日産、環境の時代&スポーツカー氷河期の中、なぜフェアレディZプロトタイプを発表したのか?

■アメリカを考えると「フェアレディZの無い日産なんてありえない」重要ポジション

●電気の日産がなぜガソリンスポーツカーを?

フェアレディZプロトタイプ
フェアレディZプロトタイプ

次期型フェアレディZが大いに話題となっている。興味深いのは電動化をすすめる日産の方向性と明らかに違うこと。日産と言えば2010年にいち早く量販電気自動車リーフを発売し、2016年からリーフのモーターを使う日産式ハイブリッドのノートをデビューさせている。今後はARIYAで電気自動車の第2波を作ろうとしているし、eパワーも年内にセカンドジェネレーションとなります。

そんな中、次期型フェアレディZは極めてプリミティブな(原始的)ガソリンエンジンだけで走るスポーツカーとしてお披露目されている。正確に言えばパワーユニットについて何も発表されていないが、フェアレディZの全てを担当する田村さんは「6速MTは絶対に必要」と言い切った。スカイラインと同じハイブリッドを組み合わせることだって可能ながら、100%エンジン車も存在するワケ。

フェアレディZ統括責任者の田村宏志さん
フェアレディZ統括責任者の田村宏志さん

今年2020年から日本とヨーロッパで厳しいCAFE(企業平均燃費)が始まることを考えたなら、完全に時代と逆行している。加えて今やフェアレディZのようなスポーツカーは、販売台数的にも伸び悩む。ポルシェですらイメージリーダーとなっている911シリーズよりカイエンやマカンといったSUVの方が圧倒的に売れているのだった。いろんな意味で100%エンジン車のスポーツカーは絶滅危惧種です。

加えて直近の日産の経営状況を見ていると余力など無いように思える。新型コロナ禍と関係の無い2019年度決算で6700億円の純損失を出し、2020年度も赤字確実。となると株主などから「スポーツカーなんかムダだ!」みたいな声が出てくるかと思いきや、むしろ応援する人も多いそうな。さらに驚くのはネット配信された動画や記事のアクセス数です。どこも凄い人気だという。

●かつてのリバイバルプランでも「Zの開発」を宣言

歴代フェアレディZとプロトタイプ
歴代フェアレディZとプロトタイプ

翻って考えてみたら日産が事実上の経営破綻をしていた2000年に、ゴーンさんはリバイバルプランと並びフェアレディZの開発を宣言した。自動車産業にとってスポーツカーという”華”が絶対に必要という判断なんだと思う。新しい日産の体制について様々な厳しい意見も出ているけれど、厳しい時にスポーツモデルを全て切り捨てた三菱自動車と鮮やかに違う判断であることは間違いない。

もう一つ。ルノーとアライアンスを組む日産にとって最も重要なのがアメリカ市場だ。日産ブランドで販売するヨーロッパ&日本のBセグとCセグ車両(コンパクトクラス~ミドルクラス)の開発担当はルノーとしてますから。アメリカ市場で利益の上がるDセグを日産が担当する。そしてアメリカは世界で唯一、燃費規制が圧倒的に緩い。フェアレディZでイメージアップ出来たらモンク無し!

ということで次期型フェアレディZは日産の再興策としてとっても重要なポジションとなっている。「フェアレディZの無い日産なんてありえない」みたいな雰囲気。その通りだと思う。かくなる上は史上最強のパフォーマンスを持つ文字通りアルファベットの最終文字である究極の『Z』を期待したい。