■「スポーツ+」モードでレーシングカーばりの演出も
プレス向けに開催された試乗会で「メルセデス AMG GT 4ドア クーペ」に乗る機会がありました。同モデルは2019年2月に発表され、同年5月以降にデリバリーが開始されたハイパフォーマンス4ドアクーペ。
「メルセデス AMG GT 43 4MATIC+(ISG搭載モデル) 」「メルセデス AMG GT 53 4MATIC+ (ISG 搭載モデル) 」「メルセデス AMG GT 63 S 4MATIC+」という3本立てのカタログモデルを用意しています。
試乗したのは、中間の「GT 53 4MATIC+」で、「松竹梅」でいうと「竹」ということになります。「竹」といっても超高級寿司といえるラインナップで、「梅」の「GT 43 4MATIC+」でも価格は1198万円。
今回試乗した「GT 53 4MATIC+」は、1623万円という車両本体価格。さらに、「AMGダイナミックパッケージ」「フルレザー仕様」「ガラススライディングルーフ」「スペシャルマットペイント」というオプションが加わり、1766万1000円にまで跳ね上がります。
■大人4人が座れて荷物も積める万能型スポーツモデル
「53 4MATIC+」のエンジンは直列6気筒ツインターボで、最高出力435ps/6100rpm・最大トルク520Nm/1800〜5800rpmというアウトプット。組み合わされるトランスミッションは、変速ショックとは無縁でいながらマニュアルモードではダイレクトな変速フィールを見せる9速ATです。
さらに、最高出力21PS(16kW) ・最大トルク250Nmを発生するモーター、オルタネーターとスターターの機能も兼ねるISGにより静かなエンジン始動が可能なほか、低速域ではモーターアシストもわずかに感じられ、街中ではスポーツモードを「コンフォート」にしておけば比較的ジェントルな走りも可能。
さらに最もレーシーな「スポーツ+」にして山道を走り出すと、ドライバーを襲う圧倒的なトルク感と共に、ど派手なエキゾーストノートを響かせながらあっという間に加速していきます。
「松」の「63 S 4MATIC」は4.0L V8ツインターボにより639PS/900Nmという超弩級のスペックを誇りますが、「竹」の「53 4MATIC+」でもとにかく速い。
コーナー手前ではブリッピングしながら素早い減速が可能で、後方にシートを備える4ドアであることを忘れさせるほどの旋回性能の高さも見せつけてくれます。正直、公道の山道では、「コンフォート」モードでもモアパワーを抱かせることはなく、「スポーツ」でもパワステの手応えが増し、ブリッピングしながらコーナーを駆け抜けていきます。
また、4WDは「AMG 4MATIC+」という名称で、前後トルク配分が「0:100」から「50:50」の範囲で可変するタイプ。ハイパフォーマンス志向の4WDで、公道の速度域なら当然ながら終始安定したコーナリングマナーに徹してくれる印象。それでもハイスピードな旋回が可能で、痛快な走りが容易に引き出せます。
なお、前後席ともに座り心地はかなり硬め。身長171cmの筆者がドライビングポジションを決めた後の席には、頭上にこぶし1つ分、膝前にこぶし2つ分強という十分な余裕が残ります。
リヤシート自体も大きく、背もたれの天地高は長く、座面は床面から少し低いものの、お尻の位置が少し低くなっていて、硬めの座り心地以外は実用になる空間、シートサイズが確保されています。さらに、意外なほど広いラゲッジスペースも用意され、大人4人に対応するロングツアラーというキャラクターも演じてくれます。
実際の使用シーンでは、後席に手荷物を置き、乗車は前席に大人2人までということが多そうではあるものの、先述したように、急なゲストにも対応してくれます。「メルセデス AMG GT 4ドア クーペ」は、圧倒的な運動神経を備えながらも融通(実用性)も利く万能型スポーツ・グランドツアラーといえそうです。
(文/写真 塚田勝弘)