目次
●高速道路など限定エリアで自動運転が法律で可能に
自動運転のクルマに関する規定を盛り込んで、2019年に改正された道路交通法(以下、道交法)が4月1日に施行されました。ついに、法律上で自動運転のクルマが公道を走ることが認められたのです。
この改正道交法については、昨年「ながらスマホも解禁」になるという報道が多く出て話題になりましたが、実際はどうなったのでしょうか?
■自動運転システムの定義を追加
まずは、今回の改正道交法の中で、自動運転の関する大まかな概要を紹介します。主なポイントは以下の3つです。
1:自動運行装置による走行も「運転」に定義
2:自動運行装置を使うドライバーの義務を定義
3:作動状態記録装置による記録の義務付け
まず1について。
自動運行装置とは、すなわち自動運転システムのことです。今まで道路交通法には自動運転の規定はなかったので、新たに追加したのです。
自動運行装置に関しては、同じく4月1日に施行された改正道路運送車両法にも保安基準の対象装置として追加され、道路を走行できる自動運転のクルマに関して一定の基準が設けられました。(参考:日本が世界をリードする! 自動運転に関する保安基準が策定されました【週刊クルマのミライ】)
これにより、自動運転を使用する人も法的に「運転者」として扱われると共に、次に説明する道交法上で規定された「運転者の義務」を果たすことが必要となりました。
■すぐに運転に戻れればスマホOK
2は、自動運転中の運転者(ドライバー)の義務についての規定です。
今回の改正で法律が想定しているのは、レベル3の自動運転。これは、高速道路などの一定条件下でシステムが自動運転を行いますが、システムが自律走行を続けられないなどの緊急時は、クルマ側がドライバーへ警告を出し、それによりドライバーは直ちに運転に戻らなければならないというものです。
今回の道交法でも、同様の内容を規定していて、ドライバーが自動運転中でもすぐに運転に戻れる状態にある必要があるとしています。なので、居眠りや飲酒などは自動運転中でもやはり御法度になります。
話題の「ながらスマホ」の場合は、「携帯電話使用等禁止(安全運転義務への上乗せ)規定の適用を除外」と条件付きで認めています。要するに、すぐに運転に戻るなど緊急時に適切な処置ができる場合に限って、自動運転中にスマートフォンなどの使用が認められたということです。
ただし、スマホのゲームに夢中になり画面を注視するなど、すぐに運転に戻れないような行為はもちろんだめ。それにより事故や違反があった場合は、処罰の対象になる場合もあります。
なお、処罰については、違反点数2点、反則金は普通車の場合9000円、悪質な場合などは3か月以下の懲役または5万円以下の罰金などが規定されました。
■違反はシステムか人かを確認
3の作動状態記録装置とは、自動運転中の作動状態を記録する機械のこと。クルマの保有者(オーナー)は自動運転中に作動状態記録装置によって走行中のデータを記録することと、それらを保存することが義務付けられました。
この規定は、自動運転中のクルマが、道交法などの規定に違反した動きをしたことを現場の警察官が認めた場合、自動運転中だったかどうかを確認するためです。つまり、悪いのはクルマなのか人なのかの判断基準になるということですね。
いずれにしろ、レベル3の自動運転ができるクルマはまだ発売されていませんので、現状ではこれら規定が適用される機会はまだありません。ですが、多くの自動車メーカーが、2020年代初頭の実用化を目指し開発をすすめていますので、これら法律が適用される未来はそう遠くないといえるでしょう。
(文:平塚直樹/写真:トヨタ自動車、日産自動車、ビー・エム・ダブリュー、平塚直樹 *写真はすべてイメージです)