●カタログモデルにはない、排気量2000㏄のエンジンがポイント
攻めてるなあ、トヨタ。13日に発表されたカローラツーリングの特別仕様車を見てそんなことを思いました。
「2000Limited」と名付けられたその特別仕様車の内容は、ステーションワゴンボディの「カローラツーリング」をベースに充実した装備が特徴。
エクステリアに切削光輝+ブラック塗装の17インチアルミホイールやシルバーのルーフレールを、インテリアにはスポーツシートなどをコーディネート。またシートヒーター、ステアリングヒーター、9インチのディスプレイオーディオ、ヘッドアップディスプレイ、そして「立体的に見える」専用オプティトロンメーターなどが装備されます。
撥水処理を施した上級ファブリックを表皮に張ったシートは、形状そのものが一般的なカローラ用とは違います。
3タイプあるTNGA用シートのなかで「スポーツシート」と呼ばれるもので、もっともサイドサポートが硬くて大きく張り出しているから姿勢保持性が高いのがいいんですよね。カローラのセダンやワゴンには初採用ですが、ハッチバックの「カローラスポーツ」には設定されているもの。
座ってみると単にホールド性が高いだけでなく、背中が包み込まれるようなフィット感の高さもいい感じです。
しかし、ハイライトはなんといってもエンジン。
この特別仕様車には、通常のカローラには存在しないエンジンが載っています。カローラの通常モデルに用意されるエンジンは1.2Lターボもしくは1.8Lの自然吸気。ところがこのカローラには2.0Lの自然吸気エンジンが積んでいるんです(トランスミッションはCVT)。
最高出力&最大トルクとその発生回転数と見ると、
1.2Lターボ:最高出力116ps(5200-5600回転)/最大トルク185Nm(1500-4000回転)
1.8L自然吸気:最高出力140ps(6200回転)/最大トルク170Nm(3900回転)
2.0L自然吸気:最高出力170ps(6600回転)/最大トルク202Nm(4800回転)
パワーとトルクがアップしているだけでなく、見逃せないのはピークが高回転寄りになっていること。エンジンの味を楽しむような運転好きにとっては、単にパワーやトルクが増したというだけでなくフィーリング面の変化も気になるところですね。
ボクが「攻めてるなあ」と思った理由は、この「カタログモデルにはないエンジン」を積んでいること。もちろん、エンジンとしては新開発ではなくこれまでも存在し、海外向けカローラに積んでいたりもします。
でも、こうして本来の日本仕様にはないのに特別仕様車として発売されたということは、(現時点では)日本でわずか500台のために国交省へ届け出るための複雑な書類を大量に作り、型式認定を1.2Lや1.8Lモデルとは別に取得しているということですからね。なんと手間がかかった特別仕様車なのでしょうか。
あのトヨタが「たった500台」のためにそれをやっしまう。しかもスポーツモデルとかじゃなくて、多くのユーザーはエンジン排気量の200㏄アップに歓喜しないであろうカローラで、わざわざ型式をとって特別仕様車として販売する。トヨタはなんということを(笑)
カローラだからピンとこない人もいるかもしれませんが、たとえばトヨタ「86」に500台限定で排気量アップで2割パワーアップのモデルが追加されたら、マツダ「ロードスター」のソフトトップ車に国内未導入だった2.0Lエンジンが500台限定で追加されたと考えたらけっこうな話題となることでしょう。
それをサラッと(じゃないかもしれないけど)カローラでやってしまうんだから、トヨタは攻めてるというわけです。このカローラの特別仕様車は一般的ユーザーの反応は微妙かもしれませんが、実は世の中に少なくないと言われている「カローラマニア」には相当ウケるでしょうね。
ところで、もうひとつ注目したいのが燃費。
2.0Lエンジンを積んだ「2000Limited」のWLTCモード燃費はトータル16.0km/Lです。いっぽう、1.8Lエンジン車は14.6km/L。1.2Lターボ車は15.8km/L。
つまり、1.8Lエンジンよりも2.0Lエンジンのほうが燃費が良いのです。このくらいの車両重量だと、2.0Lエンジンのほうが効率的にもベストバランスということなのかもしれません。
そして蛇足。型式を取得しているということは、今後も2.0Lエンジン搭載車が展開される可能性もあるということです。たとえば「GRスポーツ」とか……。
(工藤貴宏)