■外観もメカニズムもほとんど変わらず だが走りは違う
マツダ3がマイナーチェンジを受けました。従来、マイナーチェンジというと、エクステリアのデザインを変更したり、さまざまなパーツを追加装備したり、ときには搭載しているエンジンを変更したり……となり、クルマの魅力もアップしますが、同時に価格もアップするものでした。しかし、今回のマツダ3のマイナーチェンジはちょっと変わっていました。
今回のマイナーチェンジではエクステリアにはほとんど変更はなく、e-SKYACTIV Xシステムを採用するマイルドハイブリッドモデルのフェンダーに「SKYACTIV X」のバッジが追加された程度のものとなっています。
しかし、内容は細かい部分で変更を受けています。
たとえば、このマイルドハイブリッドはエンジンが10馬力アップして190馬力、トルクは224Nmから240Nmに向上。実際に乗り比べると、大幅な出力向上のようなものは感じられないものの、全体としてすっきり感が増しています。エンジンの出力がよりリニアに回転についてくるという印象です。
マイルドハイブリッドシステムとのマッチングもよくなった印象で、全体として走りに磨きが掛かっています。ただしこれは新旧を乗り比べないとわからないかもしれません。
さらにわかりやすい進化となったのが、ディーゼルエンジン搭載車です。
マツダ3のディーゼルエンジンは1.8リットルの4気筒でマイナーチェンジ前は116馬力、マイナーチェンジ後は130馬力と14馬力のパワーアップが行われています。ガソリンモデルに比べて出力アップ比が大きいこと、ハイブリッドシステムという介在がないことなどもあり、よりパワーアップが感じ取れます。
走りの進化度はガソリン2リットルと同様で、すっきり感がアップしているというフィーリングとなります。
さらに今回のマイナーチェンジでは足まわりの変更も行われました。この変更は搭載エンジンに関係なく全グレードに採用されたもので、フロントはスプリングレートをアップ、フロントバンプストッパーの初期レートをダウン。前後ともにショックアブソーバーの最適化が図られています。
マツダはGベクタリングコントロールプラス(GVC+)という技術を各車に採用しています。
これはコーナリング時などにエンジンの駆動トルクを制御するとともに、4輪の独立ブレーキ制御によってクルマを安定させる機構ですが、マツダ3ではそのGVC+の効果をさらに向上できるように、グリル内にエアシャッターを設けて空気の流れを調整しています。いってみれば可変エアロパーツをグリル内に内蔵するような機構です。
マツダはマツダ3とCX-30の従来モデルに、このマイナーチェンジで行われたソフトウエア関係のアップグレードを無償で提供することを発表しています。
アップグレード対象は3種で下記のようになります。テスラなどは制御システムのアップデートを行ってきました。また、リコールやサービスキャンペーンなどで制御プログラムの書き換えを行うことはありましたが、性能向上のための制御プログラムの書き換えを国産メーカーが行うのは初の試みで、今後のクルマの進化の仕方が大きく変わるターニングポイントとなるかもしれません。
1.e-SKYACTIV X搭載車のエンジンとATの制御プログラム
内容:エンジンとATのスペックアップ
対象車種:2019年11月8日~2020年11月27日生産のe-SKYACTIV X搭載車
2.クルージング&トラフィック・サポート(CTS)の制御プログラム
内容:作動上限車速を約55km/hから高速域まで引き上げ、高速道路や自動車専用道路の渋滞時等に運転疲労の軽減をサポート
対象車種:2019年4月2日~2020年12月1日生産のCTS装着車
3.マツダ・レーダー・クルーズコントロール(MRCC)の制御プログラム
内容:追従走行における加減速制御を、より人間特性に合わせより滑らかにします
対象車種:2019年3月5日~2020年8月28日生産の全車
(文・写真:諸星 陽一)