「クイックチェンジのデフ」ってご存じですか? いまD1GPで大流行しているデファレンシャルギヤです。アメリカのパーツで、Winters社が出しているもののほか、SIKKY社から出ているその強化版が日本ではポピュラーなようです。
2019年D1GP第1戦でデビューした齋藤選手と川畑選手のスープラ、日比野選手のシルビアなどもこのクイックチェンジのデフを採用しています。
このクイックチェンジ、アメリカで汎用のモータースポーツパーツとして売られていて、さまざまな競技車両に使われているようです。
で、なにがいいかっていうと、まず頑丈であること。いまD1GPではエンジンのパワーが上がり、タイヤのグリップも上がり、駆動系パーツの負担が非常に大きくなっているんですね。日本車用のデフが壊れてしまうことも増えてきているので、こういった頑丈なデフを使うことで、トラブルを防ぎたいというのが人気の理由のひとつです。
そしてもうひとつクイックチェンジのデフには大きな特徴があります。それは、その名のとおりファイナル(最終減速比)を簡単に変えられるんです。デフを車両に搭載したまま後ろ側の蓋を開けて、中のギヤをスコスコッと組み替えて、また蓋をしてオイルを入れるだけ。ひとりでも15〜20分で最終減速比が変えられるそうです。これは、コースによってギヤ比を変えたいときにすごく便利。このへんもクイックチェンジの大きなメリットです。
もともとドリフトは日本のチューニングカー文化と一緒に発展してきたようなところがあるので、初期のD1マシンの主要パーツはほとんど国内メーカーのものでした。
海外のチューニングパーツが使われ始めたのは、主要なところではオーストラリアのホリンジャー製のシーケンシャルトランスミッションあたりが最初ですかね。このあとトランスミッションに関しては、輸入品が主流になっていきました。また、けっこう流行り廃りがあって、ホリンジャーのあとにはGフォースが流行ったり、現在はサムソナスのものが人気があるようです。
それでもトランスミッション以外では、なかなか輸入パーツは普及しませんでした。クイックチェンジのデフも、私の記憶が確かなら織戸選手が86を投入したときに初めて採用したのではないかと思います。もう7年くらい前ですね。それからなかなか普及しなかったのですが、ここ数年で一気に採用するマシンが増えました。
もうひとつ、最近人気のパーツがあります。それがワイズファブのサスペンションアームです。まだ普及率は高くないのですが、86やスープラなど、比較的新しい車両がよく採用しています。
このワイズファブ、エストニアのメーカーなんですが、アームだけでなくアップライト(ハブキャリア)や取り付け部の加工用パーツまで付属し、アームのつくりをごっそり変えてしまうものなんですね。ハンドル切れ角も大幅にアップするし、ノーマルのアーム形状では実現できない走りができるようになるようです。特にヨーロッパなどではポピュラーなパーツのようですね。
そう。近年トップD1選手は、海外の様々な大会に挑戦したり招待されたり審査をしに行ったりしています。そこで海外のドリフト車両の情報にも詳しくなり、よさそうなパーツを採用するようになってきているという事情もあるんですね。現在はネット通販で大きなパーツも買うことができるので、直接買うチームもあるでしょうし、齋藤太吾選手のファットファイブレーシングや上野高広選手のカーメイクT&Eなど、代理店として海外パーツを輸入している会社もあるので、そういうところを経由して買っているチームも多いようです。
最近はペダルもレース用オルガンペダルを採用しているクルマが増えているので、そういったペダルや、レース用安全タンクなども輸入品が多いですね。
このように、現在のD1マシンの主要パーツには、海外メーカーのパーツがどんどん増えています。またドライブシャフトやプロペラシャフトをスペシャル品で作る場合も、海外のメーカーにオーダーしたほうが安く作れることが多いので、そういうケースも増えています。
ということは、マシンの製作コストやニューパーツの採用コストには、為替もからんでくるというわけです。円高なら海外パーツが安く買えますからね。というわけで、車両の戦闘力を上げたいチームにとっては円高の時期がチャンスなのかも?
さて、筑波サーキットで6月29、30日に行われた2019年D1GP第1戦と第2戦ですが、第1戦ではD-MAX RACING TEAMの横井昌志選手が単走でも追走でも優勝。さらに横井選手は第2戦でも追走で優勝しました。
いっぽう第2戦の単走では、Team SunRISE RACINGの日比野哲也選手が優勝し、横井選手に一矢報いました。
(まめ蔵・写真提供:サンプロス)
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