奇襲?奇策?予想外の展開でT-DASH ランボが富士500マイルで初優勝!【SUPER GT 2019】

8月4日に富士スピードウェイで開催の「2019 AUTOBACS SUPER GT Round 5 FUJI GT 500mile RACE」の決勝レース。

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1マイルが1.6kmなので500マイルはすなわち800km。この距離は2019シーズンのSUPER GTでは最長のレース距離となります。そのため各チームともに様々な作戦でこの800kmという距離に挑んでいきます。

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ポールポジションからスタートした52号車 埼玉トヨペットGB マークX MCですが4回の義務ピットインをこなしながらも実質的な順位を3位以下に落とすことなく走りきっていますが、その秘密はタイヤ交換。2度めのピットインでのみ4本交換をしてその後のピットイン2回は無交換でピット作業時間の大幅短縮を図っています。

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また予選2位だった25号車 HOPPY 86 MCはタイヤ2本交換などを織り交ぜながらピット作業時間短縮を狙います。

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こういった作戦は各チームともマシンやタイヤの特性に合わせて行なっていきます。その作戦がピッタリとハマると一気にジャンプアップも可能なところが長距離レースの醍醐味でもあります。

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この作戦という面でかなりの奇策を図ったのが87号車 T-DASH ランボルギーニ GT3と96号車 K-tunes RC F GT3。K-tunes RC F GT3はGT500クラスの22周目に1回目のピットインを終わらせると次に43周目にピットインという短いサイクルで2回目のピットインを終わらせ、その後の2回のピットインタイミングを長めにとって上位進出を図ろうという作戦。

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K-tunes RC F GT3よりももっと極端なピットタイミングを図ったのがT-DASH ランボルギーニ GT3。GT300のレース距離を160~165周と読んだ作戦で1スティント40周計算。その1回目のピットインをGT500の43周目、自身の周回数で39周目に行うと次の週にもう一度ピットイン。これで残りの3スティントは40周のロングターム作戦が出来るということになります。この作戦はランボルギーニウラカンGT3の燃費の良さから導き出された作戦で、800kmの距離ならばライバルよりも給油が1回少なくなるという計算です。スーパー耐久のディーゼルマシンのチームでこの作戦を敢行する場合はありますが、SUPER GTでは完全なる奇策と言えるでしょう。

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この様な奇策を図る場合に有利に働くのがセーフティーカーの導入。セーフティーカーが導入されればトップとの差が一気に縮まります。またセーフティーカー導入中のピットインが許されないSUPER GTではライバルのピットタイミングによってはセーフティーカー解除後の大幅なジャンプアップも期待できます。ロングスティント作戦のT-DASH ランボルギーニ GT3は2回のセーフティーカー導入をうまく使って大きくジャンプアップしたのです。

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最後のスティントではT-DASH ランボルギーニ GT3は2番手の埼玉トヨペットGB マークX MCに40秒近いアドヴァンテージを作り上げていました。T-DASH ランボルギーニ GT3で最後のスティントを担当したのは2015年にGT300シリーズチャンピオンを獲得したアンドレ・クート選手。ベテランが逃げ切るには充分なマージンです。

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そんなトップと2位の後方ではNSX GT3勢による大攻防が行われていました。GT500での157周で3位だった18号車 UPGARAGE NSX GT3に追いついた34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3。UPGARAGE NSX GT3は小林崇志選手、Modulo KENWOOD NSX GT3は大津弘樹選手。両者はともに2018年のスーパー耐久ST-TCRのチャンピオンModulo CIVIC TCRをドライブした仲で、お互いの走りや性格を熟知している間柄。だからこそお互い負けられないという激しい勝負が繰り広げられます。158周目のTGRコーナーで最初に仕掛けたのはModulo KENWOOD NSX GT3の大津選手。その後のコカ・コーラコーナーまでの攻防が凄まじく、2台がワイドになりながら激しいドッグファイトを繰り広げながらコーナーに侵入していきます。コカコーラコーナーでブロックを仕掛けようとしたUPGARAGE NSX GT3の小林選手でしたが、わずかに前に出たModulo KENWOOD NSX GT3に対してはロス以外何者でもない状態で、その後のトヨペットコーナーでUPGARAGE NSX GT3はModulo KENWOOD NSX GT3に先行を許してしまいます。

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後方でそんな攻防があったことを尻目にT-DASH ランボルギーニ GTはJLOCの87号車として、そしてランボルギーニ ウラカン GT3にとっても初の優勝を飾りました。

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ドライバーの高橋翼選手、藤波清斗選手にとってもSUPER GT初優勝。予選13位からの優勝はまさに作戦勝ちと言えるでしょう。

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2位にはポールポジションだった埼玉トヨペットGB マークX MCでSUPER GT参戦以来の最高位を更新。そして3位にはNSX GT3同士の激しい攻防の末に今季初表彰台を飾ったModulo KENWOOD NSX GT3が入りました。

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予選前の下馬評では誰も予想できなかった表彰台の顔ぶれにSUPER GT最長の500マイルレースというドラマを感じます。

次戦は9月7、8日に開催のオートポリス戦。9月とは言え真夏と言えそうな暑さが予想される中、一体どんなドラマが生まれるのでしょうか。

(写真:吉見幸夫 文:松永和浩)

 

この記事の著者

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松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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