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■水素燃料電池車は普及しないのか?
MIRAIがフルモデルチェンジして2代目へ進化する。2014年にデビューして6年経過した燃料電池車ながら、未だに理解されていない点も少なくない。先週末、岐阜で開催されたラリーの先行車として初代MIRAIのラリー車を走らせたのだけれど、助手席に乗ったオフィシャル(クルマの競技をしている上、自動車関係企業関係者だという)は水素を燃やして走っていると思っていたそうな。
はたまた「水素は爆発するから危険では?」とか「水素はどこで買うのか?」などいろんな質問を受ける。航続距離や、水素のネダンなども知られていないようだ。「水素を作るのに化石燃料を燃やすんだから全くECOじゃないでしょう!」という意見すら出るほど。新型の登場に合わせ、燃料電池車でよく聞かれる質問を挙げ、簡単に説明していきたいと思う。
1)水素は危険か?
一番混同しているのが水爆と水素爆発のようだ。水爆というのは原爆の「核分裂」より大きなエネルギーを出す「核融合」を使った爆弾のこと。核融合には大きなエネルギーでキッカケ作りをしなければならず、水爆を起動するのに原爆使う。水素が漏れても水爆にはならない。いわゆる「水素爆発」は建物などに漏れた水素が圧縮され爆発的に燃焼した状況。ただガソリンほどのエネルギーを持っておらず、常温&常圧だと「ぽわっ」っと燃えるだけ。ガソリンより安全である。
2)水素がタンクから漏れたら?
漏れないようなタンクになっている。トヨタMIRAIの水素タンクはタンクそのものも頑丈に作られており、ピストルはもちろんM16などの小銃弾を受けても損傷しない。交通事故の衝撃は、仮にタンクが壊れるほどのエネルギーを受けたら、その遙か前に乗員は生存していないと思う。ちなみに水素が空気中に出たら、軽いためすぐ上空に拡散していく。
3)水素を燃やす?
燃料電池は水の電気分解の逆を行う。電気分解は水に電気を通すと、水素と酸素に分解する。逆に水素と酸素を反応させれば電気が出来るのだった。燃料電池は水素と大気中に含まれてる酸素を反応させ、電気を作るシステム。したがって燃料は「水素」のみ。
水素と酸素を反応させると電気と水(純水)になる。MIRAIは水(蒸気)を排出して走ります。
4)水素はどこでいれるの?
まだまだ都市部に限られる上、少ないけれど2014年から「水素ステーション」というのが作られている。ガソリンスタンドのようにクルマで乗り付け、店員さんが入れてくれます。残量警告灯点いた状態から満充填までに掛かる時間は3分ほど。「キュ~ッ!」という音を立てて800気圧(水深8千mと同じ圧力)の水素がタンクに入っていく。
5)水素の価格は? 航続距離は?
水素の価格は、現在税込みで1kgあたり1100円くらい。水素による燃費は上手に走ると1kgで100km程度走るため、一般的なガソリン車の燃費とガソリン価格で換算すると12km/Lくらいの燃料コストをイメージして貰えばよいと思う。
新型MIRAIはタンク容量5.6kg。残量警告灯点くと5kgくらい入って5500円。500kmくらい走れると思えば間違いない。安心して走れる航続距離は冬場550km。夏場600km程度でしょう。
6)水素をどうやって作る?
現在は水を電気分解して作っています。将来的には太陽光などで出来る使い道の無い余剰電力を使い、水素に換えて蓄えることになると思う。バッテリーに電力を貯めるより効率良く、しかも貯めた水素を運ぶことだって可能。将来的には砂漠で作った電力や、風力発電など発電量が安定しない再生可能エネルギーのバッファとして有望。
7)価格は?
初代MIRAIは741万円スタートだった。政府から補助金が202万円出るため実質的に539万円。東京都だとさらに101万円出るため438万円となった。新型MIRAIは中型FF車をベースだった初代より大幅にグレードアップしながら(レクサスLSをベースにしている)値下げ。
補助金は少なくなったものの、クラウンの上級グレードよりお買い得な価格設定です。決して高くない。
新型MIRAIは12月9日から試乗車も用意される。台場のメガWebでも試乗可能。ぜひハンドル握ってみて頂きたい。良いクルマです。
(文:国沢光宏/プロトタイプ写真:井上 誠)