新型トヨタ・センチュリーの工場取材で「ボデー工程」の次に取材したのが「塗装工程」。こちらも新型センチュリーのキモになります。
一般的なクルマの塗装は、下地、中塗り、上塗りの3層、もしくは電着、中塗り、ベースカラー、クリアの4層からなっています。センチュリーの「神威(かむい)」は、なんと7コート5ベーク。
通常の4層に加えて、さらにベースカラー、カラークリア、トップクリアも加わり、通常の倍手間が掛かっているわけです。
さらに、4回の塗装と焼き付け乾燥を行うことを4コート4ベークと呼び、レクサスなどの高級車には4コート4ベークもあります。ほかにも、コンパクトカーなどに使われている4コート3ベークから中塗り工程を廃したホンダの3コート2ベークなど、環境負荷低減、コスト低減を目指す塗装方法などもあります。
世界トップレベルの塗装を誇る新型センチュリーの「神威(かむい)」は、なんと7コート5ベークで、その間に3回の水研き(水研)を3回も行い、最後にバフによる鏡面仕上げが行われるという念の入りよう。
水研は、水を掛けながら塗装面を研磨していく作業で、1回60分ほどかけて行われます。水研は、各クリアが吹かれる前に3回も実施するそう。塗装全体で40時間を要するそうですから、塗装だけでも生産能力に限りがあるのが分かります。
なお、新型センチュリーを象徴するボディカラーである「神威(かむい)」は、漆塗りの漆黒を目指したそうで、「現地現物」主義を掲げるトヨタですから、石川県まで輪島塗を学びに行ったそうです。
センチュリーの塗装面でとくに艶やかに仕上げられているのがCピラーの部分。VIPがネクタイを直す際などに、Cピラーが鏡代わりに使われるそうで、映り込む景色まで計算したというこだわりは半端ではありません。
センチュリーの塗装がどれだけ美しいかは、このエピソードだけでもうかがい知れると思いますが、塗装の「肌ランク」と呼ばれるトヨタ社内の基準があり、センチュリーは4.5〜5点満点。同社のコンパクトカーは3.0点くらいだそうですから、その仕上がりの良さが際立っています。
こうしたセンチュリーの塗装技術やノウハウは、東富士工場で生産されている「JPN TAXI」にも活かされているとのことです。
(文/塚田勝弘 写真/水野孔男、塚田勝弘)