SUVのSの部分をグッとグレードアップしたC-HRのハンドリングモデル【C-HR GRスポーツ試乗】

●バネレートをアップしているのに乗り心地はよく、直進安定性も損なっていない

大人気だったトヨタのSUV・C-HR。デビューから3年近く経ち、ライバルにその座を奪われつつありましたが、2019年10月にマイナーチェンジを施し、魅力をアップしました。

さらにこのマイナーチェンジでは、GRバージョンとなる「C-HR GRスポーツ」が追加されました。

C-HR GRスポーツ 前7/3スタイリング
エアインテークが広がり、フォグランプの位置も変更されたフロントまわり

C-HR GRスポーツのチューニングは、使用するタイヤを決めることから始まったといいます。タイヤは標準の225/50R18から225/45R19のアドバン・フレバに交換されています。このタイヤの性能を引き出すために、エンケイ製の7.5J、インセット50mmのアルミホイールが選ばれました。

そのうえで、アンダーフロアに装備されているブレースバーをスタンダードのバーから井桁型に変更することでボディの剛性を向上。そして、前後サスペンションのコイル&ショックアブソーバーを専用チューニングしています。コイルは約150%のレートアップ、スタビライザーは細くして効果を落とす方向です。

C-HR GRスポーツ リヤ7/3スタイリング
リヤまわりではスタンダードとの違いはエンブレム程度。マイナーチェンジでウインカーはシーケンシャルとなった

まずクローズドコースでマイナーチェンジ前、マイナーチェンジ後、GRスポーツを試乗しました。

50km/hのスラロームではGRスポーツの舵角がもっとも少なく、また正確さも高いものでした。ビックリしたのは段差乗り越えで、バネレートが50%も高く硬くなっているにも関わらず、乗り心地が一番いいのです。とくに片輪ずつ乗り上げる場面ではスタビライザーが弱められていることもあり、サスペンションの動きが素直な印象です。

ダブルレーンチェンジでは障害物をよけたあとの修正舵の量がGRスポーツでは少なく、ほぼ必要ない状態だったことも付け加えておきます。

C-HR GRスポーツ クローズド試乗
大磯ロングビーチの駐車場に特設コースを設定、基準車との違いを体感した
C-HR GRスポーツ エンジン
今回のマイナーチェンジではピュアエンジン、ハイブリッドともにパワーユニットの変更はない

C-HR GRスポーツの一般道試乗では、路面のざらつき感などが上手に消されているのが特徴的でした。路面のザラッとした部分をキレイに取り除いているので、真っ直ぐ走っているだけでも快適な印象が高まります。

コーナーに向かってステアリングを切り始めるとまったく遅れなくボディが反応します。もちろんレーシングカーのような急激な反応の仕方ではなく、すんなりと遅れてないという印象です。

C-HR GRスポーツ 一般道試乗
一般道試乗では余分な動きがなく、荒れた路面でも気持ちいい乗り心地を体感できた
C-HR GRスポーツ キャリパー
ブレーキキャリパーはホワイトペイント。内容は基準車と同じ

クローズドコースでの試乗で感じたのと同様に、歩道をまたいで駐車場に入る際の段差越えなどもしっかりと衝撃を吸収してくれていますので、歩道にを越える際にステアリングをグッと握り直すようなこともありません。バネレートをアップしているのに乗り心地はよく、直進安定性も損なっていない。じつに不思議ですが、これがC-HR GRスポーツの事実なのです。

一般道試乗で乗ったモデルはC-HRのマイナーチェンジで追加になったiMTと呼ばれるクラッチペダル付きの6速MTです。シフトチェンジ時にエンジン回転を会わせてくれるので、運転がイージーになります。ただ、私のような世代でMTを運転し続けてきた人間は、運転の一連の動作のなかでエンジン回転を合わせてしまうので、あまりその恩恵にあずかることはありませんでした。

C-HR GRスポーツ インパネ
専用の小径ステアリング、加飾などが施されたインパネ。シートも専用品となっていて、乗り心地もいい
C-HR GRスポーツ シフト
マイナーチェンジで追加されたMTモデル。ペダルレスMTではなく、3ペダル方式

C-HR GRスポーツはSUVのSの部分、つまりスポーツ性をグッと高めたモデルになっているという印象です。

(文・諸星陽一/写真・平野 学)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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