モダンに秘めたる懐かしさ 【ランドローバー・ディフェンダー110SE試乗】

■50年間ずっと温めて、ついに羽化した最新モデル

ジープ・ラングラーと並んで、無骨でクラシカルなクロスカントリー4WDとして知られていたランドローバー・ディフェンダーがフルモデルチェンジ、スタイリッシュで都会的なモデルに生まれ変わったのが2020年のことでした。

ディフェンダー 前7/3
ディフェンダーフロントスタイル

ディフェンダーは1971年に発表、翌72年から発売されていたシリーズIIIが83年のマイナーチェンジで名前を変えたモデル。つまり、生まれとしては1971年生まれです。約50年大きな変化がなかったモデルが急に変わるというのはなかなかないことです。

ディフェンダーインパネ
水平基調のインパネはクロスカントリー走行には欠かせないデザイン

そもそも、クラシカルで土の香りのするモデルであった先代ディフェンダーと、モダンでスタイリッシュな新型とでは、大きく違うように見えるのは仕方ないことです。しかし、それは急激な変化があったからで、50年前のモデルと現代のモデルを並べたら劇的に違うというのは、そんなに不思議なことではないでしょう。

ディフェンダーの場合は、中間がすっぽり抜けているだけです。そして、その抜けている間の部分はディスカバリーやレンジローバーが担ってきているのです。

ディフェンダー フロントシート
フロントシートはタップリとしたサイズ。シートベルトがシートから出ていて、高い拘束力を持つことが見てとれる
ディフェンダーリヤシート
リヤシートはフォールディング性も考えて、かなり平板なデザイン。車幅があるだけに広々感がある

しかし新型ディフェンダーを見てみると単純にスタイリッシュにしただけではなく、ランドローバーらしいシルエットを生かしつつ、ディフェンダーらしい力強さがみごとに表現されています。

どこから見ても水平基調を大切していることがわかるデザイン、ボディ下側をワイドとし上に向かうに従って段階的に絞られていく様は、クロスカントリー4WDの基本に忠実なフィニッシュと言えるでしょう。クラシカルな雰囲気はずいぶん減ったものの、クロカン4WDらしさは一切失わずに、モダンな姿に生まれ変わっていることには感動を覚えます。

ディフェンダー ラゲッジルーム
キッチリと四角く、フラットなラゲッジルーム
ディフェンダー バックドア
バックドアは横開き。さすがにこのサイズで縦開きはつらい

試乗車は2リットルガソリンターボエンジンを搭載するモデル。

出力は300馬力もあり、2.3トンという車重を感じさせない、実に力強い走りを披露してくれます。横浜での試乗だったのでかなりきつめの登り勾配のある坂道なども試しましたし、高速道路の巡航なども試しましたが、日本で使うのにはこのエンジンで十分ではないかなという印象です。

ディフェンダー エンジン
300馬力を発生する直列4気筒エンジン

目線が高く、車重が重いクルマはコーナリングに不安を感じることが多いのですが、ディフェンダーはそうしたことがありません。タイヤの踏ん張り感がしっかりとしていてるのが最大の要因です。

コーナーに向かってステアリングを切っていくとクルマがロールを始めますが、そのロールの出方がしっかりとしているのです。サスペンションのセッティングが甘いと、最初の動きが急激だったり、途中でスッと抜けたりということが起きますが、そうしたことがまるでなく、ロールの動きが徐々に抑制されるような印象です。車高がしっかりあって、重いクルマを作り続け来たノウハウの蓄積はすごいものだと感じさせくれました。

ディフェンダーリヤ7/3
ディフェンダーのリヤスタイル
ディフェンダー タイヤ
255/60R20サイズのタイヤを履く

ライバルの輸入SUVとは少し違う雰囲気を持ったディフェンダーは、余裕のある風格を感じさせてくれるモデルだという印象。

流行っているからSUVではなく、SUVを楽しみたいから乗るクルマということを感じさせてくれました。モダンでありながら、いろいろな部分にクルマとしての懐かしさを感じるモデルでした。

(文・写真:諸星 陽一)


ディフェンダー 正面
ディフェンダーの正面スタイル
ディフェンダー 真後ろスタイル
ディフェンダーの真後ろスタイル
ディフェンダー 真横スタイル
ディフェンダーの真横スタイル

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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