を倒す心配がありません。
電動アシスト自転車タイプは、道路運送車両法上では軽車両に該当し、道路交通法上の区分は駆動補助機付自転車となります。つまり、通常の電動アシスト自転車と同様で、免許やヘルメットの着用は不要なのです。航続可能距離は50kmですから、ちょっとした遠出も可能ですね。なお、バッテリーの充電時間は5時間です。
一方、フル電動タイプは、道路運送車両法上では第一種原動機付自転車となり、道路交通法上の区分は普通自転車となります。公道走行はもちろんOKですが、普通自動車免許が必要。
なお、ヘルメットの着用義務はなく、車検もありません。こちらの航続可能距離は65kmで、最高速度は40km/h。バッテリーの充電時間は7時間です。
●2022年に一般販売
ノスリス2モデルは、前述の通り、5月12日にクラウドファンディングサイトのMakuakeで販売されました。価格(税込)は電動アシスト自転車タイプが50台限定で27万円。フル電動車タイプが同じく50台限定で32万円です。
カワサキのブランド効果もあってか、これも前述の通り、即日完売したのですが、カワサキでは同じモデルを「追加販売する予定は今のところない」といいます。
これは、今回あくまでテスト販売だったためです。今後、Makuakeで購入したユーザーからの意見を聞くなどで、さらなる改良を進め、2022年に一般販売を予定しているそうです。
電動アシスト自転車は、やはり2輪メーカーのヤマハが販売する「PASS」が人気ですが、カワサキもついにこのジャンルへ進出する方向性のようです。正式モデルがどんなスタイルや性能を持って出てくるのか、ちょっと楽しみですね。
(文:平塚直樹)