もてぎ戦優勝を勝ち取ったST-Xの888号車は岡山の悲劇を乗り越え新車導入!【ピレリスーパー耐久シリーズ2020】

■序盤から激しく順位が移り変わったST-Xクラス

2020年11月22日に栃木県ツインリンクもてぎで決勝レースが行われたピレリスーパー耐久シリーズ2020第4戦「もてぎスーパー耐久 5Hours Race」。

D'station Vantage GT3
ポールポジションのD’station Vantage GT3

開幕戦の富士24時間レース以来、久しぶりの全クラス混走となり5時間レースとして争われるこのレースは、前回の岡山戦に引き続いて終始ドライコンディションとなりました。

ポールポジションは既報通りD’station Vantage GT3が獲得。悪天候のために予選がキャンセルされたSUGOを除き、予選タイムアタックを行った全てのレースでポールポジションを獲得しています。

HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3
スターティンググリッドでのHIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3

予選2番手は前戦の岡山で大破した888号車のHIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3。クラッシュしたマシンはダメージが大きかったために廃車となり、このもてぎ戦以降の参戦が懸念される声もありましたが、わずか10日間で新車を用意しての参戦を果たしました。

メルセデスAMG GT3の新車がたまたま国内にあったとのことで、それを入手しての参戦となったわけですが、このわずか10日の間にカラーリングを施しセッティングを決めて、なおかつ予選2位となるタイムを出すまでにするという荒業をやってきたチーム力はさすがと言えます。

スタートラップの様子
スタートラップの様子

そして午前11時。決勝レースのスタートが切られます。ホールショットはD’station Vantage GT3。その後ろにピッタリとHIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3が追いかけます。

HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3
HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3

スタート直後からD’station Vantage GT3にプレッシャーをかけ続けるHIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3。その勢いに負けたのか3周目にD’station Vantage GT3はバックマーカーと接触しスピン。右フロントにダメージを負って緊急ピットインとなります。

DENSO LEXUS RC F GT3
DENSO LEXUS RC F GT3

そこでトップになったのはHIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3と思いきや実は31号車 DENSO LEXUS RC F GT3。

MP Racing GT-R
MP Racing GT-R

2番手には9号車 MP Racing GT-Rが入りますが、なぜかフロントを損傷しています。

HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3
DENSO LEXUS RC F GT3を追うHIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3

6周目にDENSO LEXUS RC F GT3を抜いてMP Racing GT-Rがトップに浮上します。しかしフロントの損傷の原因であった接触アクシデントのためにドライブスルーぺナルティとなってしまいます。

ここでなぜか3番手に順位を落としていたHIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3はDENSO LEXUS RC F GT3に猛チャージ!

8周目までにはHIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3はトップに浮上してきます。DENSO LEXUS RC F GT3はその後電気系トラブルによりタイムを落としていき、HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3は40秒ほどの差をつけた38周目に1回目のピットインとなります。

■ピットの度に変わる順位。最後は給油タイミングで勝敗が!

HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3
HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3

トップで順調に周回を重ねていたように見えたHIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3ですが、その背後に鮮やかなオレンジのマシンが迫ってきます。

DAISHIN GT3 GT-R
DAISHIN GT3 GT-R

81号車 DAISHIN GT3 GT-Rは、2週前のこのツインリンクもてぎのSUPER GT第7戦でも優勝した藤波清斗選手にドライバーチェンジするとハイペースでの周回を重ね、57周目のヘアピンでトップに浮上します。そこから徐々に差が離れていきHIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3との差は1分以上となっていきます。

HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3
HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3

しかし74周目にHIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3は根本悠生選手に交代。根本選手はヨーロッパのツーリングカーレースでは英雄ともいえるほどの実績を持つドライバーで、藤波選手のラップタイムを上回る勢いでその差を30秒ほどにまで詰めてきます。

DAISHIN GT3 GT-R
DAISHIN GT3 GT-R

ここからはピットの度に順位が移り変わる激しい展開でしたが、最後の最後、残り時間30分を切ったところで給油が必要となってしまった DAISHIN GT3 GT-R!

このDAISHIN GT3 GT-RのピットインでトップとなったHIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3は逃げ切り体制を作っていきます。

チェッカーの瞬間
チェッカーの瞬間

そして5時間後のフィニッシュ!

HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3は前戦岡山の雪辱をこのもてぎで晴らすかのような優勝となりました。2位はDAISHIN GT3 GT-R。3位はMP Racing GT-Rとなりました。

MP Racing GT-R
MP Racing GT-R

また、序盤で右フロントにダメージを負ったD’station Vantage GT3は修復後にすさまじい勢いで追い上げてきており、最終的には表彰台に一歩及ばずの4位となっています。

D'station Vantage GT3
D’station Vantage GT3

HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3はこの優勝でポイントランキングトップとなり、残り2戦となったスーパー耐久のシリーズチャンピオンへと向かっていきます。

HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3
優勝を喜ぶHIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3のドライバー

優勝記者会見では岡山戦でクラッシュし腰骨を骨折、現在は療養中の高木真一選手もテレビ電話でリモート出演し、優勝の喜びを伝えています。

ST-Xクラスの表彰式
ST-Xクラスの表彰式

次戦は九州、12月12、13日で開催される大分県のオートポリス戦となります。レース時間は次戦のオートポリスも含めて残りのレースは全て5時間となります。

厳しい寒さが予想されるオートポリス戦ではいったいどんなレースが展開されるのか?

(写真・文:松永 和浩)

この記事の著者

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松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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