■キャンピングカーのノウハウを活かした遠隔医療車両
トヨタやホンダなど、自動車メーカーによる新型コロナウィルス感染者移送車両の提供をはじめ、ガリバーが発表した移動用車両の貸出など、クルマ関連の多様なサービスが開始されています。
大手キャンピングカー・ビルダーのトイファクトリー(関連会社のトイファクトリーインターナショナル)は、医療機関施設の内外で診療ができる遠隔医療車の発表をしました。
新型コロナウイルス感染者数が増大している中、医療現場では医療従事者に対する二次感染の危険性や、医療崩壊のおそれがあり、非常に逼迫した状態という報道が繰り返されています。
先日行われた、政府の未来投資会議で、対面診療と遠隔診療が組み合わされた“新しい医療”を来年度の診療報酬改定で評価する方針を示しました。こうした国の方針により、トイファクトリーインターナショナルでは、病院施設内外で使用できる遠隔医療車の開発したそうです。
●東日本大震災で避難生活を経験した顧客からの声がヒントに
同社が医療向け車両を開発するきっかけとなったのは、東日本大震災の際に避難生活を経験した顧客から「プライバシーが確保できるキャンピングカーが役立った」という声が数多く寄せられたからだそう。
こうした背景もあり、同社の技術やものづくりの知見を活用することができないかと考え、その答えの一つが医療回診車だったそう。
国内の法規的な障壁もあり、まずは国際赤十字の協力のもと東アフリカエリアで実証実験を行いました。その後、アジア圏向けの医療回診車の製造・輸出の実績と経験を経て、新型コロナウイルス感染者に対応できる車両の製造に着手しています。
ベース車両は、キャンピングカーでもポピュラーなバンコンのベース車であるトヨタ・ハイエース・スーパーハイルーフ。受診者用単座シートと、通信用モニターが2つされていて、緊急時にも使用できる電源バッテリーを搭載。
さらに、エンジン停止状態で使用可能なエアコンが装備され、手洗いシンク、冷蔵庫、水洗トイレを装備するなど、キャンピングカーのノウハウが盛り込まれています。車両壁面は、清掃しやすい特殊プラスチック素材が使われているほか、緊急用担架、ウイルス除去用プラズマクラスターが搭載されています。安心して受診できるウッド家具になっているのも特徴です。
遠隔医療車の広い車内空間に専用機材の積み込みが可能で、場所を選ぶことなく医師が遠隔診察できます。現在の日本では、法的に医療機関施設外での診察が厳しいそうですが、先述の新しい医療の試みで医療施設内(例えば病院の駐車場など)にて隔離診療所として設置を行えば、それらの問題もクリアされるそう。
同車内では遠隔医療が可能になるほかにも、各素材は抗菌仕様になっていて洗浄もできます。薬品やワクチンを保管する温度調節が容易な冷蔵庫も用意。医療施設内に遠隔医療車の特別配備を行い、モニターを通した遠隔医療体制を整えることもできるそう。
今後の規制緩和に向けて、災害時の移動医機関のほか、過疎地医療対応など、各医療現場の要望に合わせた展開も予定しているとのこと。
過疎地での医療対応などにはもちろん、医療従事者なども不可欠ですが、病院というインフラに限界がある中、キャンピングカー・ビルダーならではのこうした試みも増えそうです。
(塚田勝弘)