モンキーの名前の由来は「野猿街道」でテストしたから!?【ホンダ・モンキーHISTORYその1】

■遊園地の遊具から生まれたミニマムバイク、その歴史を振り返る

●プラモデル感覚でカスタムできるのが人気の秘訣!

モンキーの始祖と言える存在は、1961年に登場しました。東京・日野市に開園した多摩テックという遊園地(2009年に閉園)のために、子供向けの遊具として開発された「Z100」というモデルがそれです。前後リジッドサスペンションと5インチホイール、小さなフレームにスーパーカブの50ccエンジンを搭載して、誰でも運転できるシンプルな構造になっており、多くの来園者に親しまれました。

このZ100を公道向けにリファインさせたCZ100を海外へ輸出すると、瞬く間に人気モデルになりました。それを踏まえて、国内向けに専用開発し、1967年に発売されたのが初代モンキーです。

ちなみに車名の「モンキー」の由来は、多摩テックの近くにある野猿街道でテストしたから、という説もあります。

以来、リジッドだった足まわりにはサスペンションが追加されたほか、愛らしいスタイルもモデルチェンジのたびに徐々に変化を遂げながら、実に2017年までの50年間も生産され続ける人気モデルになりました。

こんなに長い間モンキーが愛された秘訣の一つに、モディファイのしやすさがあります。クルマのトランクにも入るほどボディは小さいので気軽にいじることができます。また、大幅なモデルチェンジが少なかったため歴代モデルでパーツの互換性が高く、アフターパーツが豊富にそろっています。

そんなこともあって、今でも多くのユーザーがモンキーを自分好みのスタイルや走行性能にカスタマイズして楽しんでいます。

モンキーは2017年に惜しまれつつ生産が終了したものの、翌2018年には125ccエンジンを搭載して2周り大きいボディの「モンキー125」がタスキを引き継ぎました。これからも、モンキーは末長く愛され続けていくことでしょう。ここでは、半世紀以上にわたるモンキーの歴史を振り返ってみます。

【モンキー前史】

●多摩テックにZ100導入(1961年10月)
子供向けのミニバイクとして登場

東京・日野市に開園した多摩テックは一般の遊園地にオートバイによる施設が併設されたホンダ系列の施設でした。子供向けコースのミニバイクとして開発されたのがZ100です。サスペンションがなく5インチの小径ホイールにより子供でも乗車できるサイズで、スーパーカブのエンジンを搭載していました。
ホンダZ100
(Z100)

●CZ100を輸出発売(1963年)
スポーツカブのパーツを流用

多摩テックでのZ100が評判を呼び、その噂は海外にまで及びました。そこでホンダは海外でも売れると見込み、Z100の輸出モデルとしてCZ100を開発、イギリスやアメリカなどへ輸出を開始します。Z100にスポーツカブ用タンクとシートを装備し、ハンドルをアップタイプにしてより幅広い体格に対応できるポジションにしました。
ホンダCZ100
(CZ100)

【初代モンキーが登場】

●モンキー新発売(1967年3月)
愛されキャラの歴史がスタート

CZ100の輸出が好調だったことを受け、国内にも公道走行が可能なモデルとして初代モンキーが発売されました。CZ100の車体に専用デザインの小さな燃料タンク、チェック柄の新シートなどが与えられました。ダイヤルによりハンドルを折りたたむことが可能となり、クルマのトランクに積載できる構造が特徴です。
ホンダ・モンキーZ50M
(モンキーZ50M)

●モンキーをフルモデルチェンジ(1969年7月)
8インチホイールに大径化

初代モンキーは国内外で大ヒットします。そこで公道性能をさらに引き上げるためのモデルチェンジが実施されました。大型化した車体にはフロントフォークが装備され、5インチから8インチに前後ホイールを大径化して大人でも無理なく乗れるようになります。バッテリーを採用してウインカーを標準装備していました。
ホンダ・モンキーZ50A
(モンキーZ50A)

●モンキーを小変更(1970年4月)
ボディが簡単に分離可能に

フロント部とボディを簡単に分離できるセパレートタイプのZ50Z型が追加発売されました。トップブリッジにあるハンドルを回すことでフロントフォークとハンドル、ヘッドライトをボディから分離でき、逆の手順で簡単に元に戻すことが可能でした。スタンドもサイドからセンターに変更されています。
ホンダ・モンキーZ50Z
(モンキーZ50Z)

