ワンボックス車に積む移動オービスの取り締まりは、2017年を最後に「終了」していた!

■2013年には370件だった移動オービスの取り締まりが2018年はゼロ!

 ハイエースなどワンボックスカーに積むオービス(速度違反自動取り締まり装置)がある。道端に駐車し、荷室の後部ガラスの内側からストロボを発光させて撮影する。測定方法はレーダー式と光電式がある。昔から「移動オービス」と呼ばれてきた。

移動オービスの資料
JRC(日本無線)の1995年のパンフレットより。光電式の検出部(測定部)は車外に設置する。カメラとストロボ(撮影部)は荷室の後部に。

※警察庁は数年前から「新たな速度違反自動取締装置」の導入を進めている。「新たな」とあるので私は「新型オービス」と呼んでいる。新型オービスには「固定式」「可搬式」「半可搬式」がある。しかしネットでは「固定式」も含めなぜか「移動式オービス」「移動オービス」と呼ばれる。昔からの移動オービスとはべつものだ。

 私は情報公開マニアでもある。仕事場には主に交通取り締まり関係の文書が大量にある。2019年の夏、文書の山のなかから移動オービスの都道府県別取り締まり件数の一覧表を見つけた。2013年の文書で、一覧表といってもほとんどすべて真っ黒、墨塗りだ。

真っ黒の資料
2013年のいわゆる移動オービスの取り締まり件数。都道府県別、超過速度別のデータが全部墨塗り。全国の総計は370件とだけ分かる。

 墨塗りの理由は要するに、開示すると「違法行為を誘発または助長するおそれ」「公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ」「道路交通行政に関する適切な遂行に支障を及ぼすおそれ」があるからだという。
全国の総計だけが墨塗りではなかった。2013年、移動オービスの取り締まりは全国で370件だった。

 その後どうなったのだろう。私はすぐに、2014年から2018年まで5年分を警察庁に対し開示請求した。
 約1カ月後、5枚の文書が開示された。
 ぱらぱらめくり、私は腰を抜かすほど驚いた。なんと墨塗りなし! すべてすっかり開示されたのだ。2013年分はあれだけ真っ黒だったのに、なぜっ!?

全公開された資料
2018年のいわゆる移動オービスの取り締まり件数。墨塗りなしで全部開示された。「0」で埋め尽くされている。移動オービスの取り締まりは終了したのだ。なお、オービスは赤切符の違反(一般道路では超過30キロ以上)を取り締まるのに、この表には超過速度が25キロと25~29キロの欄がある。じつは1985年までは超過25キロ以上が赤切符だった。その名残りかと思われる。

●今後は新型オービスによる「青切符」の取り締まりへと動き出す!?

 文書をよく見て、さらに驚くことになった。
 2014年の全国の総計は45件! 2013年の1割近くにまで落ち込んでいる。
 都道府県別のトップ4はこうだった。
  1位 新潟:31件
  2位 東京:7件
  3位 埼玉:5件
  4位 大阪:2件

 この4都府県以外は見事に0件だ。

 超過速度別の取り締まり件数、その全国の合計はこうだった。
  超過35~39キロ:22件
  超過40~44キロ:10件
  超過45~49キロ:2件
  超過50~54キロ:5件
  超過55キロ以上:6件

 超過35キロより下は0件だ。
 オービスは、いわゆる赤切符の違反(一般道路では超過30キロ以上)を取り締まる。その“制約”のなかで超過35キロ以上を取り締まったわけだ。

 2015年の全国総計は、さらに減って29件!
 都道府県別では東京が18件、神奈川が6件、新潟が3件、埼玉と大阪が各1件。それ以外の道府県は0件だった。

 2016年は、なんと東京の5件のみ!
 うち1件は超過25キロ未満だった。1件のみとはいえ青切符のスピード違反(一般道路では超過30キロ未満)を取り締まったのである。
 同年4~6月、警察庁は新型オービスを使って「モデル事業」をおこなった。そのとき、青切符のスピード違反も取り締まることを予定した内部文書があった。従来の移動オービスでも青切符の取り締まりを試してみたのだろう。

 2017年は東京の2件のみ。
 2件とも超過25キロ未満だった。移動オービスによる取り締まりはもう見切りをつけ、青切符の取り締まりを2件だけ東京が試してみた、そう解される。

 そして2018年、すべての都道府県ですべての超過速度域で、ゼロがずらーっと並んでいた。
 そう、移動オービスの取り締まりは終了したのである。しゅう~りょお~っ! ゆえに上記「おそれ」はなくなり、墨塗なしの全部開示となったのだ。
 警察庁は新型オービスへ舵を切ろうとしている。移動オービスのワンボックカーが古くなったこともあり、移動オービスは捨てることとした、そんな感じか。
 ひとつの時代が終わった。
 いま、時代は新型オービスによる青切符の取り締まりへと動きだしている。そしておそらく、駐車取り締まりと同様にスピード取り締まりも民間委託されるだろう。

(今井亮一)