■新型コロナウイルス治療に携わる医療従事者の通勤をサポート
2014年に設立された一般財団法人のトヨタ・モビリティ基金(Toyota Mobility Foundation)をご存じでしょうか。「より移動のしやすい社会を創造」という理念を掲げ、過疎化により公共交通の縮小や、高齢化によって発生した移動課題の解決のための新たな仕組みづくりを行うプロジェクトをはじめ、多様な活動を行っています。
こうした交通手段の課題解決、渋滞対策などの実証実験、グローバルパートナーとの交流など、その活動範囲は日本を飛び出し、世界に広がっています。
トヨタ・モビリティ基金は、タイやベトナム、インド、ブラジルでの交通手段の多様化を目指しているほか、日本の中山間地域における移動の不自由を解消するプロジェクトへの助成も行っています。
さらに、障害者向けの補装具開発を支援するアイデアコンテストの実施、水素研究の助成、人工知能による交通流最適化の共同研究など、世界のモビリティ分野における課題に取り組んでいます。
トヨタは、日本において新型コロナウイルスと最前線で奮闘する医療従事者など向けて感染者の搬送車両の提供などを行っています。
海外では、トヨタ・モビリティ基金がバンコクの病院と連携し、医療従事者向けのオンデマンド型の送迎サービスを行うと3月31日に発表済みです。期間は4月中旬から3か月間の予定。使われている車両には、海外向けの新型ハイエースも並んでいるようです。
●フィリピンでも医療従事者向けのオンデマンド式シャトルバスをスタート
さらに、このオンデマンド型の送迎サービスをバンコクに続き、5月8日からフィリピンのマニラで開始するとアナウンスしました。フィリピンでのプロジェクトは、現地のトヨタ生産工場、トヨタとダイハツの新興国小型車カンパニーの協力によるもの。
日本では医療従事者を対象に車両提供を行うガリバーなどのサービスが多いようですが、こちらは、衛生的なシャトルバス10台をオンデマンドで運行するサービス。その目的は、感染予防だけでなく、通勤の負荷軽減もあるそうです。
オンデマンド式なので、医療従事者(利用者)が通勤する際にスマホ・アプリから乗降場所と乗車時間を指定すると、シャトルバス内の座席を予約できるシステム。さらに、乗降場所も通勤者の自宅近くを指定できるため、通勤の負担を軽減。
このシャトルバスは、複数の利用者からの要望を踏まえた最適なルートを選定して運行されるそうです。さらに、車内に空気清浄機が設置されていて、シートカバーの定期的な交換、頻繁な清掃やアルコール除菌などの衛生管理が行われ、車両の乗客数を制限するなどのガイドラインに従って運行されているとのこと。
日本でもオンデマンド式のシャトルバスは「MaaS」の実証実験として各地で行われています。その背景には、日本では、規制もあり実証実験という形を取る必要があるのが実状でしょう。
また、日本でビジネスにするには、コスト、維持費などの課題もあります。新型コロナウイルス対策だけでなく、日本でもオンデマンド式のシャトルバスなどが普及すれば、過疎地などでの「ラストワンマイル」などの課題解決の一助にもなりそうです。
(塚田勝弘)