「これは別人だ!」写真がぼやけてて本人と特定できず、オービス裁判で逆転無罪判決

オービス

■オービスの写真に写っているのは一体誰? 高裁は警察の鑑定結果を認めず!

 オービス裁判で逆転無罪が出た! 以下は11月14日付け九州朝日放送だ。

スピード違反で罰金刑の女性、控訴審で逆転無罪に
 「オービスに写ったのは私ではない!」。スピード違反をめぐる控訴審で、福岡高裁は被告女性の主張を認め、逆転無罪の判決を言い渡しました。
 4年前、福岡県内の20代の被告女性は、福津市の国道で、法定速度を35キロ超える時速95キロで車を運転したとして、道路交通法違反の疑いで逮捕されました。
 速度取り締まり装置=オービスの写真から、運転していたのは被告女性とされ在宅起訴されましたが、1審で「車に乗っていない」と無罪を主張。その友人が「自分が運転した」と証言し、オービスの写真が誰なのかが争われました。
 福岡地裁は「写真はおそらく被告と同一人物」とした警察の鑑定結果を「信用性が高い」と判断。罰金5万円を言い渡し、被告女性が控訴していました。
 逆転無罪の理由について、福岡高裁は「写真の画質が低く、犯人が被告と相当程度似ているとは評価できない。被告と友人の供述の信用性も否定できない」としています。

 ニュース画像を見ると、オービスは三菱電機のRS-2000型のようだ。ネットやオービスマップでは「H」と呼ばれている。

オービス
今回の逆転無罪のオービスと同じ、三菱電機のRS-2000型。これは奈良県内のものだ。測定方法はレーダー式。写真は通信回線で警察の中央装置へ伝送する。

 オービスは現場では測定と撮影を行なうだけ。写真に映ったナンバーから警察は違反車両の持ち主を突き止め、違反者の出頭を求める「通知書」を郵送する。
 福岡の今回のケースでは、20代のその女性が出頭したのだろう。出頭して、何をどう主張したのか、とにかく違反切符(この場合は赤切符)を切られたわけだ。

 「写真の画質が低く…」とある。別の報道(https://www.yomiuri.co.jp/national/20191115-OYT1T50093/)では「画像は全体的にぼやけており…」となっている。
「出頭して見せられたオービスの写真が、ぼやけていた!」
 という人はじっさいときどきいる。
 ぼやけの程度によるし、担当警察官やその上司の考え方などにもよるのだろうが、少々ぼやけていても呼び出すことはある。
 ぼやけを理由になんとかゴネてチャラにしたい違反者に、警察官は言うだろう。
「十分にあなたと認められます。裁判をやるんならどうぞ。警察が絶対勝ちます」
「どうしても自分じゃないとおっしゃるなら、この日時にこのクルマを運転してここを走行したのは誰か、関係者をすべて捜査することになります」
 ゴネをとおすのはなかなか難しいだろうと思われる。

出頭書
オービスに撮影されたあと、だいたい数日から2週間程度でこうした「通知書」が警察から届く。

●写真の「ぼやけ」はどの程度だったのか?

 今回のケースの「ぼやけ」はどの程度だったのか。それはもう確かめようがない。
 オービスの写真は検察側の証拠書類の1つだ。弁護人に開示され、そのコピーを被告人が手にすることはあるけれども、たとえば私が裁判の検証記事を書くために見ることは許されない。
 検察側の証拠書類を裁判の目的以外で他人に見せることは犯罪なのだ。私に見せた被告人または弁護人は「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に処される(刑事訴訟法第281条の5)。「見せてくれ」と言った私は教唆犯として逮捕され、スマホやパソコンなどを押収されるだろう。
 裁判員制度を目玉というか目くらましとする「司法改革」によってそういうことになったのだ。「改革」と称して悪くするのはよくあることだが、これは特に悪質だと私は思う。

 それでだ、
  ・写真は全体的にぼやけている
  ・被告人(20代の女性)は「車に乗っていない」と無罪を主張
  ・その友人が「自分が運転した」と証言

 という3要素がありながら、一審の福岡地裁はなぜ有罪(罰金5万円)とできたのか。
 もしかしたらこうか? と私は推測する。

 ーー被告人は「自分は運転していない。クルマは友人に貸した。友人の名は言わない」と突っ張った。警察はこう受け止めた。「ははぁ、友人に貸したと言えばチャラになるとかいうネットのデマを信じているのだな。ふざけんな!」と。検察も同様に考えて起訴した。

●いったん起訴したら検察は引き下がらない

 ところが裁判になってから、「自分が運転した」と友人が名乗り出た。
 オービスの赤いストロボに気づかなかったという運転者はよくいる。友人も気づかず、しかし自分にクルマを貸した女性が裁判の被告人になっていることを知り、義侠心から名乗り出たのか。
 そうなれば、20歳の女性に対する起訴は取り下げ、友人を処罰する?
 いや、いったん起訴したら検察は引き下がらない。途中で無罪らしいと分かっても、あくまで有罪主張で突っ走る。数々の冤罪はそうやって生まれるのだ。
 本件の検察官は、科学捜査研究所の係官に「オービスの写真に映っている違反者は被告人に酷似している」とか証言させ、あくまで20歳の女性を有罪にすべく頑張った。

 裁判官は、以下の二者択一を迫られた。
  A:警察官、検察官(=国家の治安を護る仲間)を信じるか
  B:どこの馬の骨とも知れない20歳の女性とその怪しい友人を信じるか

 普通、裁判官はAを選択する。福岡地裁の裁判官も普通にAを選択し、有罪としたーー。

 高裁も基本的にはAを選択する。しかし、高裁は地裁と違い、月日がたってから冷静になって全体を見渡すという面がある。
 あとになって全体を見渡せば、写真は不鮮明なうえ、友人の証言を否定する材料はなく…ということで逆転無罪にしたんじゃないかな。

 20歳の女性が無罪になったからには、友人が改めて処罰されるのか?
 いや、それはないだろうと私は推測する。逆転無罪になっても、警察、検察からすればあくまで20歳の女性が『犯人』なのだ。
「当方の主張が認められず遺憾である」
 と突っ張って終わるのではないか。

●「クルマは友人に貸した」で言い逃れはできない

 この無罪報道を見て、
「オービスに撮られても、運転していたのは自分じゃない、クルマは友人に貸したと言えば大丈夫だ」
 とかいうデマに踊らされる人が増えるかもしれない。
 そんな甘いもんじゃないですぞ。クルマを借りた友人が名乗り出ても一審は有罪だったってこと、重く受け止めてほしい。

 ちなみに、従来の国産オービスの写真はすべて白黒だが、新型オービスのうちセンシス(Sensys Gatso Group)の固定式と可搬式の写真はカラーだ。人違いを理由に否認するのは白黒写真の場合より難しいだろう。
 あと、ニュースでは「被告」となっているが、正しくは「被告人」だ。民事裁判は原告vs被告、刑事裁判は検察官vs被告人なのだ。
 しかしテレビ・新聞は必ず被告人を「被告」と報じる。民事裁判で裁判官から「被告」と呼ばれた人が「俺を犯罪者扱いするのか!」と怒ることがあるそうだ。

(今井亮一)

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