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■RRのフレンチコンパクトがマイナーチェンジで真価を発揮
クリッカーのライターが選ぶ2019年ベスト3、3位は2019年8月にマイナーチェンジを受けた「ルノー トゥインゴ」です。走りの面では、最高出力がわずか2PS向上されたくらいですが、トランスミッションのEDC(デュアルクラッチトランスミッション)の制御がよりスムーズになったのが好ましく感じられました。
現行型は、RR(リヤエンジンリヤドライブ)らしい機動性の高さが美点のトゥインゴ。EDCは、デュアルクラッチトランスミッションにしては少しギクシャク感があり、スムーズに走らせるには、変速時に少しアクセルを戻すなどのコツが要りました。
マイナーチェンジ後モデルは、EDCの変速マナーがよりスムーズになり、しかもCVTやATのような退屈さもなく、絶妙なテイスト。従来型でトゥインゴを狙うならMTと思っていましたが、マイナーチェンジ後ならEDCを指名しても「ファン・トゥ・ドライブ」を交差点1つ曲がるだけで享受できます。
■「らしい」乗り心地の良さと高い実用性が大きな美点
2位は「シトロエンC3エアクロスSUV」。兄貴分のC5エアクロスSUVも現代の「魔法の絨毯」を謳う「Progressive Hydraulic Cushions」により、良好な乗り心地を堪能できる秀作です。それよりもさらにコンパクトなC3エアクロスSUVは、取り回しがよく、C3譲りの乗り心地の良さ、軽快なハンドリングなど走りには、シトロエンらしい美点がコンパクトなサイズに詰まっています。
プラットフォームはかなり古いものの、乗り味に古さはなく、ベースのC3よりも重量が約90kg重くなったこともあり、よりしなやかなフットワークに仕立てられています。タイヤは、ミシュランの「LATITUDE TOUR HP(マッド&スノー)」を履くことで、路面からの当たりが柔らかくなっているように感じられます。
90kg増でもエンジンは、C3と同じ1.2Lの直列3気筒ガソリンターボで、110PS/5500rpm、205Nm/1750rpmのアウトプット、6ATのギヤ比も同一。重くなった分、C3ほどの力感はありませんが動力性能の面でも不足はありません。ハッチバックをSUV化することでのネガは、少しコーナーでのロールが大きく感じられる(それでも粘る足ですが)のと、加速性能が多少目減りしているくらいといえそう。
逆に利点として、高めのアイポイントによる視界の良さ、よりアップライトに座らせることで後席フットスペースの余裕、荷室の広さなどがあり、「C3では少し狭いかな」と感じていた人には、シトロエンC3エアクロスSUVの登場は待望といえそうです。
■初めて欲しいと思ったバッテリーEV
1位は、ジャガーI-PACEです。発表と受注開始は2018年ですが、試乗できたのは2019年で、納車も2019年になってから(であるはず)。
1000万円級のEV(SUV)なので「良いのが当たり前」とはならないのがクルマの奥深さ(難しさ)。ほかの高級EV(SUV)と比べても、ハンドリングからは従来の「クルマっぽさ」が感じられます。
トヨタの豊田章男社長は、記者会見でEVに関して「味付けが難しい」と語っていますが、ジャガーはI-PACEで同ブランドらしさをすでに身につけているように感じられました。驚異的な加速は、モーター駆動らしい圧倒的なスタートダッシュに加えて、内燃機関に大小なりつきまとう「エンジンのしゃくり」がなく、身構えることなく加速に身を任せることができます。
濃厚なスポーツテイスト、驚くほど静かな車内に加えて、ハンドリングにも電動車両っぽい床下が重さから来るテイストが希薄。乗り心地では、重量物(駆動バッテリー)によるボディが揺すられる感じがありますが、公道レベルなら操舵感に悪影響はなく、高級車として許容範囲といえます。
前後席ともに「上げ底」感のあるパッケージはEVのデメリットといえそうですが、4人が座れる実用的なキャビン、広いラゲッジを備えています。
2019年で一番驚かされたクルマであり、EVで初めて欲しい(お金があれば)と思わせてくれるモデルでした。
(文/写真 塚田勝弘)