それぞれのキャラクターが明確な室内。その違いは?【インプレッサSPORT&MAZDA3比較(インテリア・シート・荷室編)】

●実用的なインプレッサ、デザイン優先のマツダ3

スタイリッシュなエクステリアだが、荷室の使い勝手もはしっかり確保されているインプレッサSPORT
スポーティで流麗なクーペルックのMAZDA3。

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■インプレッサのセンターモニターは使い勝手が微妙。MAZDA3はナビの動作速度の改善を望む
■機能的に見えるインプレッサの前席シート。しかし実際に乗ってみると、マツダ3のほうが上!
■後席シートの居住性はインプレッサの圧勝。MAZDA3の後席シートは割り切るしかない
■後席シートバックを倒した際の広さはフィットの圧勝。高さ方向の空間が非常に広い

■インプレッサのセンターモニターは使い勝手が微妙。MAZDA3はナビの動作速度の改善を望む

インプレッサのインテリアの特徴のひとつが、2つに分かれたセンターディスプレイです。上段にある6.3インチのマルチファンクションディスプレイには、先進安全技術の作動状況や燃費など、車両の様々な情報が表示されます。

下段の8インチナビモニターではナビやオーディオなどの情報が表示されます。合わせて、ディスプレイ付メーターにも情報が表示できるのですが、3か所もディスプレイがあると、流石に煩わしさを感じます。

インプレッサSPORTは乗り込んだ瞬間に広いと感じた。
サブモニターの位置が遠い。メーターやナビとの段差が大きくて視点が定まりにくい。

インプレッサに限らず、こうしたメーターやスイッチ類を多く配置した飛行機のコクピットの様な雰囲気を醸し出していることは、スバル車でよく見られる「持ち味」なのですが、3つのディスプレイ面の奥行がそれぞれ異なるので、視線を移そうにも瞬時に焦点を合わせることが難しいのです(※老眼のせいではないはず)。

できることならVWゴルフのように、メーターとセンターのディスプレイの段差をなくした方が、カッコ悪いかもしれませんが、ドライバーの目には、はるかに優しくなります。

対照的にMAZDA3のメーターはシンプルな表示です。横長の8.8インチセンターディスプレイは、センターコンソールの最上段に位置しており、運転中の視界移動が、最小限で済むように設定されています。表示情報も極力シンプルで、ドライバーに余計な意識を向けないよう、しっかりと配慮できている印象です。

オプションのアクティブドライビングディスプレイ(ヘッドアップディスプレイ)も安全な情報確認をサポートしてくれます。

太目のAピラーや潜り込むように座るドライビングポジションなど、狭い印象。
高い位置にあるナビモニターは視界移動少なくGOOD.

一点、気になるのはセンターコンソールにあるダイヤルの操作性が悪いこと。ナビ画面でスクロールしたいときなどの動作が重く、またナビ画面が遠くて小さく見えるため、操作が難しく感じます。動作スピードが上がってサクサク動くようになれば、ストレスは大いに解消されるように感じます。

■機能的に見えるインプレッサの前席シート。しかし実際に乗ってみると、マツダ3のほうが上!

インプレッサの前席シートは、サイドサポートや尻下、肩周りのクッションにボリュームがあり、サポート性に優れます。ややゆったりとしたサイズで作られていますので、小柄な方には少々広く感じると思いますが、体重がかかっていくと沈みこむため、身体になじみやすい特徴があります。

おおらかな印象のフロントシート。運転席と助手席の間が近い。

しかし、MAZDA3の前席シートのほうが、出来がいいと感じます。インプレッサよりも見た目はシンプルに見えますが、尻がクッション座面にスポっと落ち込むような印象を受け、脇や肩の左右方向のホールドは緩めですが、腰周りが安定するのでシート上での身体の動きが安定します。

マツダが提唱する「骨盤を立てるシート」形状がしっかりと効いているように感じます。身体を窮屈にホールドせずともポイントをおさえることで、人間の動きが安定するシートの良い見本です。

