フォード・マスタングに登場したEV「マッハE」がSUVスタイルになったワケ【新車】

■マスタングがSUV化…ではなく、電動SUVのバリエーションが追加

フォードのマッスルカー「マスタング」といえば、ハイパワーエンジンを積んだFRのスポーツクーペが思い浮かぶでしょうが、新たに「マッハE」というサブネームを持つ電気自動車が登場しました。しかもSUVスタイルとなっていて、これまでのマスタングとはイメージを大きく変えています。

All-New Mustang Mach-E
フォードのデトロイトにある最初の工場から数ブロック離れたところにあるマスタング・マッハE

とはいえ、マスタングがすべてSUVになってしまったわけではなく、クーペ、コンバーチブルという従来のラインナップにSUVが加わったというカタチです。グリルレスのフロントマスクはEVであることを示しながら、燈火類のフィニッシュではマスタングの伝統を感じさせるという過去と未来がひとつになったスタイリングが印象的です。

パフォーマンスの面でもマスタングの名前に恥じないもの。「GTパフォーマンスエディション」の最高出力は342kW、最大トルクは830Nm。また、駆動方式はRWD(後輪駆動)をベースにAWD(全輪駆動)も設定すると発表されています。

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フォード・マスタングの伝統的なサブネームを使った電気自動車が「マッハE」

ルーフラインはクーペSUVといえるもので、見れば見るほどマスタングの名前にふさわしいスタイルと感じるものですが、なぜマスタング・ファミリーとして登場した電気自動車「マッハE」はSUVスタイルを選択したのでしょうか。おそらく、その理由は巨大なバッテリーとスタイリングを両立するためでしょう。

満充電からの航続距離は300マイル(約480km)を確保するという「マッハE」は、スタンダードで75.7kWh(288個)、ロングレンジモデルは98.8kWh(376個)ものリチウムイオンバッテリーを積んでいるといいます。

搭載位置はEVでは標準的なキャビン床下で、温度管理は水冷式、アクシデントから守るために強靭な防水ケースに収められているとアナウンスされています。バッテリーパックは、かなり巨大であると想像できるのです。

つまり、これまでのマスタングのようなクーペフォルムではバッテリーパックにょってキャビンの床が高くなってしまいます。バッテリーを収めるスペースを確保するためにはSUVスタイルにする必要があったのでしょう。

All-New Mustang Mach-E
フロントには排水機能を持つラゲッジスペースを装備

マスタング・マッハEはエンジンを積まない純EVです。そのためリアだけでなく、フロントにもラゲッジスペースを持っています。フロントのラゲッジスペースには排水可能な設計となっていて、クーラーボックスなどから水が漏れても安心というのは、アウトドアでのBBQが大好きなアメリカらしいアイデアではないでしょうか。

インテリアでは15.5インチの巨大なディスプレイを中心としたコクピットが、いかにも電気自動車といったムードを高めています。二番煎じ的にも感じますが、これが北米市場における電気自動車らしい姿ということでしょうか。

また、マスタング・マッハEではスマートフォンをキーの代わりにする機能も備わるということでですが、スマートフォンのバッテリーが切れてしまった場合は、タッチディスプレイからキーコードを入力することでシステムを起動できるというバックアップ機能も備わるということです。

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15.5インチのディスプレイはスマートフォンライクな操作感を実現

マスタング・マッハEのユニークなところは、電気自動車であることだけではありません。同社のレース活動を支えるフォードパフォーマンスチームが“レーシングシミュレーター”を利用してセッティングをほどこした最初の量産車となっています。

電動車両らしいハイレスポンスと大トルクだけでなく、なめらかなハンドリングや乗り心地は、マスタングの新しい価値を生み出すことでしょう。

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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