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■シトロエンの新型「ベルランゴ」の魅力とは?
2020年10月よりカタログモデルにて本格デビューしたシトロエンの新型「ベルランゴ」。前年の先行オンライン予約が、わずか5時間半で満枠となった人気MPVのデザインの魅力はどこにあるのか? あらためて検証してみましょう。
●シトロエンのデザインコードが生きるフロントフェイス
RVとして欧州市場で確固たる地位を築く「ベルランゴ」の3代目は、グループPSAの新世代プラットフォーム「EMP2」を採用。
全長を先代比で26mm増に収める一方、全幅40mm、全高45mm、ホイールベースを57mm増として、取り回しのよさと広い室内、正面視でほぼ正方形のユニークなパッケージングを獲得しました。
シルエットの基本は、短いフロントエンドと大きなキャビンの典型的な箱型スタイルですが、大きく寝かせたAピラーと、緩やかにカーブを描くリアエンドによって適度な引き締め効果が生まれ、過剰な「巨体感」は回避されています。
細部を前から見て行きます。丸くカーブするフードはダブルシェブロンのアッパーグリルにうまく融合していて、ベルランゴのプジョー版である「リフター」より自然な感じに。フロント面は垂直ではなく、緩やかにスラントさせることで柔らかさも感じさせます。
角を丸めた四角いグリルと2段構造のランプは最新のシトロエンのデザインコードですが、グリル内の楕円モチーフもユニークかつ効果的です。
次に側面へ。フロントドアの窓は視界確保のためか前下がりになっていますが、そこからフードへ斜めに持ち上がるラインが、大きなボディに強い前進感を生み出します。ここは、Aピラーとドア前部などをブラックアウトさせ、視覚的に一体化させているのも上手いところ。
また、前後のドアガラスは、角をランダムにカットした形状。単なる四角形や一定のRでは簡素で安っぽさが出てしまいそうですが、そこに動きを持たせたのが肝です。もともと、ドアハンドル上部のガラス面は内部の構造的な都合で角をナナメにしたと思われますが、そこをうまく利用した感じです。
●いい意味での商用車感覚で魅せる
サイド面で先のリフターと大きく異なるのが、ホイールアーチとボディ下部に樹脂カバーを付けなかったことです。ブラックパーツを付けた方が質感が高くなりそうですが、一方で下半身が重く見えてしまう可能性もあります。
そもそもボディサイドには特徴的なエアバンプがありますから、ここは思い切って何も付けず、それによる「いい意味」での商用車感を狙ったのかもしれません。もちろん、フォグランプ部とセットとなるリング状のカラーパーツだけで、強いアクセントが成立していることもあるでしょう。
最後にリアです。リアのパネル自体は非常にシンプルですが、やはり角をカットした安定感のある広いガラスや、縦長の大型ランプの組み合わせで安っぽさは感じられません。ただ、ルーフスポイラーはいささか貧弱で、ここはもっと大きくしっかりした形状にしたいところです。
さて、あらためてボディ全体を見て感じるのが、ある種の「軽さ」です。先のリフターが、立体的なフロントフェイスや広いアンダーカバーで重厚さや高い機能性を表現しているのに対し、要所を強いアクセントで押さえつつ、抜くべきところは抜くという絶妙のバランス感覚です。
ライバルのルノー「カングー」がそうであるように、鮮やかでポップなボディカラーの追加により、大きく商品価値を高める可能性があるとも言えます。そうした「カジュアルな軽さ」が、新型ベルランゴの大きな武器になるということです。
(すぎもと たかよし)