自賠責保険が16.4%の値下げ、けど任意保険は平均3%程度値上げ、その理由とは?

■みんなが小さな傷とか気にしなければ保険料は下がるはず

報道によれば自賠責保険が2020年の4月から16.4%の値下げが実施されるといいます。なぜ自賠責保険が安くなるのか? それは簡単です。自賠責保険が使われる事故が減っているからなのです。

自賠責保険というのは、人身事故でしか払われません。つまり、ケガをしたり、死亡したり、後遺障害が残ったりしたときに使われるものです。

自賠責保険は、人身事故でしか払われません。物損事故は補償外です。

任意保険の対人賠償は、自賠責保険で足りないものをカバーするためのものです。自賠責保険の保障限度額は1名につき死亡や後遺障害で3000万円(常時介護の場合は4000万円)、傷害120万円ですから大きな人身事故となればなかなかカバーしきれないのが当たり前です。

そうしたなか、自動車は各種の安全装備の充実などもあって、人身事故にいたるような事例が減ってきています。保険は実績(つまり保障として支払った額)によって保険料を決めるので、自賠責保険の保険料がダウンするというわけです。

一方で任意保険は値上がりしています。2020年1月からは大手保険会社の掛け金は平均3%程度値上がりしていると言われています。この背景には保険には消費税が掛からないものの、修理時費用には消費税が課税されるため、支払い額が増えているというのです。

また、高額な装備も増え、それらが原因で保険金の支払い額が増えているとも言われています。メーカーも補修用部品をパーツ単位ではなく、アッセンブリー単位でないと出荷しないなどといった傾向があり、それらが保険掛け金を押し上げている原因にもなっています。

任意保険は値上がり傾向にあります。

前述のように保険は保険金の支払い額が減れば下がります。これは私的な意見ですが、日本はちょっとクルマを大事にしすぎる傾向が強すぎる気がします。ほんの小さな傷でも大問題にして保険を使うことで、全体として保険金が上昇してしまうのでしょう。

世界中、多くの地域でこれほどキレイなクルマばかりが走っている地域はまれです。世界の人はもっとクルマを道具としてつかい倒しているように見えます。クルマを大事にすることは大切なことですが、日本人のクルマに対する意識が少し変わると、保険料が下がることでしょう。

クルマを道具としてとらえ、適切に使用することが、保険料の値下げにつながるかもしれません

そうしたことでクルマに乗ることの敷居が下がれば、それはいいことだな……と私は思うのです。

(文/諸星陽一)

この記事の著者

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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