■前席間に設置・展開されるセンターエアバッグのテストも
アメリカの運輸省道路交通安全局(NHTSA)、道路安全保険協会(IIHS)、欧州のユーロNCAP(ヨーロッパ新車アセスメントプログラム)、日本のJ-NCAPなど、クルマの安全評価である自動車アセスメントは、国や地域によって年々評価内容を変えています。
衝突安全性能だけでなく、衝突被害軽減ブレーキなどの予防安全性能、自動運転といった分野も国連による国際基準が基本としてありますが、各国や地域の交通事情や実状に応じて自動車アセスメントのテスト内容が吟味されています。
その中のユーロNCAPは2年ごとに試験内容が更新されていて、2020年は衝突後の乗員保護の改善と最新の先進運転支援技術導入を促すため、新しいテストが導入されました。
主な変更点は、ユーロNCAPが過去23年間に渡って採用してきた中程度のオフセット前面衝突試験から、新たに移動車による前面衝突試験が実施された点。
50km/h同士で衝突するこの新しい衝突試験は、車内の乗員保護が評価されるのはもちろん、自車のフロントエンドが衝突相手の負傷にどのように影響を及ぼしたのかも評価されます。重要な技術革新として、移動式で変形するバリアや独自の車両適合性評価方法のほか、中型サイズの男性衝突試験用ダミー「THOR」が初採用したことなども挙げられます。
また、欧州で死傷者や重傷者の発生頻度が2番目に高いのが側面衝突だそうです。最新の安全評価では、ニアサイドバリアテスト(近いサイド)の速度と重量(質量)が含まれていて、より厳しいテストになっています。
さらに、ドライバーと助手席のパッセンジャーを対象に初めてファーサイド衝撃保護も評価。これは、シートから遠い側面のテスト。前席の乗員2名が衝突時に及ぼす影響を試験するもので、前席乗員間に設置されるセンターエアバッグなどの新製品の保護性能を検証することが可能になっています。
ほかにも、衝突防止を目的とした最先端の運転支援システムのテストも用意されています。後退時や交差点における旋回時(右左折時)などでの衝突被害軽減ブレーキの新たな試験を追加。ドライバーの疲労などによる注意力散漫を検知するために設計された「ドライバーモニタリングシステム」を先進予防安全装備の評価の一環として、最初のステップが設けられています。
事故後の安全性も乗員の生存に不可欠な役割を果たしています。ユーロNCAPでは、国際消防救助協会(CTIF)とのパートナーシップにより、衝突後の安全性向上を図るための、新しい評価ルールを開発したそう。脱出の容易さや、電動開閉式ドアハンドルなどがチェックされます。
ユーロNCAPによる動画(英語)も公開されていますので、最新の自動車アセスメントに関する考え方が確認できます。
(塚田勝弘)