●ハイト系ワゴンのフラッグシップとしての「性能」を表現
2020年11月25日、5年ぶりにモデルチェンジされた「ソリオ」と「ソリオ バンディット」。サイズを拡大して臨んだ新しいデザインにはどのような意図があるのか。さっそくエクステリアデザイン担当の福島氏に話を聞きました。
── まず最初に、デザインを始めるにあたって造形的なテーマは設定しましたか?
はい。「上質でダイナミックなデザイン」ですね。ソリオは上級ミニバンからのダウンサイザーや、軽自動車からのステップアップのユーザーが多い。その両者を満足させる「上質」がひとつ。また、いまミニバンのデザイントレンドとして主張の強さを出す方向にあり、そこで「ダイナミック」を挙げました。
── それは先代をどのように総括した結果なのでしょう?
先代は室内の広さや燃費、あるいは価格といった「お買い得面」が重視されていていて、デザインの優先度が若干低かったかもしれませんでした。その中で、少し高級感が足りない、安く見えてしまうといった声が寄せられていたのです。
── パッケージですが、ホイールベースは先代と同一のまま全長を80mm延ばしたのは?
荷室をもっと広くして欲しいというユーザーからの要望が多かったので延長分は荷室拡大に充てています。ただ、それによってリアオーバーハングが長くなり、ミニバン的なプロポーションを得て、サイドビューのバランスがよくなったという副産物もありました。先代は短くスパッと切れたイメージでしたので。
── 新型はフードの高さを上げたのが特徴とされていますが・・・
先のデザイントレンドの続きになりますが、やはり押し出しの強さで存在感を上げる方向に沿っています。ただ、あまり上げてしまうとフードの厚みが減ってしまうので、ベルトラインからの流れがスムーズになる範囲で最大限上げた感じです。
── フロントフェイスですが、まず「ソリオ」でもグリル開口部やエアインテークを大きくしているのが目立ちますね。
ここも先の押し出し感のためにタテ・ヨコ比を再検討しています。大きな目(ランプ)だとどうしても可愛く見えてしまうので、グリルは大きくランプは小さくし、顔のバランスを変えることで車格感も上げました。さらに、エアインテークでは加飾を外側にしてワイド感を狙っています。
── 一方「バンディット」では立体的表現としましたが、ここは若干煩雑では?
やはりユーザーの声として、実はあまりギラギラした顔を望んでいるわけではない。そこで過度な加飾に頼らず、立体感のある造形で見せようと考えました。たしかに面は多いですが、ただの箱ではなく、動きのあるカタマリという当初のテーマを表現することを狙っています。
── サイドではリアクオーターガラスに上向きの角度をつけましたが、短い全長の中で動きが多いですね。
新型はベルトラインがストレートなので、少しアイキャッチ的な要素が欲しかったのです。実は、当初ガラス後端は「閉じる」案だったのですが、室内の開放感や抜け感などを考慮して、逆に開く方向に変更したんです。ただ、流れに違和感がないよう、角度については何度も試行しています。
── 先代のキャラクターラインは直線的に上下を分けていましたが、新型はひと筆書きのようにかなり有機的ですね。
サイドビューでもテーマのダイナミックさを出すためです。線をクランクさせることで勢いが出ますし、ストロークも増えて、結果ボディが長く見えます。また、単なるレリーフではなく、ラインに沿う豊かな下半身にアッパーボディが載るイメージを出しています。ホイールアーチに向けて張りを出した面も見て欲しいですね。
── カプセル形状のリアランプは上下の中間に浮いたイメージです。
ランプの位置もいろいろ試したのですが、ルーフまで延ばしてしまうと流れが止まって抜け感が悪くなってしまう。基本はタテ形でボディ幅いっぱいに置いていますが、さらに、メッキのリアガーニッシュがランプの中までL字形に延び、左右が結ばれることでより幅広さを感じるようにしています。
── 最後に。ジムニーのような直線基調のクルマがある一方、新型ソリオはよりエモーショナルな方向ですが、スズキの中ではどのようにデザインの仕分けをしているのでしょう?
ソリオはスズキの中でもハイト系ワゴンの最上級クラスとなります。そうしたフラッグシップモデルとして、しっかり「乗用車」として見せたい。軽に対し、やはり走りのよさが小型車の特徴ですから、その点で新型は抑揚のある造形がしっかりできたと感じています。
── 小型車こその「性能」を表現しているということですね。本日はありがとうございました。
(インタビュー・すぎもと たかよし)