■最終戦でも魅せる走りでサーキットを沸かせる
41シーズンもの長きにわたり、若手ドライバー育成を担ってきた全日本F3選手権に代わり、今シーズンから装いも新たにスタートした全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権(SFL)。
その最終ラウンドが霊峰富士を臨む富士スピードウェイにて、2020年12月19日〜20日に開催されました。
今大会はスイスの高級時計ブランド「レベリオン」が大会パートナーとしてSFLをサポートすることになり、今回のスポンサードに合わせて元F1ドライバーの山本左近選手や、スーパーフォーミュラの前身であるフォーミュラ・ニッポンで4度のシリーズチャンピオン獲得経験のある本山哲Buzz Racing with B-MAX監督も選手として参戦する、注目度の高いラウンドとなりました。
このSFLに今シーズンフル参戦している、clicccarでもすっかりお馴染みとなった名取鉄平選手にとっても2020年を締めくくる最終戦ということで、木曜からの専有走行ではいつにも増して気合の漲る走りで周回を重ねます。
ところがライバルたちも渾身の走りを魅せ、最終的に6番手タイムで土・日の本番に臨むことになりました。
大会初日19日はまず9:20に30分間で行われる予選から始まります。この予選ではベストタイムがこの日午後に行われるレース1の、そしてセカンドベストが翌日曜日20日朝に行われるレース2のグリッドに反映されます。各マシン真冬の低い日差しが照らす冷たい路面に苦心しながらも入念にタイヤを温め、2セットのニュータイヤを駆使して1つでも前のグリッドを目指します。
名取選手はこの予選で、この週末での自己ベストタイムを更新し、レース1、2ともに5番グリッドを獲得します。
迎えたレース1は13:50に2周のフォーメーションラップを行い、グリッドに整列してのスタンディングスタートから、今大会最長となる21周の決勝レースの火蓋が切られます。
スタートを上手く決めた名取選手は、オープニングラップこそポジションキープとなったものの、前を行くライバルと3つ巴の3位争いを展開、今シーズン決勝では常に「魅せる」レースをしてきたその走りで、5周目にはライバルの1台をオーバーテイクし、4番手にポジションアップ! あと一つで表彰台というところまで追い上げますが、その後はなかなかペースも上がらずレース1は4位でフィニッシュとなりました。
このレース1の決勝順位がレース3のグリッドとなるため、翌日午後に行われるレース3は、この週末自己ベストとなるセカンドロー4番グリッドからのスタートとなります。
大会最終日となる20日も朝から快晴となり、気温1.5℃、そして路面温度はマイナス3.7℃というコンディションの中、7:45にコースインが始まります。8:10に2周のフォーメーションラップが行われると1台のマシンがスピンした影響でスタート手順のやり直しとなり、再度2周のフォーメーションラップが行われたことで、当初の予定より2周減算の13周でレース2が行われました。
このレース2でも名取選手は熾烈な4位争いに競り勝ち、ポジションを一つ上げて4位をゲット。そして12:35からレース2と同じく15周で行われたレース3ではしっかりポジションを守りきり、4位フィニッシュで今シーズン最終戦を締めくくりました。
●参戦初年度でシリーズ4位を獲得
2020シーズンは新型コロナウイルス感染症の影響で開幕が遅れ、8月からの4ヵ月間で駆け足のように開催されてきたSFLですが、当初の予定通り6大会17戦が行われ、そのうち上位14戦の有効ポイントで争われた選手権において、名取選手は参戦初年度ながらシリーズ4位を獲得しました。
この成績について名取選手は「自分自身、そしてマシン的にも(新型車両に代わって)まだまだ煮詰めきれないまま、あっという間に1シーズンが終わってしまいました。ポールポジションを獲得できたオートポリスは調子が良かったんですけど、他のサーキットでは基本的にディフェンスのレースになってしまいました。1シーズン戦っていく中では良い事もあれば悪い事ももちろんあるので、自分自身でそういう流れをしっかり見極めながら来シーズンまた頑張りたいと思います」と、来シーズンに向けての抱負を語ってくれました。
そして2018年Hondaフォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)でチームメイトとしてFIA-F4 JAPANESE CHAMPIONSHIPを戦い、来シーズンスクーデリア・アルファタウリ・ホンダからF1デビューが決まった角田裕毅選手について話を聞くと「昨シーズン(2019年)もFIA-F3でチームは違えど共にヨーロッパで戦って、もしそこで自分が結果を出せていたら自分は今(いい意味で)ここに居なかったと思っているので、そういう意味ではこれが今の自分の実力なのかなと思う気持ちはあります。ただ、FIA-F4では1年先輩でしたけど2018年はチャンピオン争いもしていましたし(角田選手がシリーズチャンピオン、名取選手がシリーズ2位)、ボク自身まだまだ上を目指しているので、諦めずにこれからも努力していきたいと思います」と力強いコメントをいただきました。
2020年の戦いは今大会で終わりますが、若干19歳で世界を相手に戦い、どんなステージでも夢に向かって全力で走り続ける名取選手の挑戦はまだ始まったばかり。
来シーズンからの名取選手の活躍にこれからも期待し、注目していきたいと思います。皆さんもぜひ、その魅せる走りをその目に焼き付けに、サーキットにレースを観にいらしてみてください!
(H@ty)