第4戦・もてぎ開幕直前。第3戦鈴鹿までを振り返り、GT500の戦況を占う【SUPER GT 2020】

■2020のGT500マシンは新規格のクラス1規定

コロナ禍の影響で無観客開催が続くSUPER GTの2020シリーズ。9月12~13日の第4戦もてぎで前半戦が終了し、シーズンも折り返しとなりますが、このレースをTVなどで観戦するにあたってもう一度今年開催の3戦を振り返ってみましょう。

開幕戦優勝のKeePer TOM'S GR Supra
開幕戦優勝のKeePer TOM’S GR Supra

2020年シーズンはGT500のマシンが大きく様変わりしました。これまでのSUPER GT独自のGT500規定からドイツのツーリングカーレースの最高峰であるDTMと車両規定を合わせたクラス1規定が導入されたのです。

この規定の採用とGRスープラの登場がリンクし、トヨタ勢はそれまでのレクサスからGR Supra GT500に切り替わります。7月18~19日に富士スピードウェイで開催された開幕戦はGT500の上位を全てGRスープラが独占するという快挙が巻き起こり、クラス1規定を合わせこんできたトヨタ勢の開発力が見せつけられたレースとなりました。

第2戦優勝のKEIHIN NSX-GT
第2戦優勝のKEIHIN NSX-GT

クラス1規定導入で一番大きく変わったのがホンダのGT500マシンであるNSX-GTです。クラス1規定では全てのマシンが駆動方式をFRにしなくてはならないため、NSX-GTもFRに改めての参戦です。

開幕戦に続いて富士スピードウェイで8月8~9日に開催された第2戦では予選からそのNSX-GTが速さを見せ、KEIHIN NSX-GTが優勝をつかみ取りました。しかし2位から4位まではGRスープラ勢、5位にRAYBRIG NSX-GTとなります。そして第2戦では5位までが全車ブリヂストンタイヤを履くというところも見逃せないポイントとなります。

■第3戦鈴鹿の予選ではNSXがポール、しかし決勝は?

8月22~23日に鈴鹿サーキットで行われた第3戦でポールポジションを獲得したのはModulo NSX-GTでした。予選のQ1を担当した大津弘樹選手の出したタイム1分46秒160は予選のQ1とQ2の両方を通して最速のラップタイムとなっています。

スタート直後のS字コーナー
スタート直後のS字コーナー

23日の午後に行われた決勝レースでも伊沢拓也選手がホールショットを決めるなど速さを予感させる走りがあったもののスタート周でいきなりセイフティーカー(SC)が導入される事態となります。

レース中のレスキュー活動を行うFRO車両
レース中のレスキュー活動を行うFRO車両がコースイン

ダンロップコーナーで起きたGT300マシンクラッシュのレスキュー活動のためにFRO車両も導入されます。

FRO車両
FRO車両

FROとは、ファストレスキューオペレーションの略で医師とレーシングドライバーが2人1組で乗車しコースサイドのサービスロードなどで待機、アクシデントの際にコース上を走りアクシデントの現場へ急行、アクシデントのあったドライバーの救助や容態確認を行うSUPER GT独自の安全体制。

使用される車両はエスケープゾーンの未舗装部分を走ることも考慮されハイパワーのSUVとなっています。

SUPER GT 2020のSCはGRスープラ
SUPER GT 2020のSCはGRスープラ

レースコントロールのためのSCはコースのみを走るためハイパワーなスポーツカーとなります。この第3戦鈴鹿は晴天の恵まれた天候ながら気温や路面温度が高いためにアクシデントが相次ぎ3回のSC導入となってしまいます。またSCが導入されている最中はピットインが出来ないルールとなっているため、燃料に不安を持ってしまうチームも少なからずあったようです。

2度目のSCの原因となったリアライズコーポレーション ADVAN GT-R
2度目のSCの原因となったリアライズコーポレーション ADVAN GT-R

ボンネットが吹き飛び2度目のSCの原因となったリアライズコーポレーション ADVAN GT-RもSC導入の間はピットインが出来ないために無残な姿で周回を重ねなくてはなりませんでした。

リアライズコーポレーション ADVAN GT-R
リアライズコーポレーション ADVAN GT-R

しかしSC中にピットでは修復に必要な準備を行っていたためにSC解除後のピットでの修復は早く、リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rはトップと同一周回でコースに復帰しています。

第3戦鈴鹿優勝のMOTUL AUTECH GT-R
第3戦鈴鹿優勝のMOTUL AUTECH GT-R

3回目のSCが解除されレースは34周目に再開されます。この時トップに立っていたMOTUL AUTECH GT-Rはここから一気に後続を突き放し、2番手のRAYBRIG NSX-GTとの差を50周目までに7秒051と広げます。

MOTUL AUTECH GT-R
MOTUL AUTECH GT-R優勝の瞬間

RAYBRIG NSX-GTも追い上げていきますが、最後は3秒725の差でMOTUL AUTECH GT-Rが、2018年第2戦富士以来の優勝となりました。フィニッシュドライバーだった松田次生選手にとってはGT500最多勝をさらに21勝と積み重ねています。

RAYBRIG NSX-GT
RAYBRIG NSX-GT

2位は最後の最後で一歩及ばずだったRAYBRIG NSX-GT。

au TOM'S GR Supra
3位のau TOM’S GR Supra

3位にはau TOM’S GR Supraが入り、今季3連続表彰台!優勝はしていませんが確実に大量ポイントを獲得で現在ランキングトップとなっています。

Modulo NSX-GT
Modulo NSX-GT

表彰台を逃したものの一時7位まで順位を落としたModulo NSX-GTは大津弘樹選手にドライバーチェンジしたのちに急激に速さが復活。

ペースダウンの原因がタイヤのピックアップとのことですが、タイヤがリフレッシュしたのちの快進撃は凄まじいものがありました。

au TOM'S GR Supraを追うModulo NSX-GT
au TOM’S GR Supraを追うModulo NSX-GT

3位争いまで持ち込みたいところでレースが終了してしまい4位となりましたが、GT300車両を巧みに利用しながら後続のGRスープラ勢をかわしていく様子に大津選手には大きな期待を寄せざるを得ません。

MOTUL AUTECH GT-R
MOTUL AUTECH GT-Rの優勝パルクフェルメ

富士の2連戦でいいところを魅せられなかった日産GT-R勢がやっと優勝したということで第4戦のもてぎではMOTUL AUTECH GT-R以外のウェイトハンデの少ないGT-Rの活躍が予想されます。

第3戦鈴鹿の表彰台
第3戦鈴鹿の表彰台

しかし、3メーカーそろい踏みの第3戦の表彰台の顔ぶれを見ると、第4戦もてぎはウェイトハンデ的にはGRスープラ勢はつらいかもしれませんが完成度という面では一番進んでいる印象もあります。

タイヤ的にはGRスープラ、NSX-GT勢のブリヂストン装着車とミシュラン装着のGT-Rとの戦いになるのではないかとも予想できます。

いずれにせよ第4戦もてぎでは気温や降水量などの天候が大きなカギを握って来るのではないでしょうか?

(写真:松永和浩、吉見幸夫 文:松永和浩)

この記事の著者

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松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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