骨盤を立てるコンセプトのシートはたしかに良い。

■後席シートの居住性はインプレッサの圧勝。MAZDA3の後席シートは割り切るしかない

インプレッサの後席は居心地が非常に良いです。前席との間だけでなく左右方向にも広く、また、左右のガラス窓が大きいことによる採光の良さもあって、開放感がバツグンにあります。

前席と同じくクッションも厚みがあるので座り心地も良く、Cセグメントワゴンとしてはトップクラスの快適さといえます。強いていえば、後席にも携帯電話充電用のUSB口が欲しかったことくらいでしょう。

インプレッサSPORTの広い後席。明るく使い勝手も良い。

MAZDA3の後席は、割り切って受け止める必要があります。後席への入り口が頭をぶつけるほどに狭く乗り込みにくい、中に入り込むと前席と詰まっており窮屈に感じる、サイドウィンドウが狭くまた頭の横にCピラーが来るため暗い、前席シートが多き目で前が見えにくいなど、ネガティブなポイントがいくつもあります。

もちろん、その点は承知の上でこのデザインが採用されているわけですから、ユーザー側も受け入れる必要があります。

写真でも分かる通り暗い。サイドウィンドウの上下幅が狭く、また、着座位置が低い。

■荷室エリアも実用的なインプレッサ、デザイン優先のマツダ3

荷室エリアの幅や奥行、そして高さなどを実測した結果は以下の通り。

インプレッサSPORT MAZDA3 (参考)GOLF7
VDA方式 385 L 334 L 380 L
地面から荷室までの高さ 670 mm 750 mm 680 mm
荷室入口の最大幅 1030 mm 1000 mm 1000 mm
荷室の最大幅 1350 mm 1090 mm 1050 mm
荷室の奥行 800 mm 750 mm 730 mm
荷室入口の高さ 720 mm 730 mm 750 mm
後席シートバックを倒した奥行 1680 mm 1600 mm 1550 mm

インプレッサSPORTのVDA方式のカーゴエリア容量は385L。MAZDA3の334Lと比べると10%以上も広く作られています。

地面からの荷室高が670mmと低く、荷室入口の幅も1030mmと広めであることもポイントです。後輪のタイヤハウス後ろ側にあるスペースを有効活用しており、荷室の最大幅も1350mmと広く確保できています。このあたりは、VWゴルフよりも優れています。

風呂い荷室のインプレッサSPORT。タイヤ周りのスペースも有効活用できている。
荷室下のスペースはさほどない。

対するMAZDA3は、地面からの荷室高は750mmと、競合車の中でも高く、使い勝手としては、あまりよくありません。

また、タイヤハウス後ろ側のスペースも、有効活用はできていません。この形状は、CX-30でも見られます。おそらくタイヤハウス後ろエリアの内部は空洞のはず。デコボコした荷室スペースを隠すための化粧板かもしれませんが、非常にもったいない部分です。

MAZDA3の荷室は、寝そべったリアウィンドウの影響で狭い。リアタイヤ周辺は、もっとスペースとして使えるはず。
荷室下のスペースも狭い。

この2台の荷室の奥行きは、50mm(後席を倒すと最大80mm)の差がありますが、その数値以上に、インプレッサSPORTの方が広く見えます。これは、荷室入口の広さと床面のフラットさ、そして無駄なく荷室スペースを活用できていることが要因です。

■まとめ

シートの快適性や荷室の使い勝手など、全体を比較してインプレッサSPORTの良さが際立っています。また、荷室効率が優れていることで有名なVWゴルフに対しても全く引けを取らないインプレッサSPORTの優れたパッケージングが明確になりました。

MAZDA3の後席や荷室は見た目通り、我慢を強いられることになります。しかし、そうしてでも手に入れたかった見事なリアスタイルは、MAZDA3を手に入れる最大の理由として納得がいきます。

(文:自動車ジャーナリスト 吉川賢一/写真:エムスリープロダクション 鈴木祐子)

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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