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●一時は10〜20万円台が一般的になるほど相場が下落
1991年の発売当時は鳴り物入りで登場したビートでしたが、同じ年の6カ月後にカプチーノが発売され、翌年の1992年にはマツダからカプチーノと同じエンジンでミッドシップレイアウトとガルウイングドアを採用したAZ-1が発売されます。それも影響したのか販売台数が予想ほどには伸びず、発売翌年以降はテコ入れのために特別仕様車を毎年のように発売します。総生産台数は3万3892台と伝えられ、これはカプチーノやAZ-1より多いものですが、月販目標3000台には遠く及びませんでした。
やはりミッドシップ2シーターオープンカーという趣味性の強さ、さらには軽自動車なのに当時のトヨタ・カローラと変わらない高価格がネックとなったのです。
新車を買った多くは愛好家でしたが、中古車となると荒い使われ方をされます。小さなボディのミッドシップレイアウトということでジムカーナなどの競技に使われることもあったり、改造して峠を攻める人たちにも好まれました。この結果、1990年代後半以降になると数を減らし、中古車相場も下落します。2000年代初頭だと10万円台や20万円台のものが一般的となり、その状況が2010年くらいまで続きます。
2011年に自動車雑誌の企画で中古のビートを取材したことがあります。その時は1オーナー・フルノーマル・走行距離3万キロ台の、いわゆる極上車を取材しましたが、それでも価格は70万円台でした。
●純正部品再販とS660の登場で状況が変わった!
ビートの中古車相場に異変が起こるのは、まず2011年です。その年の秋にホンダアクセスがビート発売20周年を記念して、純正用品の一部を再販すると発表したのです。これによりビートの人気が持ち直します。中古車相場もジリジリと上昇傾向に転じたのです。下限は20万円台と変わりませんでしたが、極上車の相場が100万円前後にまでなりました。
さらに2015年、後継車であるS660が発売されるとビートが再評価されることになります。S660は現代流のよくできたスポーツカーです。誰が乗っても速く走らせることができ、リヤピラーが残るもののオープンカーの爽快感も得られます。ですが、ビートを知る世代には面白くないと感じる人もいたようです。電子制御される部分が少ないビートは、運転が挙動に直結しています。これがダイレクトな操縦性として再評価されることになりました。またリヤピラーが残らないフルオープンということもポイントです。
●現在の中古車相場の平均は50万円台
皮肉なことに後継車のS660が発売されたことで、ご先祖であるビートの中古車相場が上がってしまったのです。これは以前にお伝えしたNSXのケースにも似ています。ブランクの後に発売された2代目が、かえって初代の評価を上げてしまい中古車相場が高騰したNSXと同じような現象です。ですが、ビートの場合、相場が極端に上がることはありませんでした。やはり軽自動車ですので投機対象にはならず、また作りの面から劣化を逃れ得ないということもあります。
現在の中古車相場は10万円台は少なく20万円台から、上限は200万円台となっています。このうち30万円台から70万円台の間がボリュームゾーンで、平均相場は50万円台です。ですが、やはり走行距離が短く修復歴もなく、程度の良いものだと100万円前後になってしまいます。
余談ですがビートの生産台数は3万3892台でしたが、そのうち今でも1万9000台ほどが現存していると言われます。今回相場を調べたところ、全国にあるビートの中古車は9000台を超えていました。これは驚くべきことで、いかにビートが愛されているかを物語っています。