参議院選挙を受けて異例の声明。日本自動車工業会会長の豊田章男氏がそこに込めた思いとは?

■自工会が反応するのは極めて異例

●大変革に挑む自動車産業の厳しさが伝わる!

皆さん、参議院選挙には行きましたか? 選挙結果についてはそれぞれ受け止め方があると思いますが、我々、自動車メディアに関わる者が驚いたことがあります。

選挙の翌日、日本自動車工業会(自工会)会長の豊田章男氏(もちろんトヨタ自動車の社長です)が、「第25回参議院選挙の結果について」というコメントを発表したのです。国政選挙の結果に自工会が反応するというのは、きわめて異例なことです。

コメントはおもに政府・与党に向けたもので、平成の30年間、自動車の国内市場が右肩下がりであること、その結果、雇用を守り切れなかったことに強い危機感を抱きつつ、日本の自動車産業の今後の発展のため、成長戦略の推進を強く求める内容となっています。自動車産業は今、100年に一度という大変革の中にあり、メーカー各社はまさに生き残りをかけた戦いの中にあるわけですが、このコメントは改めて、その戦いがいかに厳しいかを物語るものだといえるでしょう。

ちなみに、このコメントには自動車評論家の国沢光宏さんも注目しておられます。国沢さんはご自身のブログで、自動車産業代表としてではなく、一自動車ファンとしてご自身の考えを書いておられるので、そちらもご覧いただければと思います。

豊田会長のコメント全文を以下に掲載しますので、ぜひ皆さんも目を通してみてください。

●第25回参議院選挙の結果について

⼀般社団法⼈ ⽇本⾃動⾞⼯業会
会⻑ 豊⽥ 章男

今回の参議院選挙の結果は、安倍政権がこれまで6年半にわたって進めてきたアベノミクスをはじめとする政策への国民からの評価と期待の表れであり、我々自動車業界といたしましても大変心強く感じております。政府・与党におかれましては、安定した政権のもと、経済のさらなる成長、外交を通じた自由な通商環境への取り組み等に強力に取り組んで頂きたいと思います。

平成の30年間、国内の自動車市場はずっと右肩下がりを続け、現在は平成初期の7割を下回る水準です。この30年間の自動車産業を俯瞰すべく、各社の売上高を足しあげてみますと、平成初期は単独売上高が約24兆円、海外事業体なども足し上げた連結売上高は約30兆円であり、国内での活動成果がおよそ8割を占めていました。30年間で国内と海外の生産台数は逆転し、平成30年度の決算では、連結売上高は75兆円と大きく伸長しておりますが、単独の伸長はそのレベルになく、単独は連結の約4割に留まっています。自動車業界各社は主に海外で事業を拡大しながら、日本のものづくりを必死で守ってきた、というのが実感であります。それでも平成の30年間で雇用を維持することはできず、減少させてしまう結果となってしまいました。足元の円高傾向や通商環境等、先行きが不透明な中、国内市場や国内生産がこれ以上縮小していくことになれば、日本の自動車産業が雇用を守っていくことは、更に難しくなってしまうという、強い危機感を抱いています。

100年に一度の大変革期の中、日本にものづくり・雇用を守り続けていくという強い決意の下、自動車産業一丸となって、必死に努力を続けております。交通事故や環境問題といった負の側面をミニマイズすると共に、「雇用を守る」「納税を続ける」そして「新たな技術革新でよりよいモビリティ社会を実現していく」、これらを通じて日本をもっと笑顔にしてまいりたいと考えております。政府・与党におかれましても、私どもの想いをご理解いただき、後押しとなるような成長戦略の推進をお願いしたいと思います。

(まとめ:角田伸幸)

【関連リンク】
国沢光弘ブログ「けっこうな爆弾コメントです。『30年間で国内自動車販売は30%落ちた。議員さん解ってますか?』」
http://kunisawa.net/diary/%e3%81%91%e3%81%a3%e3%81%93%e3%81%86%e3%81%aa%e7%88%86%e5%bc%be%e3%82%b3%e3%83%a1%e3%83%b3%e3%83%88%e3%81%a7%e3%81%99%e3%80%82%e3%80%8c30%e5%b9%b4%e9%96%93%e3%81%a7%e5%9b%bd%e5%86%85%e8%87%aa%e5%8b%95/

この記事の著者

角田伸幸 近影

角田伸幸

1963年、群馬県のプロレタリアートの家庭に生まれる(笑)。富士重工の新米工員だった父親がスバル360の開発に立ち会っためぐり合わせか、その息子も昭和期によくいた「走っている車の名前が全部言える子供」として育つ。
上京して社会人になるも車以上に情熱を注げる対象が見つけられず、自動車メディアを転々。「ベストカー」「XaCAR」で副編集長を務めたのち、ポリフォニー・デジタルにてPlayStation用ソフトウェア「グランツーリスモ」シリーズのテキストライティングに携わる。すでに老境に至るも新しモノ好きで、CASEやパワートレインの行方に興味津々。日本ディープラーニング協会ジェネラリスト検定取得。大好物は豚ホルモン(ガツとカシラ)。
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