外観は普通でも中は快適! 車体が標準サイズのワンボックス系キャンピングカーが売れる理由とは?

■通勤や買い物からキャンプまで用途が幅広い

一般的にキャンピングカーというと、ベッドやソファ、テーブルやキッチンなどが装備された車体のキャビン部が大きく、背が高いクルマをイメージする人も多いと思います。

でも実は、いま最も人気があるのは、例えばハイエースなどがベース車の場合、見た目は普通のワンボックスカーで、ノーマルと同じ4ナンバー車のボディサイズを維持しているタイプです。

せっかくキャンピングカーを購入するのに、なぜ一見「普通」のワンボックスカー・タイプに人気が集まるのでしょう? 7月18日方19日に開催された「さいたまキャンピングカー商談会(埼玉県・しらこばと水上公園)」で、その理由を調べてきました。

●キャンピングカー出荷台数は8ナンバー以外が多数

キャピングカーの業界団体「日本RV協会」が発表した「キャンピングカー白書2020」によると、2019年に同協会会員のキャンピングカー製造メーカーが生産したキャンピングカーの出荷台数は合計6445台。

その内訳は、1位8ナンバー以外(2400台)、2位バンコン(2069台)、3位キャブコン(1819台)、4位バスコン(85台)、5位キャンピングトレーラー(46台)、6位そのほか(26台)となっています。

8ナンバー以外のキャンピングカーとは、たとえばワンボックスカーをベースに、ボディサイズは純正のままで乗車シートの配列なども大きく変更していないタイプ。車内には取り外し可能なベッドなど、車中泊に最低限必要な装備を施しているものなどがあります。これは車体構造手を入れないていどの変更なので構造変更届は不要。したがって8ナンバーになりません。

また、バンコンは、ワンボックスやSUVなどのベース車のボディを活かしつつ、車内に就寝スペースやソファなど、キャンプや車中泊に便利な装備を備えたタイプ。登録は8ナンバーになりますが、ボディサイズはベース車と同じものや、ルーフや車体サイドを広げて車体サイズも変更したものなど、様々な仕様があります。

車体が標準サイズのワンボックス系キャンピングカー
バンコンにもルーフやボディなど、車体に手を加えたタイプもある

これらのデータからも分かる通り、今トレンドだといえるのは、一見するとほぼノーマルと変わらないキャンピングカーなのです。

トラックやワンボックスカーなど、ベース車の運転席以外のボディをキャビン部に変えたキャブコンや、バスをベースにしたバスコン、クルマでキャビン部を牽引するキャンピングトレーラーなど、一般的にこれぞ「キャンピングカー」といえるタイプより、大きな人気を集めているのです。

車体が標準サイズのワンボックス系キャンピングカー
キャブコンは、車体の大部分にキャビン部を架装したタイプ

●普段使いができるのが魅力

では、なぜこういったタイプが人気なのでしょう? バスコンから軽キャンパーまで、様々なタイプのキャンピングカーを製造販売するRVビッグフットに聞いてみました。

「ワンボックスタイプは、小さい子供がいる家族に人気が高いですね。特に純正ボディサイズのままの仕様なら、通勤や仕事用のクルマとしても使えるうえに、奥さんが買い物などに使う場合にも、普通に乗れるため人気です」。

実際、同社が今回展示したハイエース・ベースの「スィングN4.7」でも、外観はほぼノーマルです。

車体が標準サイズのワンボックス系キャンピングカー
ハイエース・ベースの「スィングN4.7」

ところが、ドアを開けてみると、ホワイトレザーの清潔感溢れるソファやテーブル、冷蔵庫やキッチンなど、快適なキャンプを楽しめる装備が満載になっています。

また、ソファは、大人2人が就寝できるベッドになるほか、車内後方にオプションのチャイルドベッドを装備すれば、小さい子供2人までの就寝も可能。4人家族での旅や車中泊には最適な仕様になってます。

ハイエース・ベースの「スィングN4.7」
車内は快適なリビングに

●新規参入が増え差別化が課題

キャンピングカー・ブランド「ラクネル」を手掛けるメティオでも、今回ブースにハイエースの標準ボディをベースにしたキャンピングカー「ラクネル・バンツアー」を展示しています。

こちらは、元々は軽キャンパーなどをメインに展開するコーチビルダー(製造メーカー)なのですが、最近のトレンドを取り入れたニューモデルとして、このクルマを発表しています。

ハイエース・ベースの「スィングN4.7」
メティオの「ラクネル・バンツアー」

バンツアーの外観も、ほぼノーマルのままです。同社の代表によると、

「今、キャンピングカーの中で販売台数が圧倒的に多いのがこのジャンルなので、新な試みとして製作し、展示しました。弊社もそうですが、こういった標準ボディのモデルを出すビルダーは今後さらに増えてくるでしょう。これからは製作するクルマに個性や差別化などが求められてきますね」。

このモデルの特徴は、純正シートを取り払い、様々なアレンジが可能なREVO製シートを装備している点です。

高級感満点のこのシートは、走行中は乗車定員全員が前向き乗車にできたり、旅先でリラックスしたいときは対面式に変更が可能。また、就寝時には大人2名がゆったりと横になれるフラットベッドにもなります。

「ラクネル・バンツアー」
多彩なアレンジができるREVO製シートを採用

さらに、車内後部にはマルチルームも用意されていて、電子レンジやポータブルトイレ、キッチンなど、オーナーが好きな装備を設定することができます。

これは、あえてオーナー個々の要望に応えられるスペースを確保することで、多様化する様々なニーズに対応する試みだといえます。

「ラクネル・バンツアー」
バンツアーのマルチスペース

こういった、一見「普通のワンボックスカー」タイプのキャンピングカーは、ほかにも価格が500万円台から購入できるものがあるなど、大幅なカスタマイズを施すタイプに比べ比較的安価に購入できるというメリットもあります。

また、駐車場も特別に広いスペースが必要ではなく、ワンボックスカー対応であればショッピングセンターなどの立体駐車場にも入るなど、普段の使い勝手がとてもいいのも魅力です。

キャンピングカーに興味はあるけれど、車体の大きさや駐車スペースなどで悩んでいる方は、ちょっと注目してみてはいかがでしょうか。

(文/写真:平塚直樹)

この記事の著者

平塚 直樹 近影

平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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