奴田原文雄選手とトミーカイラZZ、パイクスピーク参戦を断念

■新型コロナ感染拡大の影響を鑑み、参戦は次年へ繰り越し

先日国内でのシェイクダウンの様子をお伝えした電気自動車GLMトミーカイラZZと、日本のトップラリーストである奴田原文雄選手の2020年第98回パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムへの挑戦ですが、7月15日、その参戦を見送ることが発表されました。

#230 2020年式 GLM Tommy Kaira ZZ
第98回パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムへ向けてカラーリングも施され参戦を待つだけとなったGLMトミーカイラZZ

パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(通称:パイクスピーク)は、アメリカ・コロラド州のロッキー山脈にあるパイクスピークマウンテン(標高4302m)の頂上まで、全長約20km、標高差約1500mのワインディンロードをいかに速く駆けあがるかを競うイベント。その初開催は1916年と、世界で2番目に長い歴史もあります。

#230 2020年式 GLM Tommy Kaira ZZ
シェイクダウンに引き続き、国内で2度目のサーキット走行を披露

今年のパイクスピークの開催は、当初6月28日が決勝日というスケジュールが組まれていましたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で決勝日は8月30日(日)に変更され、無観客での開催となっています。

#230 2020年式 GLM Tommy Kaira ZZ
チームは継続してマシンの走行テストを重ね、熟成を図るとしている

このパイクスピークに参戦を続けている奴田原文雄選手は、全日本ラリー選手権通算9回タイトルを獲得し、2006年にはアジア人で初めてモンテカルロラリーで優勝するなど活躍をしているラリードライバー。2012年のパイクスピークではEVクラス優勝も経験しています。

#230 2020年式 GLM Tommy Kaira ZZ
ボディ外装カウルやミラーボディなど各所には大王製紙のセルロースナノファイバーが使用され車両軽量化にも貢献しているという

この奴田原選手を擁してパイクスピークに挑戦を続けているチームSAMURAI SPEEDが、今回の2020年大会への挑戦のために用意したのが、GLMのトミーカイラZZ(#230 2020年式 GLM Tommy Kaira ZZ )です。

GLMトミーカイラZZは、2014年に発売された国産EVスポーツカーで、サイズは全長3870×全幅1740×全高1140mm、車両重量は850㎏となっています。今回パイクスピーク参戦に向け、助手席部分をつぶして市販モデルの2倍となる36kWhのバッテリーを搭載し、ボディ前後には大型のエアロデバイスを装着しています。

#230 2020年式 GLM Tommy Kaira ZZ
筑波サーキットに設置された充電器を使用しているGLMトミーカイラZZ

すでに車両はスポンサーロゴも入ったカラーリングも終え、あとは決勝に向けて車両の搬送を待つのみという状態になっていましたが、新型コロナウイルス感染者が増加する北米への遠征ということで「ドライバー、パートナーシップ企業各社、スタッフを含む関係者の健康安全を確保することが非常に困難である」という判断の下、チームとして2020年大会への参戦を見送ることにしました。

奴田原文雄選手
過去2年は日産リーフで参戦の奴田原選手。今回のGLMトミーカイラZZでの参戦に期待を寄せていましたが…

奴田原文雄選手は、

「電気自動車での参戦は2012年を含めると4回目となる今年は、昨年と比較して格段に戦闘力の高いマシンでの参戦となるためドライバーとして好成績を期待していました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない状況下では「感染しない・させない」を最優先に考え、チームがこの状況下で渡米することは健康安全上非常にリスクが高いと判断し参戦の見送りを決断したことに賛同しました。
多くのパートナーシップ企業の皆様、関係スタッフ達のご尽力に感謝するとともに、より好成績を掴み取るための準備期間ができたとポジティブに捉えて開発活動に力を注いでいこうと考えています。ファンの皆様にも引き続きの私たちの活動を見守っていただき、いっそうのご声援をお願いいたします」

とコメントしています。

パイクスピークへの参戦はなくなりましたが、チームは、他の国際ヒルクライムイベントへの参戦も探っており、さらにこの時間を使ってマシンのさらなる熟成を進め、2021年6月開催予定の第99回PPIHCへの参戦準備も進めていくとしています。

この記事の著者

青山 義明 近影

青山 義明

編集プロダクションを渡り歩くうちに、なんとなく身に着けたスキルで、4輪2輪関係なく写真を撮ったり原稿書いたり、たまに編集作業をしたりしてこの業界の片隅で生きてます。現在は愛知と神奈川の2拠点をベースに、ローカルレースや障がい者モータースポーツを中心に取材活動中。
日本モータースポーツ記者会所属。
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