●上質さを手に入れたミドルワゴンはふたたびワゴンブームを呼ぶ?
1966年に初代がデビューしたカローラは、初代モデルからワゴンボディを設定している車種です。初代はなんと3ドアのワゴンでしたから、シューティングブレークみたいなスタイリングだったとも言えます。
カローラのワゴンは先代ではフィールダーの名前で呼ばれていましたが、今回の新型では「ツーリング」と名前を変えました。
しかし名前以上に変わったものがあります。それはボディサイズです。カローラはどのボディサイズも一環して5ナンバーサイズを守ってきましたが、今回のモデルチェンジによりセダンもワゴンも全幅が1745mmの3ナンバーとなりました。
グローバル化の影響ではあるのですが、単純に海外仕向地用と共通化を図ったわけではなく、日本仕様としてドアミラーを収納した際の横幅や、ドアの開放方法などを工夫。幅広になったボディを逆手にとり、前輪の切れ角を確保して最小回転半径を小さくするなどしています。
「だったらボディも小さく」と思う方も多いでしょう。実際、3ナンバーになったことで使い勝手が悪くなる方もいるでしょうし、駐車場に入らなくなる人もいるでしょう。しかし、トヨタはどうしてもTNGAというプラットフォームでカローラを作りたかった。それも、先日発表されたヤリスとは異なる、1つ上のTNGAで作りたかったということがあるのです。
それはカローラツーリングを走らせてみれば納得します。私は5ナンバーワゴンオーナーで、東京のなかでもとくにゴチャゴチャした地域に住んでいます。私のような使い方・環境では5ナンバーワゴンが一番使いやすいと思っています。
しかし、このカローラワゴンに乗ると、大きさは少々我慢して、切り返しが1度増えても乗る価値ありかな? と思わせるほどのできのよさなのです。
ひとつにシャシー性能の高さです。リヤサスペンションを従来のトーションビームからダブルウィッシュボーンに変更したことによって、乗り味はゆったりと上質なものへと進化しました。
トーションビームサスペンションはリヤのロール剛性を稼げるので、引き締まり感のある乗り心地となりますが乗り心地面では不利です。ダブルウィッシュボーンは左右が独立して動くので乗り心地面では有利ですが、ロールさせつつグリップを稼ぐタイプとなります。
試乗したW×Bグレードはリヤにもスタビライザーが装着されロールが抑えられていることもあり、そのバランスがちょうどいい感覚です。そしてなによりも、スタビライザーが関与しない段差乗り越えなどショックの吸収が新開発のショックアブソーバーと相まってじつに快適です。
パワーユニットは1.8リットルガソリン+モーターのハイブリッド、1.8リットルピュアガソリン、1.2リットルピュアガソリンターボの3種が用意されます。ハイブリッドと1.8リットルのピュアエンジンの両方に乗りました。モーターアシストが上手に働くハイブリッドは全域で一段階上の力強さを感じます。しかし、ピュアエンジンとの差はさほど開いていないという印象です。
ハイブリッドのシステム出力は122馬力、ピュアエンジンは140馬力ですから数値的にはピュアエンジンが上です。とはいえ、発進などはモーターの得意な分野ですから、一長一短であると言えます。ACCの制御はどちらもよくできています。自車の設定速度より遅く走る先行車がいなくなった際の中間加速も適度なもので、長距離ドライブでのストレスも少なくなるでしょう。
最上級のW×Bを例にすると、ハイブリッドは279万9500円、ピュアエンジンは236万5000円で、2車の価格差は43万4500円となります。ただし、ハイブリッドのほうが購入時に約10万円ほど優遇税額が高く、翌年度の自動車税も低減されます。
燃費もハイブリッドのほうがいいですが、それらを考慮しても差額を吸収するにはかなりの走行距離が必要でしょうから、金額面だけで考えるならピュアエンジンのほうがお得感があると言えるでしょう。
現在、日本ではステーションワゴンが絶滅危惧種となっています。しかし、2019年の東京モーターショーではスバルが新型レヴォーグを公開する予定となっています。カローラツーリングも若い世代を中心に売れているということなので、ワゴンブームの再来もあるかも知れません。
(文/写真・諸星陽一)