■初代チャンピオンは、6戦中4勝の加藤正夫選手が獲得
今シーズンから始まったダイハツ・エッセだけを使用して行われるワンメイクシリーズ「オールジャパンエッセカップ(AJEC)」の最終ラウンドが、三重県にあるモーターランド鈴鹿で開催となりました。
ダイハツ・エッセは、6代目ミラをベースに開発された5ドアハッチモデル。
軽量(車重は700kg)なボディと、8000回転まで軽快に回る3気筒12バルブKF-VE型エンジン(最高出力58ps/最大トルク65Nm)との組み合わせによる軽快な走りが魅力で、販売期間は2005年から2011年までとすでに終了していますが、今でも人気のモデル。
このAJECことエッセカップは今シーズン創設されたばかりのシリーズで、ダイハツ・エッセだけの1ラウンドで2戦を開催し、全3ラウンド6戦で争われるシリーズとなります。各ラウンドで3種類の競技を行い、各ラウンドのポイントでシリーズを争います。
第1ラウンドは6月に恵那笠置山モーターパーク(岐阜県恵那市)を舞台にジムカーナ競技で開催。第2ラウンドは10月に長野県木曽郡の山中でのヒルクライムでの競技となり、そして今回のサーキットトライアルでの第3ラウンド、第5戦および第6戦の開催となります。
AJECのエントリー台数は、ラウンドを重ねるごとに増えていき、今回はダブルエントリー含む14台18選手の参加となりました。
今回のスケジュールは、2グループに分け、15分ごとの練習走行セッション2回を経て、第5戦のタイムアタック。そしてさらに15分の練習走行を入れて、第6戦決勝となります。サーキットトライアルというとおり、2周のワンカーアタックでのベストタイムで結果を競うこととなるわけです。
シリーズは、1位に9点、以下6点、4点、3点、2点、1点と6位までにポイントが与えられており、ランキングトップを行く加藤正夫選手(#68 水色エッセ)が、ここまで2ラウンド4戦で3勝を挙げており(第4戦終了時点で33ポイント)、圧倒的有利な状況でこの最終ラウンドを迎えています。
ランキング2位となっているのは、安部由和選手(#67 EPL明光みどり虫エッセ/同16ポイント)で、この最終ラウンドを2戦ともに優勝が必須であり、タイトルはほぼ加藤選手が確定しているという状況でした。ランキングは以下、保科 学選手(12ポイント)、三枝光博選手(9ポイント)、中川勇気、河合勇喜の両選手が7ポイントでこれに続きます。このあたりのポイントランキング争いも熾烈となっています。
モーターランド鈴鹿は、反時計回りのコースで4本のストレートとそれをつなぐ8つのコーナーを持つ全長1kmのコースで、左コーナーが多いため左輪が浮きやすく横転の危険性もあります。また、ドリフト走行にも使用されるコースのため、ラバーの乗った部分もあり路面のグリップの違いにも注意が必要だといいます。
この日のモーターランド鈴鹿は、風が強くまさに冬のような寒さの朝を迎えていました。終日雲は多かったものの、無事にドライ路面のままでの最終ラウンド2戦が開催されました。
午前中の2本の練習走行からスタートしますが、1本目の練習走行で51秒904のトップタイムを出したのが、中川勇気選手(#65 チームナビックみどりエッセ)。中川選手は、10年ほどここに通っていることもあり、まさに貫禄の走りといったところ。
2本目の練習走行でのトップタイムは52秒468で藤井俊也選手(#62 やまびこっ!大福エッセ)。藤井選手は、前日から鈴鹿入りして練習を重ね、この日に向けて準備を重ねてきたといいます。1本目は3番手のタイム(52秒381)でしたが、この2本目のセッションではトップタイムをマークしました。
2回の練習走行セッションで、1本目で52秒075、2本目52秒690と両セッションで2番手のタイムを記録したのが、シリーズランキングトップの加藤選手です。
そして迎えた決勝1回目(第5戦)は11時50分過ぎにスタート。ワンカーアタックでそれぞれが2ラップでのタイムアタックを行ない、そのうちのベストタイムで勝者が決まります。
アタックは2本目に走行した佐合真志選手(#52 K’s FACTORY・ウエストサイドレンタルエッセ)がまず53秒台となる53秒485のタイムをたたき出し、これがターゲットタイムとなります。第5戦がスタートしてちょうどエントリーの半分が走行を終えたところで、陽射しが降り注ぐようになっていき、中川選手は「陽が出てきてタイヤが引っかかるような挙動が出てしまって、こけないように抑えるのに必死だった」とコメントするほど。
そして、この鈴鹿戦に向けて気合を入れてきた藤井選手が、アタック1本目の4コーナーで、あやうく横転というハーフスピン。「これで冷静になりました」と、ここから気持ちの立て直しを行ない、2本目のアタックをしっかりまとめ上げました。結果、中川選手が52秒170のタイムで優勝。2位には「このコースはあまり好きではない」と言っていた加藤選手(52秒311)が入り、3位には52秒466で藤井選手が入ることとなりました。
第5戦を終えて、続く第6戦までに、15分間の練習走行が1本あり、そして午後3時過ぎから第6戦のタイムアタックがスタートしました。練習走行のタイミングでは、陽射しは回復したものの、日の短い時期ということもあり、コース上はどんどん日陰に占領されていき、路面は再び冷えていくことになります。
この第6戦でも、まず2番手に走行をした佐合選手が53秒522のタイムを出し、この53秒台がターゲットタイムとなります。これを上回るタイムを出したのが、12番目にコースに入った藤井選手。このタイムは52秒687。しかしこのタイムをコンマ5秒上回る52秒182のタイムを中川選手がたたき出し藤井選手の優勝の夢は崩れてしまいます。
そして最後にコースインした加藤選手が出したタイムはなんと52秒011。この日の決勝のベストタイムで加藤選手が有終の美を飾ることとなりました。
また事務局より来季についてのアナウンスもあり、2021年シーズンは全4ラウンド4戦(今年のように1開催で2戦を組み込むことはしない)となることが発表されました。
今年と同じように、パイロンジムカーナ(恵那モーターパーク)、林道アタック(長野県木曽地方)、サーキットトライアル(モーターランド鈴鹿)以外に、ラリージムカーナ(事務局の造語で、さまざまなコースをラリーのSSのように回りながらその合計タイムを競うものとする)と題したものを愛知県にあるキョウセイモータースポーツランドを舞台に開催予定だといいます。
まだ新型コロナ感染拡大の影響が読めないので何とも言えませんが、第1戦を2021年4~5月、第2戦を6~7月、第3戦を10~11月に、第4戦を12月に開催できるよう準備を進めているといいます。
また、チャンピオンクラス(日本一を競うクラス)とエンジョイクラス(各コースを楽しみたいクラス)と、クラスを2つに分けて開催予定ということも発表されています。この新しいレースシリーズの来季の盛り上がりを期待したいところです。
(青山義明)