S660の登場で再評価されたホンダ・ビート。一時は底値だった中古相場が上昇して平均相場は50万円台!【中古スポーツカー・バイヤーズガイド】

●中古ビートで失敗しないための見極め方とは?

中古車相場が上がったビートですが。前述したように軽自動車のクオリティにあることも事実です。今回お話を聞いたポジションオートサービス代表取締役、碇谷実さんによれば「現在流通しているほとんどのビートがくたびれてますよ」と、劣化が進んでいることを知らされました。

「数年前まではビートの弱点としてエアコン、ECUユニット、メインリレーなどが有名でしたが、今ではどこが壊れてもおかしくない状況です。30年近く前の軽自動車ですから、あらゆる個所が劣化していると思ってください」というのです。

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ポジションオートサービスの外観。
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ポジションオートサービス代表取締役の碇谷実さん。

確かに今でもネット上にはこれらのポイントに注意しようと言った言葉が踊っています。ですが、今では特定の個所ではなく、すべてが壊れる可能性があるものと考えないと難しいということです。

さらにエンジンのオイル消費も挙げられます。「弊社ではないお店で買ったビートの方が来店されて部品装着を依頼されたのです。その場で整備状況を見てみようとオイルレベルゲージを抜いてみると、ゲージにオイルが付かない。買ってから1年だったそうですが、オイル消費に気がつかれていなかったのです」というほど、オイルを消費してしまうこともあります。だからと言ってエンジンをオーバーホールしたりリビルドエンジンに載せ替えるのは金銭的な負担が大きいので、こまめにオイルの量を確認して継ぎ足せばいいでしょう。

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故障診断する碇谷実さん。

エアコンのコンプレッサーにあるマグネットクラッチが焼きつくことも代表的なトラブルです。この症状が発生すると、室内のエアコン操作パネルからランプが消えます。そのまま走行を続けると冷却水の温度が上昇してオーバーヒートしてしまいます。なぜかといえば、コンプレッサーとラジエター電動ファンのヒューズが共用のため、コンプレッサーが動かなくなってヒューズが飛ぶと電動ファンも回らなくなるのです。

ビート・コンプレッサー
ビートのエアコン・コンプレッサー。
ビート・エアコンパネル
ビートのエアコン操作パネル。

またボディのサイドステップが腐りやすいということもビートの弱点です。中古車の場合、高い確率で腐食が進んでいます。

●さすが専門店! ポジションオートサービスさんの特徴

トラブルはこれ以外にもホロの劣化や運転席の破れなど、ビートの中古車には気をつけるべき点がいくつかあります。お話を聞いたポジションオートサービスさんはさすがに専門店だけあって、トラブルへの対処法をいくつか用意されています。タイミングベルト交換プラン、クラッチ交換プランや幌&スクリーン交換プランなどは単品で交換するよりお得な整備プランです。

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クラッチ交換、幌&リアスクリーン交換のプラン。

オリジナルハーフボディカバーを開発して停車中の雨漏れを防止するとともにホロの劣化を遅らせる用品を用意していたり、破れたシートの補修にも対応しています。

ビート中古車06
オリジナルハーフボディカバー。
ビート・シート
補修されたシート。

故障しやすいECUやメインリレーについては、いつでも故障診断ができて部品交換まで対応可能です。またエアコンの修理についても、通常なら電装専門店へ外注されるところ自社で対応可能となっています。

ビート・ECU
ビート純正ECUユニット。
ビート・リレー
ビート純正メインリレー。

ボディのサイドステップについては鉄板を継ぎ当てて補修するなど、通常なら断られてしまうような板金作業も引き受けてくれます。

●車選びはお店選び。ビートを買うなら信頼できるお店で!

こうしてトラブル例を挙げていくと、もうビートに乗ってはいけないと思ってしまいますが、決してそうではありません。トラブルを念頭に、愛車の健康状態を管理して乗り続ければいいのです。ポイントは、こうしたトラブルは程度が良く販売価格の高い中古車でも発生する確率が高いということです。いかに走行距離が短いガレージ保管のビートでも、経年劣化には勝てないからです。とはいえ軽自動車のビートですから、補修部品が安く手に入ります。修理に莫大な金額がかかるわけではないので、手軽なセカンドカーとしての存在感は今でも健在です。

そう考えると、相場の上限にあるものを買うのではなく、平均相場くらいのものを手に入れて、乗りながら不具合を対策していくのがオススメでしょう。今回お話を聞いたポジションオートサービスさんでは、このような乗り方をされる人のバックアップ体勢が万全です。創業して14年も経つ専門店ですから、碇谷さんの豊富な経験を頼れば的確な修理診断が得られます。

「トラブルになりそうな個所を事前整備してボディを全塗装するなど、手を加えれば100万円以上でも販売できます。ですが、もっと手軽に楽しんでいただきたいので展示車には手をかけず納車整備で対応しています」と、販売価格を抑えた設定にされています。納車整備では全油脂交換やエアコンの修理を始め、普通に乗れる状態まで仕上げてくれるそうです。

どのビートを選ぶかも大事ですが、メンテナンスは故障診断が的確にできるお店選びも重要です。また現在はNSXに続いてビートの部品も再販されています。結論としてビートを買うなら、今のうちかもしれませんとお伝えしましょう。

この記事の著者

増田満 近影

増田満

複数の自動車雑誌編集部を転々とした末、ノスタルジックヒーロー編集部で落ち着き旧車の世界にどっぷり浸かる。青春時代を過ごした1980年代への郷愁から80年代車専門誌も立ち上げ、ノスヒロは編集長まで務めたものの会社に馴染めず独立。
国産旧型車や古いバイクなどの情報を、雑誌やインターネットを通じて発信している。仕事だけでなく趣味でも古い車とバイクに触れる毎日で、車庫に籠り部品を磨いたり組み直していることに至福を感じている。
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