トヨタ自動車が開発しているロボットには、遠隔地コミュニケーションサポートロボット「T-TR1」もあります。
トヨタとアメリカのToyota Research Institute(TRI)が共同で開発している、カメラとディスプレイを搭載した移動型ロボット。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)での活躍が期待されるロボットのうちの1つです。
TRIにおいて「T-TR1」のチーフエンジニアを務めるErik Sobel氏は「仮想モビリティ技術より、高齢者や身体の不自由な方が今まで行けなかった場所を体験することが可能になります。その場所に実際にいるように画面に映ること、そして遠隔地でもそこにいるような臨場感を味わえます。このプロジェクトでは、人と関わる機会を増やせるかを設計の指標としています。そこで外出の機会を増やし、人との関わりを通じて地域の一員であることを感じてもらえるか模索しました」とコメント。
ロボットというと、ヒューマノイド型やマスコット型を思い浮かべる人が多そうですが、「T-TR1」は大型ディスプレイ(LED)とカメラを搭載した移動型ロボット。「東京2020大会」では、遠隔地にいるお客さんをディスプレイ上に表示し、遠隔地にいながらも競技場など、あたかもその場にいるような没入感のある体験を叶えるロボットだそう。
トヨタは、「T-TR1」を通じて大会イベントなどに来られないお客さんや、大会に想いを寄せる人が仮想的に参加したり、コミュニケーションが取れたりする機会を提供する予定だそう。
遠隔地コミュニケーションサポートロボット「T-TR1」のバーチャルモビリティは、本人がその場にいなくても離れた場所でも動いたりできます。逆に、ロボット側の人達も遠くの場所にいる人(ロボットのディスプレイに映し出されている人)があたかもその場にいるような感覚を共有できます。なお、双方向ともにカメラで映し出されています。
「T-TR1」に搭載される大型ディスプレイにより、全身を映すことが可能で表情やジェスチャーも伝わるのが特徴。また、屋外での使用を想定しているため、ディスプレイにLEDを使い、太陽光の下でも視認できます。ただし、現状ではLEDの解像度は少し粗く見えるため、もう少し鮮明になるよう検討課題としています。
開発中のためプレス向けの公開時は手動での移動でしたが、「東京2020大会」の本番では「人追従機能」の搭載を想定。人との距離を判別し、人に付いていく機能が開発されています。
同機能により、遠隔地のお客さんがまったく知らない場所に行っても会場にガイドが1人いれば、付いていくことで多様な体験が可能になります。ロボットの最高速は現時点で人の早歩きと同等である、6km/hを目指しているそう。スラローム走行や展示ブロックやスロープ上(車いすが行ける程度の角度)などでの走行も実現しています。
ロボット上部には複数のコミュニケーション用カメラが2つ搭載され、360°の視認が可能。ほかにHDカメラ、障害物検知用カメラ、障害物検知用自動車用ライダーが搭載され、障害物を検知して自分で止まるほか、外部からも緊急時には停止させることができるそうです。
可動時間は満充電なら2時間程度で、もう少し延ばしたいとしています。ほかにも、マイクとスピーカーの性能の向上、風が強い日の安定性や雨が降った際の対策なども検討課題だそう。
(文/塚田勝弘 写真/塚田勝弘、長野達郎)