■日本初のクリーンディーゼルエンジン搭載プラグインハイブリッド乗用車
日本初となるクリーンディーゼルエンジン搭載のプラグインハイブリッド(PHV)乗用車として2019年10月23日に発表され、同年12月以降にデリバリーが開始されるメルセデス・ベンツ「E350 de」に試乗する機会がありました。
なお、従来どおりガソリンエンジン+プラグインハイブリッドもあり、同時に「E 350 e アバンギャルド スポーツ」も追加設定されています。
クリーンディーゼルエンジン+PHVの「E350 de」は、ガソリンエンジン+PHVと同様にCAFE(企業別平均燃費基準)など、世界的に高まっている燃費規制強化に対応するのはもちろん、時にはトルクフルかつパワフルな走りでロングドライブを楽しみたい、というニーズにも応えてくれるモデルです。
モーターのみでの航続可能距離は、WLTPモード(欧州参考値)で最長50km。欧州だけでなく世界中の各都市では、排ガスに対する目が厳しくなっていて、ローカルであってもゼロエミッションのニーズは高まっています。一方で、郊外に出ればディーゼルエンジン(もしくはガソリンエンジン)による力強い走り、さらにハイブリッドモードでの走行も享受できるのがプラグインハイブリッド車の利点でしょう。
■ディーゼルエンジンならではの音・振動対策も抜かりなし
試乗車は、875万円のプライスタグを付ける「E 350 de アバンギャルド・スポーツ」で、エンジンは2.0Lの直列4気筒ディーゼルターボ。143kW(194PS)/3800rpm、400Nm/1600-2800rpmという、エンジン単体でもかなりトルクフルな加速性能を引き出せます。モーターの最高出力は90kW(122PS)・最大トルクは440Nm。システム出力は225kW(306PS)/700Nmに達します。
試乗車はバッテリーがフル充電ではなく、撮影しながら走ったり止まったりという状況で、モーター走行の仕事ぶりを観察するには厳しい状況でしたが、ハイブリッド走行でもスムーズで高い静粛性が確認できました。
エンジンが掛かっている状態やアイドリング時には、ディーゼルエンジンらしい音が伝わってくるものの、遮音、吸音対策は念が押されているようで、気になるレベルではありません。
システム出力は、225kW(306PS)/700Nmという圧倒的なアウトプットを誇るだけに、「ダイナミックセレクト」を「エコ」にした状態でも街中ならストップ&ゴーも難なくこなし、「スポーツ」「スポーツ・プラス」にすると、バックレストに背中が押し続けられるような、圧倒的なロケットスタートも可能。さらに、ディーゼルターボならではの中低速域の分厚いトルク感があり、一気呵成に速度を上げていきます。
また、フロントノーズに重いディーゼル、リヤに駆動用バッテリーを積むため、ボディ全体は重厚感があります。速さは十分以上にあるものの、軽快なフットワークで魅せてくれるというよりもロングツアラー的な走りを披露。
高級住宅街にお住まいの方で、早朝にゴルフに出かける、そんな人でも充電しておけば街中ではモーター走行のみでクリアできますし、普段の買い物ならEVとして十分に使えます。
もちろん、ディーゼルエンジンならではの「足の長さ」を活かしたロングドライブにも対応してくれる万能型エコ・ツーリングモデルといえそう。なお、走行モードは「ハイブリッド」、EVモードの「Eモード」、バッテリーを温存する「Eセーブ」、充電モードの「チャージ」を用意。
なお、後席は少し床面が高く、荷室奥側は駆動用バッテリーが積まれる関係で「凸」形になっていますが、大人4人がゆったり乗れて、数泊程度の荷物なら積載できそう。実用面での懸念はほとんどないでしょう。
(文/塚田勝弘 写真/メルセデス・ベンツ日本、塚田勝弘)