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■ホンダ・スーパーカブ60年の歴史を辿る【その1】
岡持ちバイクからファッションアイテムへ。愛され続ける無二の存在
ホンダが世界中で販売しているビジネスバイク、スーパーカブは1958年に誕生。以来、累計での世界生産台数が1億台を超える記録的マシンです。
(写真は現在発売中のスーパーカブC125とスーパーカブ110ストリート)
そもそもは商店主の配達や女性でも運転できる操作性を優先しつつ、小排気量ながら高い耐久性を重視して開発されました。誰でも、どこでも運転できることが愛され、世界中で実用に供されています。
でも、スーパーカブは単なるビジネスバイクではありません。意外にも運転が楽しいマシンなのです。スピードが出るわけでも、コーナリング性能が高いわけでもないスーパーカブですが、自転車よりちょっとだけ速いスピードで移動すると、景色や人との距離が近く感じられます。これがツーリングバイクとして最適な理由です。
スーパーカブは、カスタムしても楽しいバイクです。長い歴史があるので、人それぞれが思い描くスーパーカブ像を作り出すことも可能です。しかもスーパーカブは世界中で大ヒットしたことでも分かるように、新車の販売価格がとてもリーズナブル。だから、(特に中古の場合)誰もが買いやすく、カスタムベースにすることが惜しくないとも言えます。
自分だけのスーパーカブが欲しい。そう思って中古を手に入れようとしても、その歴史は60年以上もありますから、どのモデルを選べばいいのか悩んでしまいますね。
そんなあなたの参考になるよう、スーパーカブの歴史を振り返ってみることにしました。バラエティ豊かなスーパーカブの歴代モデルをじっくりと復習して、今後のスーパーカブ選びの参考にしてください。
【スーパーカブ前史】
●カブF型発売(1952年6月)
「カブ」の名前が付いた最初のモデル
スーパーという形容詞が付くのは、その前にカブというモデルがあったからです。ホンダは1952年に自転車用補助モーターとして、小型ガソリンエンジンのカブF型を発売しています。49.9cc2ストロークエンジンを自転車の後輪左側に装着して、その上に2リッター入りのガソリンタンクで構成されていました。
(カブF)
●カブFII型発売(1953年4月)
排気量を49.9ccから58.1ccまで拡大
カブF型は好調な売れ行きを収めましたが、1952年8月から免許制度が改正されます。許可制で運転できた原動機付自転車ですが、従来50cc未満までだった排気量制限が2ストロークエンジン車なら60ccまで拡大されたのです。そこで排気量を58.1ccに拡大したカブFII型を追加発売しています。
(カブFII)
【OHVエンジン時代】
●スーパーカブC100発売(1958年8月)
ここからスーパーカブの歴史は始まった
カブF型と違って4ストロークOHV方式を採用するエンジンと、クラッチ操作が不要な自動遠心クラッチを組み合わせた初代スーパーカブが発売されました。キックスタートのみでしたが1960年にはセルモーター付きのC102を、’61年には54ccに排気量を拡大したC105を追加しています。
(スーパーカブC100)
●C310(1962年)
ヨーロッパ向けのモペッド仕様
日本だけでなくアメリカでも大ヒットしたスーパーカブ。しかしヨーロッパでは、自転車にエンジンを搭載したモペッドが主流でした。そこでペダルをつけたモペッドスタイルのC310を発売します。ベルギーで生産されたヨーロッパ向けモデルですので、日本国内では販売されませんでした。
(C310)
●ポートカブC240発売(1962年7月)
女性をターゲットにした廉価版
スーパーカブの廉価版として女性ユーザーをターゲットに開発されたポートカブが発売されました。女性向けのためトランスミッションは2段しかなく前後ホイールを15インチに小径化、ウインカーを省略するなどのコストダウンが図られました。販売が伸びず1964年に生産終了しています。
(ポートカブC240)
●スーパーカブCM90発売(1964年10月)
排気量アップに伴いタイヤサイズも拡大
原動機付自転車の免許区分で二種扱いとなる50cc以上のモデルとして、54ccのC105とは別に86ccエンジンを新開発したCM90が追加発売されました。ハイパワー化に伴ってタイヤサイズを従来の2.25から2.50へ、燃料タンク容量を4リッターから5.5リッターへそれぞれ拡大していました。
(スーパーカブCM90)
※次回へ続きます。
(増田 満)