川畑選手のGRスープラがV8エンジンに! 初の実戦を終えていよいよFIAカップに臨む【D1GP】

■目標は1000psオーバー! GRスープラにまさかのV8エンジン

東京モーターショーで、Team TOYO TIRES DRIFT-1の川畑選手が駆るGRスープラに関して驚きの発表がありました。なんと、第6戦のあと、エンジンを直列6気筒の2JZからV型8気筒の3UZに載せ換えたというのです!

2JZはベースが3.0L。それに対して3UZは4.3L。大幅な排気量アップです。もちろんエンジン内部は社外パーツで強化されていて、ターボ化もされていますこれは、タイヤのグリップ力が上がり、しかもGRスープラは非常にトラクション性能が高いということで、2JZだと力不足を感じてしまったことによるものだそうです。

3UZエンジンで想定しているのは1000psオーバー。2JZでも不可能なパワーではありませんが、そうなると耐久性が犠牲になること、低中速トルクが細くなってしまうことから、エンジン載せ換えを決断したそうです。

川畑選手のGRスープラはV8エンジンのシングルターボ仕様になりました。

もともとはシーズンオフに考えていた仕様変更でしたが、予定を前倒しして第7戦の前に実施しました。それは、11月末に開催される国際大会『FIAインターコンチネンタル・ドリフティングカップ』に照準を合わせたためです。

それもあって、オートポリスで行われたD1GP最終戦は完全体ではありませんでした。ここはあくまでも実戦兼テストと割り切ったため、ターボも2JZエンジンのときに使っていたものそのままです。ブーストも低く設定しており、パワーも控えめです。

それでも低速トルクはありすぎるくらいあって、テストをしたミニサーキットでは簡単にタイヤスモークで1周真っ白にしてしまえるほどだったそうです。

川畑選手とメカニック
エンジンがまだ仕上がっていないこともあって、川畑選手とメカニックは綿密に情報交換を行います。

さて、そんな状態で第7戦に臨んだ川畑選手。まず最初のチェック走行では「エンジンが重くなったので、フロントの足まわりをハードめのセットにしていることもあって、すごくクイックにピクピク動きます。でも、まずまずの走りができています」と手ごたえを感じていましたが、練習走行の1本めでトラブルが起こってしまいました。

冷却水を噴いてしまったのです。原因はガスケットでした。強化ガスケットが間に合わなかったため、爆発力に耐えられずに抜けてしまったのでした。その日のうちにエンジンを下ろし、交換をしました。

ガスケット交換
冷却水が噴いたのはヘッドガスケットが抜けてしまったのが原因でした。

いちおう届いたばかりのガスケットに交換しましたが、これも万全の強度のものではないため、土曜日の単走決勝からはブーストは低く抑えて走行することにしました。

とうぜんパワーは下がるので、それでもタイヤを滑らせることができるように、トラクションを抜く方向でサスペンションを仕様変更し、ファイナルギヤも交換します。トップを狙える仕様ではなくなりますが、まずはドリフトをきっちり形にして走りきることが優先です。

サスペンションとファイナルギヤ変更
サスペンションのバネを変更し、ファイナルギヤも交換します。

そして迎えた単走本番。川畑選手は、1本めに通過指定ゾーンをひとつ外して1点減点されたにもかかわらず、97.14点というまずまずの得点。これで楽になったこともあり、2本めはさらに進入速度も上げて、するどい振りや大きな角度を見せ、98.35点という得点を出して7位通過を決めました。パワーが控えめだったこともあり、最高速は183.29km/hで、全体の9番めでした。

川畑選手の単走
単走ではするどい振り出しを見せていました。

そして迎えた日曜日の追走トーナメント。川畑選手の最初の対戦相手は2JZエンジンを搭載した86に乗る時田選手です。1本めは川畑選手にも通過指定ゾーンを外すミスがありましたが、時田選手にドリフトのもどりがあって、川畑選手が大きくリード。2本めも時田選手に通過指定ゾーンを外すミスがあって、川畑選手が勝ちました。

川畑選手vs時田選手
川畑選手にもミスはあり、完全な状態の走りではありませんでした。

ベスト8の対戦相手は、前日の単走でもっとも高い最高速をマークしていた植尾選手です。1本めは植尾選手が先行。後追いの川畑選手は振り返しで角度をつけすぎたのか失速ぎみになってドリフトがもどり、植尾選手に大きくアドバンテージがついてしまいます。2本めは植尾選手に近い距離に寄せられ、川畑選手の負けとなってしまいました。

川畑選手は、「ストレートで離れたぶん追いつこうとして、でもぶつかっちゃダメだな、と思って、自分なりの速度で止めたんですけど、そしたら止まりすぎちゃって失速した感じでしたね。パワー的には余力がなかったんですけど、とりあえず最後までエンジンは回ったんで、そこはチームのひとに感謝しています」と語っています。

川畑選手vs植尾選手
ベスト8で対戦した植尾選手のマシンは、シルビアにGT-Rのエンジンを積んでいます。

川畑選手の第7戦の順位は8位。シリーズ順位は12位で2019年のD1GPシリーズを終えました。しかし、川畑選手のシーズンは終わっていません。

残り1ヵ月でFIAカップに向けてエンジンを仕上げ、エンジンに合わせたターボをチョイスして1000psオーバーを達成し、そのパワーにあわせてサスペンションの仕様変更もすることになるでしょう。

「これが仕上がったら無敵になると思います」と語る川畑選手、2年前につづいてふたたび国際大会のウィナーになることができるか? いよいよGRスープラのポテンシャルがフルに発揮されるのか? 11月29日〜12月1日に行われるFIAインターコンチネンタル・ドリフティングカップが楽しみです。

川畑選手
川畑選手はFIAカップ奪還を目指しています。

なお、川畑選手のチームメイトである、Team TOYO TIRES DRIFT-1の藤野選手(180SX)は、第7戦はベスト8敗退(7位)。シリーズは3位に入賞しました。そして、藤野選手もFIAカップに参戦します。

藤野選手
藤野選手はシリーズ3位にまで浮上してシーズンを終えました。

また、Team TOYO TIRES DRIFT-2のポン選手(86)は、第7戦がベスト16敗退(13位)、シリーズは15位でした。

ポン選手
ポン選手も安定した走りを見せていました。

FIAインターコンチネンタル・ドリフティングカップは11月29〜12月1日に筑波サーキットで行われます。

(文:まめ蔵/写真提供:サンプロス)

この記事の著者

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まめ蔵

東京都下の農村(現在は住宅地に変わった)で生まれ育ったフリーライター。昭和40年代中盤生まれで『機動戦士ガンダム』、『キャプテン翼』ブームのまっただ中にいた世代にあたる。趣味はランニング、水泳、サッカー観戦、バイク。
好きな酒はビール(夏場)、日本酒(秋~春)、ワイン(洋食時)など。苦手な食べ物はほとんどなく、ゲテモノ以外はなんでもいける。所有する乗り物は普通乗用車、大型自動二輪車、原付二種バイク、シティサイクル、一輪車。得意ジャンルは、D1(ドリフト)、チューニングパーツ、極端な機械、サッカー、海外の動画、北多摩の文化など。
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