走りにこだわる国産ハッチバック・ワゴン対決!【インプレッサSPORT&MAZDA3比較(車両概要とエンジン)】

●インプレッサSPORTとMAZDA3。国産270万円級対決を制するのはどちらだ?

現行インプレッサSPORTがデビューしたのは2016年10月。走行性能とコストパフォーマンスのよさが高く評価され、その年のカーオブザイヤー・カーを受賞したクルマです。現在販売されているモデルは、2019年11月に大幅改良を受けたモデルで、フロントフェイスやアルミホイールなどが新デザインに変更されたモデルです。

一方のマツダ3は、2019年5月に発売開始。特徴的なデザインを持ち、デザインファストバックとセダンの2タイプを用意。2020年4月には2020ワールドカーデザインオブザイヤーを受賞、ポルシェタイカンを僅差で抑え、最もデザイン性に優れた1台に輝きました。デザインに加えて走行性能も評価が高く、筆者もマツダ3のディーゼルモデルは、VWゴルフに最も近い国産ハッチバックだと思っています。

本企画の趣旨は「走りにこだわる国産ハッチバック・ワゴン対決」。両車とも、車両価格が270万円程度の2.0Lガソリンエンジンのグレードに揃え、車両パッケージングやエンジンフィーリングの比較、走行性能の比較、そして、シート性能や室内の使い勝手の比較、の3記事にわたり、レポートしていきます。

車両価格270万円だが、両者とも先進運転支援技術はほぼ装備しており、買い得感のある2台。

★スバルインプレッサSPORT 2.0i-S EyeSight (AWD)
車両本体270万6000円+メーカーオプション18万7000円

★マツダMAZDA3 FASTBACK DKUSVTIV-G 3.0 (2WD)
車両本体269万1741円+オプション16万3880円

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■運転席からの視界の良さはインプレッサの勝ち!死角が少なく室内も明るい
■パッケージングに優れるインプレッサスポーツ!車内はひとまわり大きいクルマのよう!
■2.0リットルガソリンエンジンは引き分け。ハイパワーでもなく派手さはない。燃費もまずまず
■まとめ

■運転席からの視界の良さはインプレッサの勝ち!死角が少なく室内も明るい

インプレッサSPORTのボディサイズは4475×1775×1480(全長×全幅×全高[mm])、車両重量は1350 kg、ホイールベースは2670 mm。

対するMAZDA3は、4460 ×1795 ×1440(全長×全幅×全高[mm])、車両重量は1360 kg、ホイールベースは2725 mm。

比較すると、MAZDA3の方が15ミリ長く、20ミリ広く、40ミリ低いディメンジョンで、ワイド&ローに見えるのはMAZDA3の方。インプレッサの方が幅広く見えますが、MAZDA3のフェンダー周りのふくらみは、想像よりも大きいようです。

2019年末のマイナーチェンジにより、フロントフェイスリフトを行った。
フロントオーバーハングはやや長い。
リアゲートの幅は広め。
フロントマスクはマツダ共通のデザインフィロソフィで作られているMAZDA3
Aピラー着地点がキャビン寄り。FFらしからぬプロポーションを持つ。
リアフェンダーが張り出したリアビュー。荷室ハッチは小さい。

運転席に座ると、インプレッサSPORTの方がダッシュボードやウィンドウガラスの下端のラインがMAZDA3よりも低く、周囲の見晴らしが明らかに良いです。また前席にピラー窓が備わっている点も、採光の良さや、視界の広さに貢献しています。

一方、MAZDA3の運転席からの視界はいいとは言えず、やや見づらさを感じます。寝そべったフロントウィンドウ、太めのAピラー、そして潜り込むように座る前席シートなど、悪条件が重なっています。特徴である長いノーズも、先が見えにくく、デザインオリエンテッドで作り込まれている影響が出てしまっています。