【SOHCエンジンの始まり】

●モンキーをフルモデルチェンジ(1974年2月)
4Lタンク&リヤサスを新採用

それまでのリヤ・リジッドサスペンションだったフレームを刷新して、前後にサスペンションを備える新型に切り替わります。スイングアームとツインショックにより走行性能は大幅に向上しました。またエンジンが従来のOHVタイプからSOHCタイプに変更され、信頼性と耐久性も向上しています。燃料タンクは4リッター容量の新デザインに変わりました。
ホンダ・モンキーZ50J
(モンキーZ50J)

●モンキーをマイナーチェンジ(1975年5月)
ミッションがシーソー式に

SOHCエンジンとリヤサスペンションを備えたモンキー初めてのマイナーチェンジでは、外装色が変更されタンクのグラフィックデザインも新しくなりました。リターン式3速ミッションは、ペダル式のままスーパーカブと同じシーソー式に変更。ウインカーの幅も広がっています。
ホンダ・モンキーZ50J-Ⅱ
(モンキーZ50J-Ⅱ)

●モンキーを一部改良してゴリラを追加発売(1978年8月)
モンキーはタンクのデザイン変更&4速MT化

それまでの4リッタータンクのデザインを変更して5リッター容量となり、合わせてシートのデザインが変更されました。同時にマニュアルクラッチと4速ミッションを装備するゴリラが新発売されます。ゴリラは大容量9リッターの燃料タンクや車体前後にキャリアを標準装備するツーリングモデル的色合いが強いモデルでした。
ホンダ・モンキーZ50J-I
(モンキーZ50J-I)

ホンダ・ゴリラ
(ゴリラ)

●モンキー・リミテッド発売(1979年)
シルバーメッキの限定仕様

特別仕様として車体全体をシルバーメッキにしたモンキーリミテッドが限定で発売されました。Z50J-Iをベースにフレームや外装パーツをすべてクロームメッキとして、標準モデルより3万円高に設定されました。また通常の自動遠心クラッチ仕様だけでなく、マニュアルクラッチと4速ミッションの仕様も選べました。
シルバーメッキのモンキー・リミテッド
(モンキー・リミテッド)

●カラーリングを変更(1981年3月)
渋さが際立つブラックモデル登場

大きな変更がなく生産されてきたモンキーですが、シリーズ全体のカラーリングが見直されたタイミングでボディ全体をブラックで統一したブラックモンキーが発売されました。ホイールをゴールドにした仕様はスタンダードより9000円高く設定され、同価格のシルバーホイール仕様もありました。
ホンダ・ブラックモンキー
(ブラックモンキー)

●ゴールドメッキ仕様を限定発売(1984年9月)
全身金色で目立ち度満点

クロームメッキやブラックなど目を引くカラーリングが人気だったことを受けて、外装パーツをゴールドメッキにした特別仕様車が5000台限定で発売されました。フレームは標準のブラックですが燃料タンクやフェンダー、マフラープロテクター、フロントフォークなどをゴールドにしています。4速マニュアルクラッチのみの設定でした。
ホンダ・モンキー・ゴールドメッキ仕様
(モンキー・ゴールドメッキ仕様)

●モンキーとゴリラを改良(1985年4月)
新エンジンでパワー&燃費を向上

出力と燃費性能を向上させた新エンジンを新たに採用しています。同じ49ccの空冷単気筒SOHCですが最高出力が2.6psから3.1psへ向上し、4速マニュアルミッションのみの仕様になりました。このことでモンキーは1リッター当たり90kmの燃費性能を実現しています。
ホンダ・モンキー(改良モデル)
(モンキー)

ホンダ・ゴリラ(改良モデル)
(ゴリラ)

(増田 満)

この記事の著者

増田満 近影

増田満

複数の自動車雑誌編集部を転々とした末、ノスタルジックヒーロー編集部で落ち着き旧車の世界にどっぷり浸かる。青春時代を過ごした1980年代への郷愁から80年代車専門誌も立ち上げ、ノスヒロは編集長まで務めたものの会社に馴染めず独立。
国産旧型車や古いバイクなどの情報を、雑誌やインターネットを通じて発信している。仕事だけでなく趣味でも古い車とバイクに触れる毎日で、車庫に籠り部品を磨いたり組み直していることに至福を感じている。
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