■オープニングからセーフティカーの荒れ模様な展開
8月23日に鈴鹿サーキットで無観客開催となったSUPER GT 2020 第3戦「2020 AUTOBACS SUPER GT Round3 FUJIMAKI GROUP SUZUKA GT 300km RACE」。決勝レースは13時にスタートとなりました。
ポールポジションからスタートした31号車 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT、2番手の55号車 ARTA NSX GT3、3番手の56号車 リアライズ 日産自動車大学校 GT-Rとトップ3台のオーダーは変わらずS字コーナーまでをクリアしていきます。
しかしその直後、ダンロップコーナーで61号車 SUBARU BRZ R&D SPORTと30号車 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GTが接触し、30号車 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GTはコースアウトでクラッシュ!これによりオープニングラップからセーフティカー(SC)が導入されます。
5周目でSC解除となり、再スタートが切られると31号車 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GTは一気にリードを広げてきます。
しかしその後ろは大きく変化。なんと5番手スタートで75kgのウェイトハンデを積む52号車 埼玉トヨペットGB GR Supra GTがARTA NSX GT3やリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rと2位争いをしているのです。
そのバトルに水を差すかの如くのGT500換算での17周目、バックストレートにGT500マシンのボンネットが外れて落ちているということにより2度目のSCが導入されます。
23周目にSCが解除となるとその周もしくは翌周に各車一斉にピットイン。タイヤ交換とドライバーチェンジが行われます。このピットインで大幅にタイムロスをしてしまった31号車 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GTはトップ争いから離脱を余儀なくされます。
ピットインをもう少し後に引っ張るチームなど、駆け引きの目立つ周回数となっていた27周目、21号車 Hitotsuyama Audi R8 LMSと244号車 たかのこの湯 RC F GT3が2コーナー立ち上がりで接触してしまい、21号車はコースアウトでストップ。なんと3度目のSCが導入されます。
33周目にSC解除となるとピットインを遅らせてきたチームもピットインし、全マシンがピットインを終わらせたときにトップに立っていたのはピット作業がとてつもなく速く、その上アウトラップとは思えない走りを見せた平中克幸選手の11号車 GAINER TANAX GT-R。
■本当の魔物はラストバトルで顔を出す
これまでSCが3回も入る荒れた展開となっていましたが、これはまだ序章に過ぎなかったと言えるほどの展開を見せてきたのがレース後半。
全車ピットインの後、トップはGAINER TANAX GT-R、2番手にリアライズ 日産自動車大学校 GT-R、3番手にARTA NSX GT3と続き、少し離れて18号車 UPGARAGE NSX GT3、SUBARU BRZ R&D SPORTとなっていきます。
その後、上位3台の順位は変わらないながらもラスト6周目あたりでGAINER TANAX GT-Rとリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rとの差が広がり始め、リアライズ 日産自動車大学校 GT-RはARTA NSX GT3に追いつかれてしまいます。というよりもタイヤの摩耗のためかリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rのペースが極端に下がって後続車が追いついてきたという状況で、ARTA NSX GT3の背後にはUPGARAGE NSX GT3も迫ります。
そしてラスト4周目のデグナーカーブでリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rが減速した瞬間にARTA NSX GT3が背後から押すように接触。2台はそのままコースアウトしながらもすぐにコースに復帰。その際にARTA NSX GT3のボンネットがめくれあがってしまいます。
結局、この2台の接触の隙を突いたUPGARAGE NSX GT3は2位に浮上し、ARTA NSX GT3が3位、リアライズ 日産自動車大学校 GT-Rが4位となりますが、ARTA NSX GT3はラジエターなども破損しオーバーヒート、次の周のS字コーナーで戦線を離脱してしまいます。
そこで3位となったリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rですが、すぐ後ろからSUBARU BRZ R&D SPORT、65号車 LEON PYRAMID AMG、そして予選11位から淡々と上がってきた2号車 シンティアム・アップル・ロータスが追いついてきます。
ラスト3周、タイヤの摩耗したリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rに対してコーナーで何度も並びかけるSUBARU BRZ R&D SPORTですが、パワーに勝るGT-Rにはストレートで前に出られてしまいます。そんな攻防を繰り返しているとLEONもロータスも追いつき、完全なトレイン状態。
そしてラスト2周の逆バンクで、リアライズ 日産自動車大学校 GT-RとSUBARU BRZ R&D SPORTをまとめてインから仕掛けようとした LEON PYRAMID AMGがイン巻きしてしまい、スポンジバリアに刺さってクラッシュ! スポンジバリアがコース上にはみ出しながらもGT500ではファイナルラップとなっているためにSCは出ません。
その後もSUBARU BRZ R&D SPORTはリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rを執拗に追い回しますが、近づいてきたシンティアム・アップル・ロータスに加えて10号車 TANAX ITOCHU ENEX with IMPUL GT-Rも加わっての3位争いとなります。
そしてスプーンカーブで一瞬空いたイン側にすかさず頭をねじ込んだシンティアム・アップル・ロータスが2台を抜き去り、3位に浮上!前戦からウェイトハンデとBOPで90kgも重くなっている状態とは思えない身のこなしに驚愕です!
またSUBARU BRZ R&D SPORTはリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rを抜き4位に浮上。そのリアライズ 日産自動車大学校 GT-RはファイナルラップのNISSINブレーキヘアピンで抜きにかかったTANAX ITOCHU ENEX with IMPUL GT-Rをブロックするも接触してしまいコースアウト!
今年のSUPER GTにはスポーツランドSUGO戦が無いためにSUGOの魔物が鈴鹿まで遠征してきたのか?というほどに荒れたレースとなりました。
そして優勝はラスト5周を悠々の独走となったGAINER TANAX GT-Rとなり、GT300とGT500を日産GT-Rがともに優勝するという結果となりました。
GAINER TANAX GT-Rはこれでランキングトップに浮上します。
2位にはUPGARAGE NSX GT3、3位にはシンティアム・アップル・ロータスが入ります。シンティアム・アップル・ロータスはこの3位表彰台によりランキング2位となりました。
次の第4戦は9月12~13日のツインリンクもてぎとなります。とりあえず第4戦までは無観客開催となりますが、パブリックビューイングやJ Sportの配信などでレースを観戦することが出来ます。
今年のGT300は3レースまで全て、優勝のタイヤメーカーとマシンメーカーが違い混迷を極めています。次戦もどんなレースが展開するのか興味が尽きません。
(写真:吉見幸夫 文:松永和浩)