運転席周りのスイッチが多く、コクピット的な雰囲気。
スイッチはコンパクトにまとめられており、すっきりとした印象。

ホイールベースは55ミリMAZDA3の方が長く、車両の走行安定性には有利と予想されます。このあたりのフィーリングは、走行性能編の記事で詳細レビューしていきます。

■パッケージングに優れるインプレッサスポーツ!車内はひとまわり大きいクルマのよう

車内が広く感じられるのはインプレッサSPORTの方。人が座る位置を車両中央寄りに配置しているため、ドライバー席とドアとの距離が広くとれており、そのおかげで、車室内が広く感じられます。MAZDA3はドライバーを包み込むように、ドアやセンターコンソールが張り出しているため、ドライビングに向かいたくなる雰囲気作りは上手ですが、運転席は狭く感じます。

シートサイズは2台とも同等で、サイドインパクトに対する安全性は2台共高い評価を得ており、インプレッサSPORTのドアの厚みが極端に薄い、ということはありません。

その印象は後席の方が、更に感じられます。インプレッサSPORTの後席はニールームも広く、また左右の視界も良く、快適な空間があります。この印象はVWゴルフに近いです。一方のMAZDA3の後席はエクステリアの印象通り、Cピラー付近の採光が悪く、またFFパッケージングにしては、運転席が後退しているため、ニールームも狭く、天井も低いです。長時間乗っていることはかなりしんどいと思われます。

後席足元も広いインプレッサSPORT
明るい後席。シートバックも大き目で広い。
見た目通りCピラー周辺の影響で暗く狭いDAZDA3の後席。

よって、パッケージングに優れるのはインプレッサSPORTと断言できます。

■2.0リットルガソリンエンジンは引き分け。ハイパワーでもなく派手さはない。燃費もまずまず

インプレッサSPORTには、1.6Lガソリン(115ps/15.1kgf・m)と2.0Lガソリン(1545ps/20.0kgf・m)、2種類のエンジンバリエーションが設定されています。どちらも水平対向型でレギュラーガソリン仕様なのはうれしいところ。

今回試乗したのは、2.0Lガソリンの「2.0i S EyeSight」。高い静粛性と滑らかな回転フィーリングを持ち、クルマをスルスルと加速させます。昨今のダウンサイジングターボのような力強さはなく、2.0Lにしては大人しいようにも感じますが、その分、シャシーのポテンシャルが勝るため、どんな路面環境であっても、トルクを路面に伝えてくれます。

JC08モード燃費は16.0km/L、今回、200km走行した時点で12.0km/Lでしたので、2.0リッター相場の中央程度の燃費です。

水平対向エンジン本体は補機類の下にあるインプレッサSPORT。

対するMAZDA3には、1.5Lガソリン、2.0Lガソリン、1.8Lディーゼル、2.0LスカイアクティブXの、4バリエーションがあります。今回試乗したのは2.0Lガソリン(156ps/20.3kgf・m)の「20S proactive touring selection」。このエンジンも静かで滑らか。トルク感もインプレッサSPORTとほぼ同じに感じます。しかし、デザインがスポーティにも見えるだけに、あと一歩、加速力が欲しいと思ってしまいます。

WLTCモード燃費は15.6km/L、200㎞走行後の実燃費は13.0km/Lでした。MAZDA3の1.8Lディーゼルエンジンのトルク感、静粛性、フィーリングが素晴らしかっただけに、2.0Lにも過剰に期待してしまっていたので、すこし残念に思ってしまいました。

MAZDA3の2.0L SKYACTIV-Gはおとなしめの印象。

両車とも実用性は十分なエンジンですが、太めのタイヤを履いてシャシーポテンシャルが高いながらも、抑え気味なトルク感には物足りなさも感じました。

■まとめ

2台を比較すると、室内空間を有効活用しているインプレッサSPORTのパッケージングの秀逸さが光ります。広く快適な車内は、多人数での移動でも不満が出ることは少ないでしょう。

対するMAZDA3はドライバーズカーとして1人もしくは2人乗り向けとなる印象です。2台を比べてしまうと、MAZDA3のリア周りの不便さは気になります。もっとも、MAZDA3を買われる方は、後席使い勝手はさほど気にしないのでしょうが、「デザインを優先」を選択したにしろ、実は使い勝手も良かった!という、良い方向の裏切りも欲しいところです。

両車の走行性能の違いについてや、インテリアや荷室についても記事化しておりますので、そちらもあわせてごらんください。

(文:自動車ジャーナリスト 吉川賢一/写真:エムスリープロダクション 鈴木祐子)

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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