■オリンピック直前に大規模実証実験を実施!
自動車製造業者の団体である日本自動車工業会(以下自工会)が、10月30日、東京モーターショーでにぎわう東京ビッグサイトにおいて、「メディア向け自動運転セミナー」を開きました。
自工会は、東京オリンピック・パラリンピックの開幕直前となる2020年7月6日~12日に、東京の「羽田空港」「羽田⇔臨海/都心」「臨海地区」という3つのエリアで、自動運転および先進運転支援技術の大規模な実証実験を予定しています。今回のセミナーは、この実証実験に向けて、自動運転や先進運転支援技術に関するメディア側の理解を深めてもらおうというもので、「導入編」「基礎編」「実践編」という3編構成の「導入編」にあたるとのこと。
セミナーは「自工会が描く中長期モビリティビジョンと実証運転実験の取り組み」という基調講演でスタート。自工会2020年対応検討会主査の沼田泰さんが2020年に行う実証実験の概要について説明した後、ITS企画部会副部会長の三崎匡美さんが「今回の実験をもとに、2030年には飛躍的に進化したモビリティ社会を実現する」と述べました。
続いて「1億総活躍社会を見据えた、自動運転の役割」と題して、ITS Japan専務理事の天野肇さんが講演。自動車とそれを成立させてきた社会インフラの歴史を簡単に振り返ったうえで、「自動車を巡る技術革新はそれ自体が目的ではなく、社会が抱えるさまざまな課題を解決するためにある」と述べました。
最後は「自動運転で広がる生活・経済・社会の可能性・予測」と題されたパネルディスカッション。佐々木紀彦さん(NewsPicks CCO)をモデレーター、落合陽一さん(メディアアーティスト)、清水和夫さん(モータージャーナリスト)、杉江理さん(WHILL株式会社代表取締役兼CEO)をゲストとして、活発なやりとりが行われました。
電動クルマ椅子を始めとしたパーソナルモビリティを開発している杉江さんは、「パーソナルモビリティは私有地で使われることが多いため規制をブレイクできる。必ずしも自動運転である必要はないが、自動化されるとしても自動車より早く、来年にも実現する」と述べました。
清水さんは「女房はルンバには話しかけるけれども洗濯機とは話さない。動くものにはエンパサイズ(共感)するのではないか。自動運転も共感できるものにする必要がある」と話しました。これに対して杉江さんは「モビリティはパーソナライズすると共感できる」と語り、「(パーソナルモビリティは)クルマより馬に近いかも」と考えを披露しました。
日本での技術の進展については、清水さんが「自動運転を箱根駅伝でいえばまだ1区もスタートしていない。日本が独・米に対して遅れているということはない」と述べたうえで「今回の東京モーターショーでは、今までメーカーと垂直統合だった部品メーカーに独自の動きがある。CES(ラスベガスで開かれる消費者向け電子機器見本市)のような熱気を感じた」と話していました。
自動運転や運転支援技術が社会にどんな恩恵をもたらすかはまだ手探りの状況です。clicccarもまずは来年の実証実験を楽しみにしつつ、その先に花開く未来を伝えていきたいと思います。
(文と写真:角田伸幸)