●BMW6シリーズはモデルラインナップが減少し、現在はグランツーリスモだけとなった
日産・GT-R、メルセデス・AMG GT、ベントレーコンチネンタル GTなど、車名やグレードなどに良く使われている“GT”という言葉の意味を皆さんはご存じでしょうか。GTはイタリア語のグランツーリスモ(英語ではグランドツーリング)の略語で、元々は快適に高速での長距離移動に適した高性能な乗用車を指していました。
それがだんだんと、高い走行性能を実現したスポーツカーなどに多く使われるようになっていったのです。今回試乗したBMW・6シリーズも車名にグランツーリスモが使われており、その実力を測るため約950kmのインプレッションを行いました。
BMW・6シリーズは初代モデルとなるE24型は当時、世界一美しいクーペと称されるほどの美しいスタイリングが特徴でした。現行4代目となる現行モデルは、2011年2月に導入された6シリーズカブリオレを皮切りに、同年8月に2ドアクーペそして2012年6月には4ドアクーペのグランクーペが導入されました。
さらに2017年10月に流麗なファストバックスタイルを採用した6シリーズグランツーリスモ(以下GT)が追加されました。現在は2ドアクーペ、カブリオレ、グランクーペは8シリーズへと進化し、6シリーズはこのGTだけとなっています。
今回試乗したクルマは2019年7月に追加された最高出力190ps・最大トルク400Nmを発生する2L直列4気筒ディーゼルターボエンジンを搭載する623d GT Mスポーツです。
BMW623d GT Mスポーツのボディサイズは、全長5105mm×全幅1900mm×1540mmという圧倒的な存在感のあるサイズです。しかしこのボディサイズならではの長いルーフラインにより、流麗なクーペスタイルを実現しています。
また3070mmというロングホイールベースにより余裕たっぷりの室内空間を確保し、シート表皮に、肌触りの良さと耐久性の高いダコタレザーを採用、上質な空間を演出しています。特にリアシートのニースペースは長身の大人が足を組んでもまだ余裕があるほどの広さそして快適さを実現しているのが特徴です。
居住空間の広さも623d GTの魅力ですが、特筆すべきはラゲージルームの広さです。5人乗車時でも610Lを実現、後席を全て畳むと最大1800Lまで拡大し、スキー板などの長尺物も積載可能となっています。まさに快適性と利便性を両立したラグジュアリークーペ。それが623d GTと言えるでしょう。
●航続可能距離はどんどん延びる!?
試乗は東京を出発するときに燃料を満タンにした際、走行可能距離が956kmと表示されたので、満タンで東京へ戻ってこられる距離としました。快適に長距離を移動できるということで、高速道路メインのコースです。
首都高から東名、そして新東名を西へ進んでいきます。全長5105mm・車両重量1860kgもあるBMW623d GT Mスポーツですが、最大トルク400Nmを発生する2L直4ディーゼルターボにパワー不足は全く感じません。ディーゼル特有のカタカタという音も全く車内に入って来ないので快適そのものです。
新東名に入ってからはほぼ、アダプティブクルーズコントロール(以下ACC)を使用。設定速度は法定速度プラス10km/hとしました。623d GT MスポーツのACCは設定したい速度に達したら、ステアリングに装着されたボタンを押せばOK。事前に車間距離を設定しておけば操作はわずかボタンを1回押すだけで作動させられるので非常に簡単です。
先行車との速度調節だけでなく、ステアリング制御も行ってくれるのでドライバーは前後方の注意をするだけでよく、ほとんど疲れることなく走行できます。車間距離を一番短く設定すれば、ちょうど車線変更されない距離感をキープしてくれるので、割り込まれる心配もないです。
3mを超えるホイールベースによるゆったりとした乗り味はまさにグランドツアラーという名前に相応しいものです。さらに驚いたのは燃費性能で、折り返しと考えていた琵琶湖まで到達してもメーターは1/4を超えた程度で走行可能距離は722kmでした。
約960km走行して東京へ戻っても残走行距離は237kmと表示され、高速道路だけならば満タンで東京から福岡まで走破できる実力です。しかも燃料代も安い軽油なので、財布にも優しいです。BMW623d GT Mスポーツは抜群の走行性能と優れた燃費性能を兼ね備えた最強のGTカーと言えるのではないでしょうか。
(萩原文博)